そもそもCBDやCBDオイルって何?リラックスできるの?
CBDは大麻などの植物から抽出されるカンナビノイドという成分です。CBDは私たちの体内にある身体機能を調節するエンドカンナビノイドシステム(ECS)を活性化します。ECSは炎症や疼痛、ストレス、不安、食欲、睡眠、吐き気などに関わっています。
ECSは本来、体内で分泌されているアナンダミド(AEA)や2-AGといった内因性カンナビノイドがCB1やCB2などのカンナビノイド受容体に作用することで機能しています。
CBDは直接CB1やCB2を活性化するのではなく、AEAや2-AGを破壊する酵素を抑制することで分泌量を増加させたり、CB1やCB2以外の様々な神経伝達物質受容体に作用したりします。
CBDは多様な製品に加工することができます。CBDオイルは植物から抽出されたCBDをオリーブオイルやココナッツオイルなどのキャリアオイルと混合したCBD製品で、最も広く使用されています。
大麻には精神を「ハイ」にさせるTHCというカンナビノイドが含まれています。CBDとTHCの体内での作用は全く違い、CBDには向精神作用や陶酔作用などはありません。
CBDやCBDオイルの自律神経への影響って何?交感神経・副交感神経にも働くの?
自律神経系は私たちの身体や精神でどのような役割があるのでしょうか。
自律神経系とは?
自律神経系は人が生命を維持したり、危険なことから身を守ったりするために本能として備わっているシステムです。名前の通り自動的に調節が行われます。
私たちは手足や関節、指先、眼球などを自分の意思で動かしますが、心臓や胃腸などを動かしたり止めたりと言ったコントロールはできません。
自律神経系はこれらの臓器を私たちの行動や身体の状況などに応じて働きを活発化したり抑制したりします。
自律神経系には心身の活動を活発にさせる「交感神経」とリラックスさせる「副交感神経」があります。この2つの神経はシーソーのような関係であり、一方の神経が優位になると自然ともう一方が抑制されます。
交感神経とは?
交感神経は身体が活動している日中に優位になる神経です。
交感神経が優位になることで自動的に血圧や心拍数が上昇し、全身の臓器への血流が促されます。また、脳がしっかりと覚醒したり全身の神経が過敏になったりします。
そして、思考や認知、判断、集中など様々な能力が向上します。
また、交感神経は「闘争か逃走の神経」と言われます。
「火事場の馬鹿力」がその最たる例ですが、危機的な場面に遭遇した時に上記のような能力が瞬間的に上昇し、平常時では考えられないような力やスピードを出して危険を回避することができます。
交感神経を活性化する神経伝達物質にはドーパミンやアドレナリン、ノルアドレナリンなどがあります。これらの物質は心身がストレスを受けた時や興奮した時などに分泌されます。
副交感神経とは?
副交感神経は休息時に交感神経を抑制する役割があります。
副交感神経が優位になることで心拍数や血圧を低下させたり、脳の活動や神経の働きを鈍くさせて睡眠を誘発したりします。心身をリラックスさせてエネルギーの消耗を抑制し疲労回復やストレスの軽減などを助けます。
副交感神経を優位にする神経伝達物質は「抑制系」と呼ばれるセロトニンやGABAなどです。特にセロトニンは脳内の神経伝達物質の量を整える「バランサー」と言われています。
セロトニン不足はうつ病や統合失調症などの精神疾患領域でも関わりが大きいとされている神経伝達物質です。
CBDやCBDオイルの交感神経系への作用
CBDは体内の様々な神経伝達物質の受容体に作用します。
その中で特に抑制系の神経伝達物質であるGABAやセロトニンの受容体を活性化して分泌を促進することで、心身をリラックスさせたり睡眠の質を向上したりすることが分かっています。
つまり、CBDやCBDオイルは副交感神経を優位にする作用があるといえますが、交感神経には全く作用しないのでしょうか。
現段階では、CBDやCBDオイルによって直接的に交感神経を優位にさせるドーパミンやアドレナリンなどの分泌を促進するような作用は確認されていません。
CBDやCBDオイルは睡眠の質を向上させて身体的疲労からの回復を手伝ったり、セロトニンの分泌を促進することで意欲を向上させたりして活動を促すことで、間接的に交感神経の働きを助けると考えられます。
CBDやCBDオイルは活力をもたらす?うつ病や不眠症に効果的?
CBDやCBDオイルは自律神経失調症に作用する?
自律神経失調症とは、前述した自律神経系のバランスが崩れて様々な症状が現れた状態です。
自律神経失調症と診断される患者の大半は身体の怠さや胃腸障害など「なんとなく調子が悪い」と感じて病院を受診しても異常が見つからないことがほとんどです。
脳神経疾患などの原因がはっきりしていることもありますが、多くは仕事や勉強などでストレスを感じていたり、長時間労働、過度なダイエット、偏食、ジャンクフード、飲酒、喫煙など環境や生活習慣に起因します。
自律神経系は全身の臓器に存在します。そのため、そのバランスが崩れると全身に様々な症状が現れます。
どちらか一方だけが常に優位になるとどのような症状が現れるのでしょうか。
交感神経の働きが過剰な場合
交感神経が優位になることは仕事や勉強、スポーツなどでより良い成果を出すために不可欠ですが、過剰になると心身に必要以上の緊張をもたらします。
精神的および身体的ストレスの多い現代社会では自律神経失調症の患者で、交感神経が優位であるケースがほとんどであるとされています。
交感神経が優位な場合に頻繁に現れる症状の一例には以下のようなものがあります。おそらくほとんどの方がこのような症状を経験したことがあるのではないでしょうか。
消化器症状
胃痛や吐き気、下痢、便秘、食欲不振、体重減少など
循環器症状
血圧の上昇や頻脈、動悸、胸の痛み、冷や汗、手足の冷えなど
精神・神経症状
不安や緊張感、いらだち、焦り、睡眠障害、頭痛、手足の痛み、慢性疲労など
免疫系
免疫力の低下による感冒症状など
副交感神経の働きが過剰な場合
上記のような症状とは反対に、副交感神経が常に優位になるとどのような症状が引き起こされるのでしょうか。
副交感神経が優位である場合、心身がリラックスしている状態なので特に問題がないと思われるかもしれません。しかし、副交感神経ばかりが活発になり、交感神経が機能しないことも望ましくはありません。
成人で副交感神経が優位になりやすいのは「だらけきった状況」が原因であることが多いとされています。
日中にあまり活動をしなかったり自宅に引きこもりがちで刺激が少ない状況であったりすると無気力や抑うつなどを感じやすいです。そして活動量が低下するため、代謝が悪くなり太りやすくなるということもあります。
また、成長期の小学生や中学生に多い「起立性調節障害」も副交感神経が日中に優位になる自律神経失調症の一つです。起立性調節障害の代表的な症状として朝になかなか起きることができないことがあります。
これは一見すると生活サイクルが不規則であることや単なる寝不足などのようですが、起床から数時間は光を浴びたり体を動かしてもなかなか交感神経が活性化しません。
そのため、血圧や脈拍などが上昇せずめまいやふらつき、気持ち悪さなどを感じたり、座った状態から立ち上がった瞬間に失神するようなこともあります。また、集中することが難しかったり意欲の欠如なども見られます。
このような起立性調節障害の心身への影響は理解されづらく、「やる気がない」「身体が弱い」と見なされて学業に影響が出たり不登校になったりすることもあります。
また、交感神経が優位になると免疫細胞の活動性が低下すると説明しましたが、副交感神経が優位になると免疫細胞が活性化するため、アレルギーを起こしやすくなるとされています。
起立性調節障害を抱える子どもの多くが喘息や鼻炎などのアレルギー体質であると言われています。
現在の自律神経失調症の治療法
交感神経と副交感神経はどちらがより重要ということではなく、両方ともしっかりと機能し、昼と夜、活動時と休憩時などに切り替えがうまくいくことが大切です。
例えば、日中は交感神経が優位になることが望ましいですが、食事中にまで交感神経が優位では食欲が低下したり消化不良などが引き起こされる可能性があります。
自律神経失調症の治療の目的はこれらの自律神経系のバランスを整えることです。現在、自律神経失調症に対する決まった治療法や治療薬などはありません。
原因が精神的な問題であればカウンセリングが必要な場合もありますし、仕事の忙しさや生活習慣などに起因するものであればそれらを変える必要があります。
そして、低血圧や睡眠障害、胃腸の症状などの問題に対して内服治療が必要な場合は、昇圧薬や睡眠導入剤、胃腸薬などの必要な薬が処方されます。場合によっては自律神経そのものを整える薬が処方されることもあります。
CBDやCBDオイルの自律神経失調症への効果
CBDやCBDオイルは交感神経が優位な場合も副交感神経が優位な場合も、様々な症状の改善に効果が期待できます。
例えば、CBDやCBDオイルの身体をリラックスさせる作用は不安や抑うつなどの症状に効果があったり、血管を拡張して血圧を下げたり睡眠の質を改善したりします。
また、心身がリラックスすることは消化器症状の改善も期待できます。そして、鎮痛効果があるため、頭痛や手足の痛みなどを軽減することもできるでしょう。
さらに、CBDは過剰に活性化する免疫をコントロールできるため、副交感神経が優位になった場合のアレルギー症状を軽減することにも繋がるでしょう。
CBDやCBDオイルはアレルギー反応を引き起こす?それとも緩和する?
CBDやCBDオイルは自律神経失調症の治療薬になり得る?使用する際の注意点も紹介!
CBDやCBDオイルは重篤な副作用がなく幅広い効果があるため、自律神経失調症の症状があり他に疾患などがない場合は試してみる価値はあると言えるでしょう。
CBDやCBDオイルは自律神経失調症の様々な症状を改善することは期待できますが、CBDが自律神経バランスそのものを正常化できるかどうかは今後さらなる研究が必要です。
そもそも自律神経失調症の治療において薬はあくまで補佐であり、生活習慣の見直しが欠かせません。CBDやCBDオイルに頼るだけでなく、食事や運動習慣、活動と休息のバランスなどを見直してみましょう。
そして、CBDやCBDオイルを摂取したり生活を改善しても血圧の異常値や胃腸障害などが持続する場合は自律神経失調症以外の疾患がある可能性もあります。
自己判断で自律神経失調症と決めつけず、必ず医師の診察を受けるようにしてください。
また、CBDやCBDオイルは他の薬との飲み合わせに気をつける必要があるため、持病がある場合や内服などをしている場合は、CBDやCBDオイルの使用を開始する前に必ず医師や薬剤師に相談するようにしてください。
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