CBDオイルはパーキンソン病やレビー小体型認知症に作用する?

CBDオイルはパーキンソン病やレビー小体型認知症に作用する?

CBDやCBDオイルは高齢者に多いパーキンソン病やパーキンソン病に付随する症状などに有効なのでしょうか。本記事では、CBDやCBDオイルのパーキンソン病への作用や、パーキンソン病認知症およびレビー小体型認知症への作用について解説します。

CBDやCBDオイルとは

CBDは大麻草などから抽出されるカンナビノイドと呼ばれる天然の成分の一種です。大麻草などの植物から抽出されたCBDをオリーブオイルやココナッツオイルなどのキャリアオイルと混合した製品がCBDオイルです。

CBDは私たちの身体に存在するエンド・カンナビノイド・システム(ECS)という身体機能の調節をする仕組みを活性化します。ECSは疼痛や炎症、不安、ストレス、睡眠、食欲、吐き気などの「調節」を行っています。

ECSはもともと、アナンダミド(AEA)や2-AGなどの内因性カンナビノイドが全身に発現するCB1やCB2などのカンナビノイド受容体に作用することで機能しています。

CBDはCB1やCB2を直接活性化するのではなく、AEAや2-AGを破壊する酵素を抑制することで分泌量を増加させたり、ECS以外の様々な神経伝達物質の受容体に働きかけたりします。

また、植物由来のCBDにはビタミンCやビタミンEよりも強力と言われる抗酸化作用があり、神経や脳細胞などを活性酸素のダメージから保護しています。

大麻には陶酔作用や向精神作用を引き起こすTHCというカンナビノイドが含まれていますが、CBDとTHCの体内での作用は全く違うため、CBDだけを摂取しても「ハイ」になるようなことはありません。

パーキンソン病はどんな病気?症状や現状の治療法などについて解説!

パーキンソン病
パーキンソン病は高齢者に多い進行性の神経変性疾患の一つです。私たちが身体を動かすための脳のシステムがうまく機能しなくなり、身体を動かそうとしても思うように動かなくなる病気です。

若い方でもパーキンソン病を発症する場合はありますが、患者の多くは60歳以上です。60歳以下では1000人に1人、60歳以上では100人に1人の割合と言われています。

日本ではおよそ15万人の患者がいると報告されています。

普段ほとんどの方が無意識に立ったり歩いたりしていると思いますが、そもそも「身体を動かす」ために脳はどのように機能しているのでしょうか。

私たちが歩いたり運動したりする際に、脳の黒質という部位にある「ドーパミン神経」から分泌される神経伝達物質である「ドーパミン」が分泌されます。

その後、ドーパミンが運動機能や意思決定などに関わりのある「線条体」に送られます。

そして、複雑な作業や行動などを処理する「大脳新皮質」に線条体から指令が伝わり、最後に大脳新皮質から全身の関節や筋肉などに指令を送って運動したり身体のバランスをとったりすることができます。

パーキンソン病患者の場合、ドーパミン神経が何らかの理由でダメージを受けることでドーパミンの分泌が少なくなります。そのため、その後の線条体や大脳新皮質への指令も伝わらなくなり、全身の動作が障害されます。

その症状には以下のようなものがあります。

運動症状

歩行障害(遅い、歩幅が小さい、腕が動かない、関節が硬いなど)、手足の震え、姿勢保持障害、転倒、しゃべりにくさ(口が開かない、声を出しにくいなど)、無表情、など

非運動症状

神経の障害によって、運動機能以外にも以下のような症状が現れて生活に大きな支障が生じます。

精神症状

抑うつ、認知症、幻覚、妄想、頭痛、睡眠障害、嗅覚障害など

自律神経障害

頻尿、便秘、起立性低血圧、多汗など

パーキンソン病は進行性の病気ではありますが、急速ではなく何年もかけて緩やかに悪化します。

重症度によって「1度」から「5度」に分けられており、1度では片方の手足にしびれや震えが生じる程度ですが、進行するにつれ徐々に両側に広がりその後全身の運動機能が障害されていきます。

5度では一生寝たきりになったり、他人の介助なしに生活ができなくなったりします。

治療を全く行わなければ最終的には5度になりますが、現在では早期に治療を開始することで進行を抑制し「自立した生活ができる」最低ラインである3度よりも前の状態で抑えることができるとされています。

現在、パーキンソン病の治療には様々な薬が使用されています。

パーキンソン病は脳内のドーパミン不足が原因であるため、ドーパミンそのものを補充する薬やドーパミン受容体するを活性化する薬、線条体を刺激してドーパミン分泌を促進する薬など様々な薬があります。

現在使われているパーキンソン病の薬は、全てにおいて一長一短と言えます。例えば、即効性があっても作用時間が短かったり、反対に作用持続時間が長くても効果が現れるまでに時間がかかるものなどがあります。

また、ドーパミンは運動や精神活動においてなくてはならない神経伝達物質ですが、体内に過剰にあると不随意運動(身体が勝手に動く)が生じたり、幻覚や妄想などの副作用が現れたりします。

CBDやCBDオイルはパーキンソン病に作用する?

CBDには様々な作用がありますがパーキンソン病にはどのように作用するのでしょうか。

現段階では標準的なパーキンソン病の治療薬でもパーキンソン病を「治癒」させることができないように、CBDやCBDオイルによって病気そのものが治癒したり改善したことは報告されていません。

しかし、CBDは抗酸化作用によって神経を保護したり、神経の炎症を抑制して修復を助けたり、さらにはCBDによって神経の新生を助長できる可能性も報告されています。

そのため、今後の研究次第ではパーキンソン病の治療にさらに有効となる可能性は高いでしょう。

現時点ではCBDやCBDオイルのみでのパーキンソン病を治療することが難しくても、CBDやCBDオイルをパーキンソン病の標準の治療薬と一緒に服用することで様々な効果があることが報告されています。

精神・神経症状の改善

パーキンソン病の治療において、薬の副作用や病気の症状の一つである抑うつや幻覚などの精神症状を抑制することは非常に大きな課題です。

2008年の研究では、精神症状が3ヶ月以上持続している6人のパーキンソン病患者が選ばれ、通常の治療薬に加えてCBDを4週間服用して症状の変化を観察する研究が行われました。

その結果、精神症状に改善が見られ、運動障害の悪化やその他の新たな副作用などの発現はなかったとのことでした。すなわち、CBDやCBDオイルをパーキンソン病の治療薬に加えることは有効であると考えられます。
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睡眠障害の改善

CBDと睡眠
CBDやCBDオイルは睡眠障害の改善に有効であることが数々の研究において報告されていますが、パーキンソン病患者においても例外ではありません。

睡眠中にはREM睡眠(浅い眠り)とNREM睡眠(深い眠り)のサイクルがあります。

パーキンソン病患者は、REM睡眠の間に悪夢が多かったり身体が勝手に動いたりする「REM睡眠行動障害」が問題になることが多いです。

2014年の研究で、4人のパーキンソン病患者がCBDを服用したところ、副作用が生じることなくREM睡眠行動障害の改善が見られたとのことでした。
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QOLの向上

2014年の研究では、21人のパーキンソン病患者を3グループに分けて、それぞれにプラセボ(偽薬)、CBD75mg/日、CBD300mg/日が与えられました。

そして、(1)運動障害およびパーキンソン病付随症状全般、(2)人生の幸福感や充実感、(3)神経保護作用(神経栄養因子レベル)の3つの点から評価が行われました。

結果として、研究期間中には(1)および(3)は全3グループにおいて明らかな変化は見られませんでした。

しかし、CBDを1日に300mg摂取していたグループは(2)が他のグループよりも有意に向上したことが報告されました。

自律神経バランスを整える

パーキンソン病では、ドーパミンの分泌量が減少することによって他の神経伝達物質のバランスが崩壊します。ドーパミンの減少は脳内神経伝達物質の「バランサー」とも呼ばれるセロトニンの減少も引き起こします。

その結果、自律神経バランスが乱れて排泄障害や循環器症状など全身に様々な症状が現れます。

CBDはセロトニン受容体(5-HT1a)を活性化して、バランサーのセロトニンの分泌量を上昇させ、自律神経を整えることに有効であるとされています。

CBDやCBDオイルは現段階では従来の治療薬の代わりとして、単体で使用してパーキンソン病を治療することは研究されていません。また、これまで行われた研究も小規模なものであるため、さらなる症例数は必要です。

特にパーキンソン病のメイン症状とも言える「運動障害」に対する効果は、人とマウスの両方において一切報告されていません。しかし、薬の副作用を軽減したり「非運動症状」などの緩和には有効であると言えるでしょう。

CBDやCBDオイルは標準的な治療薬と比較すると副作用が少ない物質で安全性は高いとされていますが、多くの他の薬剤との相互作用があります。

そのため、CBDやCBDオイルの使用前には必ず担当の医師に相談をした上で使用を開始するようにしてください。
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CBDやCBDオイルはパーキンソン病を予防できる?

パーキンソン病はドーパミンの減少が招く疾患ですが、そもそもなぜドーパミン神経が障害されるかという根本的な原因はわかっていません。

通常、病気の危険因子というと脂肪分の高い食事や飲酒、ストレスをなるべく避けることなどが思い浮かぶかと思いますが、パーキンソン病との関連は現段階では証明されていません。

むしろ多くの疾患では危険因子となるような喫煙習慣や飲酒、カフェインの摂取などが、パーキンソン病を「予防」することができると言われています。

しかし、決してパーキンソン病の予防のために積極的に飲酒や喫煙が勧められている訳ではないため「適量」を心がけることが必要です。

現段階で、パーキンソン病予防として最も効果的であると考えられているのはドーパミンの分泌量を増加させることと筋力を維持するために運動をすることです。

ドーパミンは幸福感や意欲、気力などを与えます。手軽にドーパミンを増加させるには、運動や喜びを感じることなどを定期的にすることが推奨されています。

CBDやCBDオイルはドーパミンとどのように関わっているのでしょうか。

CBDやCBDオイルは、直接的にドーパミンを増加させるよりも、他の神経伝達物質への働きかけを通じて「間接的に」ドーパミンを増加させる作用があります。

例えば、内因性カンナビノイドであるAEAはドーパミンの分泌量をコントロールする作用がありますが、AEAはCBDによって分泌量が増加します。

また、CBDはドーパミン神経に発現する「アデノシン受容体」を阻害します。アデノシンとドーパミンはシーソーのような関係であり、片方の物質が抑制されると自動的にもう一方の物質の分泌が促進されます。

そのため、アデノシン受容体が阻害されると自動的にドーパミンの分泌量が増えます。

また、パーキンソン病は脳や神経組織が破壊される病気です。CBDやCBDオイルには著明な抗酸化作用があり脳細胞や脳神経を保護できることが知られています。

これらの特徴から、CBDやCBDオイルを摂取することでパーキンソン病の予防に役立てることができる可能性は高いでしょう。

パーキンソン病認知症(PDD)とレビー小体型認知症(DLB)の違いとは?

PDDとDLBは両方とも「レビー小体」という、異常なタンパク(αシヌクレイン)でできた沈着物が、神経の中に蓄積することで神経細胞が死滅して生じる認知症です。

PDDとDLBの症状は非常に似ており、両者とも記憶力や思考力、注意力の低下や複雑な作業が困難になることがあります。また、DLBの方が頻度が高いですが幻覚や妄想などの精神症状も生じます。

そして、DLBの場合もパーキンソン病と同じように運動症状や睡眠障害、自律神経障害なども頻発します。

PDDとDLBは実質的には同じ病気であり、発症の経緯や部位が違っているだけである可能性が高いと考えられています。両者の違いについて見ていきましょう。

まず、PDDはパーキンソン病を発症してからおよそ10〜15年後に発現する精神症状です。上述したように、パーキンソン病はゆっくりと進行するため、PDDが急に悪化するということはあまり考えにくいです。

PDDでレビー小体が蓄積して神経損傷が生じる部位は脳の「黒質」というドーパミン神経がある部位に限定されます。

一方のDLBは発症してから数日から数週間で一気に症状が進行すると言われています。例えば、前日まで会話が成り立っていた患者が、次の日には全く違う人のように虚ろになったり何も話さなくなったりします。

そして、幻覚症状や妄想などもPDDより早期から現われるとされています。

DLBの進行が早かったり精神症状がPDDよりも深刻であったりするのは、脳の最大体積を持つ大脳新皮質(脳の一番外側の部分)にレビー小体が蓄積するためと考えられています。

DLBの治療には基本的にはアルツハイマー病の治療薬が使用されます。

DLBにはパーキンソン病の症状も発現しますが、DLBにPDDの治療薬を使用すると副作用である幻覚や妄想などの精神症状を悪化させると言われています。

CBDやCBDオイルがPDDやDLBなどの「認知症」の治療に役立つかどうかは、研究数が不十分な状態であり、現段階では有効性が認められていません。

しかし、CBDやCBDオイルの神経保護作用や抗炎症作用、鎮静作用などはPDDやDLBの症状である精神症状や睡眠障害、自律神経障害などの軽減に有効で何かしらの効果が期待できる可能性は高いと考えられます。

処方薬と比較すると副作用がマイルドであるため、医師に相談した上で治療に取り入れてみても良いでしょう。

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