アメリカでは誰もが知ってる?CBDやCBDオイルって何?
CBDやCBDオイルは現段階でアメリカではどれほどの認知度があるのでしょうか。New Frontier Dataという2014年に設立されたカンナビス(大麻)産業を専門とするアメリカの調査会社によると以下のような結果があります。
2020年に行われた全米での調査で、CBDについて知っている人は約90%、CBDを過去に使用したことがあると回答した人は約18%という結果でした。
アメリカではすでに認知度や人気が非常に高いことが伺えるCBDやCBDオイルですが、そもそもどのような製品でどのようなメリットがあるのでしょうか。
CBD(カンナビジオール)とは、カンナビス・サティバ・エル(産業用ヘンプ)やカンナビス・インディカ(マリファナ)などの大麻草などから抽出されるカンナビノイドと呼ばれる天然成分の一種です。
マリファナと言えばすでに周知されているように、摂取すると精神を「ハイ」にさせる作用があり、多くの国や地域などで所持や栽培が禁じられている植物です。
しかしこれはTHC(テトラヒドロカンナビノール)というCBDとは別のカンナビノイドが引き起こす作用であり、CBDにはこのような作用はありません。
またCBDは様々な形態の製品に加工ができることも急速に普及した要因の一つと言えます。
脂溶性であるCBDの特性を活かしたCBDオイルは、オリーブオイルやココナッツオイルなどのキャリアオイルにCBDを混合したもので、現在世界で最も使用されているCBD製品の一つです。
CBDやCBDオイルを使用する目的は様々です。慢性的な痛みの緩和や不安の軽減、睡眠障害の改善など生活の質(QOL)の向上や、関節炎やがん症状、てんかんなどに対して使用されています。
CBD利用者はどんな目的が多い?アメリカでは30%がCBD経験者?
世界のCBD産業における現在と未来の動向を徹底分析!
アメリカではすでに超巨大なマーケットとも言えるCBD産業ですが、世界ではどのように拡大していっているのでしょうか。様々な側面から動向を解説していきます。
いくつかの主要な国をピックアップして、国別によるCBDのマーケットサイズ(規模)や特徴を見ていきましょう。
北アメリカ(アメリカ合衆国・カナダ)
New Frontier Dataによると、世界一のCBD消費大国であるアメリカでは2020年のCBD製品の消費総額は約150億ドル(約1兆5,550億円)と予想されています。
消費者一人当たりの平均年間消費総額は約320ドル(約33,000円)と推測されており、CBDユーザーのうち3割近くが月に約50ドル(約5,200円)以上をCBDの購入に出費しているとの統計があります。
また、現在から2025年までの消費総額の累計はその8倍の1,210億ドル(12兆4,400億円)にものぼるであろうと推定されています。
一方でアメリカの隣のカナダは、CBDの原料となる産業用ヘンプの生産量・輸出量の増加が期待されています。
2016年から2017年にかけて、カナダ全土の産業用ヘンプの農地の広さが75,000エーカー(東京23区の面積の約半分に相当)から140,000エーカーに拡大しており、生産量は80%上昇しています。
そして、現在カナダのCBDの生産量はCBD大国であるアメリカを抜いて世界2位となっています。
しかし近年急速にCBDの生産量が増加している中国や東南アジアの低価格生産者らとの価格競争を勝ち抜くことは簡単ではないため、今後の課題とも言えるでしょう。
アメリカにおけるCBD製品の浸透とヘンプ産業の爆発的な拡がり
アジア・オセアニア
アジアでは産業用ヘンプの生産量に注目したいと思います。
まず、中国は短期間で急激な成長を遂げており、CBDの原料となる産業用ヘンプの栽培、加工そして輸出において今や世界を牽引しています。
New Frontier Dataによると、2017年の時点で中国国内でのヘンプの売り上げは約11億ドル(約1,100億円)と推定されています。
この時点で、世界中の産業用ヘンプの売り上げの約3分の1を中国が占めていることを示しています。
中国はヘンプの栽培や加工、輸出においては世界をリードする一方で、法整備の遅れにより現在中国国内で流通しているCBD製品はCBD化粧品やCBDスキンケア用品のみがほとんどです。
その背景には、中国ではカンナビスやヘンプを含む違法薬物を規制する法律が非常に厳しく、CBDを取り扱う会社は常に厳重な警察の監視下に置かれている現状があります。
CBDビジネスを行う者ははまさに一挙手一投足を常に監査される状態であり、現段階では中国国内でCBDやCBDオイルなどを販売するにはあまりにもプロセスが多い上にリスクが高いです。
したがって、どの会社も率先して中国国内でビジネスを展開したい状況ではありません。今後、法の整備が進むことを期待したいところです。
CBDやCBDオイルは中国で合法?CBD市場の歴史と広がり
また、アジアでは美容や文化などの流行の発信地である韓国のCBD市場にも注目です。
New Frontier Dataによると韓国では2016年の時点で、CBD化粧品やCBDケア用品において約85億ドル(約9,000億円)を超える売り上げがあったと報告されています。
また2017年には、オーストラリアのMGC Pharmaceuticalsは韓国のVarm Cosmoという化粧品会社と約313億ドル(約3兆2,000億円)で供給契約を締結しています。
その契約の内容は、MGC PharmaceuticalsがVarm Cosmoへ3年間毎月15,000kgのCBDスキンケア用品の提供をするというものです。
このことからも、韓国でのCBD市場への期待の大きさが伺えます。しかし、Varm Cosmoの契約違反により2018年にMGC Pharmaceuticalsが裁判を起こしています。
アジアでのCBDの展開はまだ課題があります。
しかし、中国やインドを擁するアジアは世界の人口のおよそ60%を占めているという状況からも、この地域でのCBD市場の展開とヘンプ栽培技術の発展は無限の可能性があると考えられています。
ヨーロッパ
New Frontier Dataによるとヨーロッパ全体ではCBDの消費者は現段階で5億人以上と推測されています。
また、ヨーロッパの全CBD消費者のうち約30%が月に100ユーロ(約13,000円)以上を費やしているとのことです。
アメリカのBright Field GroupというCBDのデータ調査会社によると、2018年時点ではイギリスとオーストリアがヨーロッパ最大のマーケットでした。
イギリスとオーストリアの2カ国のそれぞれのトータルセールスは約8000万ドル(約83億円)にものぼりました。また、2018年のヨーロッパ全体では3億1,800万ドル(約320億円)と報告されています。
現在ではドイツが台頭してきていますが、今後もしばらくはイギリスが消費量のトップの座を守ると考えられています。
また、CBD製品の品質管理に関する法の整備が完了したスイスとスペインも今後注目の国となるでしょう。このような背景もあり、2023年にはヨーロッパ全体の消費量は現在の約4倍に膨らむことが期待されています。
ヨーロッパのCBDやCBDオイルに対する動向は?歴史や合法性も解説
年齢別に見るCBDユーザー
CBDやCBDオイルを頻繁に使用するのはどの世代でしょうか。世界最大のCBD市場であるアメリカを例に見てみましょう。
アメリカのGallupという会社の2019年のデータを見ると、CBDを日常的に使用している人口の割合は以下のようになっています。
- 18〜29歳:20%
- 30〜49歳:16%
- 50〜64歳:11%
- 65歳〜:8%
18〜49歳の働き盛りと言える世代ではおよそ5人に1人がCBDを常用している計算になります。
また、アメリカBDS Analysticsによると、CBDユーザーはCBDを摂取していない人に比べ高学歴でフルタイムの仕事をしている人が多いという興味深い統計もあります。
製品別に見るCBD
アメリカのSingle Careの調査によると、今の段階ではCBDユーザーの半数以上はCBDオイル(液体)、CBDローション・CBDバーム、そしてCBDグミを好んで使用するということでした。
また、今後使ってみたい製品のラインナップを見るとCBDエディブル(CBD食品など)の市場の拡大が見込まれるのではないかと言われています。
- CBDカプセル・タブレット:18%
- CBDトピカルスプレー:18%
- CBC入り食品(チョコレートなど):17%
- CBDベイプ:13%
- CBD石鹸:12%
- CBD入り飲料(ノンアルコール):11%
- CBD入り入浴剤(バスボム・バスソルトなど):9%
- CBDスキンケア用品:8%
- CBDパッチ:8%
ディストリビューター別に見るCBD
現在アメリカでは40%を超えるユーザーがCBDをディスペンサリー(大麻用薬局)で購入しています。その他、34%が小売店、27%がオンラインショップ、12%がそれ以外のルートと答えています。
アメリカのBDS Analyticsによると近い将来、CBDの売り上げはディスペンサリーではなく大半以上がスーパーマーケットやカフェ、ドラッグストアなどの一般の小売店に変わるだろうと予想しています。
日本のCBD産業の市場規模は?新たな成長産業になる?
CBD大国のアメリカや世界でのCBD市場はこれから右肩上がりに成長を続けることが予想されますが、非常に保守的である日本ではどのように展開されるのでしょうか。
日本の大麻の歴史
大麻は一万年以上昔から日本人の暮らしには欠かせない植物でした。日本では古くから大麻は自生しており、厳しい環境でも育ちやすい植物です。
大麻の繊維は軽くて丈夫であるため、衣服などを作ったり生活に必要な縄や網など様々な道具を作ったりするために使用されていました。また、麻の実を食べる習慣もこの時代に既にありました。
そして、日本独自の宗教である神道において大麻はなくてはならない神聖な植物です。
現代でも神社でお祓いの際に使用される大麻(おおぬさ)やしめ縄、皇室の神事に使われる麻布でできた衣装など、伝統は受け継がれています。
古代から日本の生活に欠かせない大麻ですが、日本では医療用や嗜好用として大麻が使用されていたことはあるのでしょうか。
日本では第二次世界大戦以前に、中東などから輸入されたカンナビス・インディカが「大麻煙草」「喘息煙草」として喘息の治療用に販売されていました。
しかし、日本で栽培していた大麻を嗜好用大麻(麻薬)として吸引する習慣はありませんでした。
第二次世界大戦後、GHQによって1948年に大麻取締法が制定されます。
法律の制定当初、日本国内で栽培されていた産業用大麻(カンナビス・サティバ・エル)も栽培を禁止されますが、麻農家にとっての死活問題となったり、伝統産業の廃止にも繋がったりするため麻農家からの反対が起きました。
その後、THCの含有量が少ない産業用大麻はライセンス制で栽培が許可されるようになり、麻の茎と実のみが製品や食品として用いることができるようになりました。
大麻取締法の施行から日本では大麻は麻薬として教育され、現在でも多くの方が大麻という植物そのものに対して嫌悪感があります。大麻の効能やその成分であるCBDやTHCについて知る機会は少ないでしょう。
また、保守的で真面目な国民性もあるため、アメリカで医療用大麻や嗜好用大麻などを合法化する流れが広まっても、日本で公に合法化を訴える人は少ないです。
2016年には末期ガンの男性が違法と知りながらも医療用大麻を栽培・使用し逮捕されました。男性は医療用大麻の効果や必要性を訴えて裁判となりましたが、判決が出る前に亡くなっています。
この一件からもどんな理由であっても日本で大麻が受け入れられることが難しい社会であることが伺えます。
日本でのCBD市場の今後は?
日本国内では2016年よりCBD製品が販売されるようになりましたが、CBD市場が爆発的に成長しているとは言い難く、CBD市場はまだ非常に「若く」そして「ニッチ(小規模・限定的)」と言われています。
世界と比較するとまだ規模は小さいですが、2016年に日本で初めてCBDを販売した会社によると、2018年には年間の売り上げが一年で約100%増の速度で成長していると報告されています。
そのため、この調子で売り上げが伸びていけば今後アジアで中国に次ぐ市場の大きさとなる可能性があると期待されています。
また日本を「世界一CBD市場拡大のポテンシャルがある」と見るマーケティングリサーチャーもいます。
実際に日本では様々な需要があると考えられていますが、CBDの普及が期待されるのはどのような分野・業界でしょうか。世界に類を見ない日本特有の人口ピラミッドや医療サービスなどから分析していきたいと思います。
高齢者医療
日本は世界でも屈指の超高齢社会です。内閣府の発表によると、2019年の65歳以上の人口の割合は28.1%です。
2010年をピークに日本の総人口は減少していますが65歳以上の人口割合は増加の一途を辿り、2065年には38.4%に達する見込みです。
それに反比例して15〜64歳の「高齢者を支える人口」は現在の60%程度に減少することが予想されています。
今後は労働者数の減少により税収は減少すると予想されますが、このまま高齢者の増加に伴って医療費が増加し続けると医療の崩壊は免れません。超高齢社会で医療費が財政を圧迫する状況を至急解決することが求められます。
CBDは健康維持に有効であるため、CBDによる健康維持が若いうちから習慣化することで将来病気になるリスクを下げたり、健康寿命を伸ばして必要以上に医療や介護を利用することを回避できるようになるかもしれません。
問題は深刻ではありますが、日本では50歳以上は経済的に余裕があることもあり、人口の約3分の1を占める高齢者の健康をターゲットにしたCBD事業を展開できれば非常に大きな市場となることは間違いないでしょう。
精神保健
高齢者の医療費問題とともに問題となっているのが精神疾患患者の「社会的入院」です。
社会的入院は、身体的には入院が必要ではない状況であっても退院後のサポートなどが不十分であることから自宅に帰ることができず、病院を施設として利用している状況です。
日本は精神病棟の病床数と精神疾患患者の社会的入院の件数・日数が他国と比較すると突出して多い状況になっています。
30年前の入院日数の平均500日という状況から比較すると現在は平均268日で半分ほどに減少していますが、それでも精神疾患患者の入院日数が平均50日以下の他国と比べると、日本は5倍以上入院させている状況です。
また、5年以上入院する患者の総数は減っていますが、1年未満、もしくは1年以上5年未満の入院患者数は平成15年以降横ばいの状態です。
そして、2000年以降の約20年間で精神疾患の患者数は1.6倍に増え、2017年の時点では精神科や心療内科の受診、入院患者数の合計で419.3万人と報告されています。
日本は幸福度が低く、ストレスや不安、うつ病、長時間労働、引きこもり、不眠症、薬物依存、高い自殺率など精神衛生に関する問題が山積みとなっています。
特に自殺率は先進国のなかで常にトップの状態です。また、2019年までは10年連続で毎年自殺者数が減少していましたが、2020年は7月以降5ヶ月連続で前年比を上回っています。
理由は様々ですが、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響による失業や生活が不安定になったことなども関係していると考えられています。
また、様々な理由から「引きこもり」も年々増加しており、2019年には全国で約100万人以上と推測されています。以前は若年層が多かったものの、現在は中高年の割合の方が上回っていると報告されています。
そして、精神疾患では副作用や依存性が強い向精神薬や抗不安薬などの過剰投与されることも問題になっています。
CBDには不安神経症やうつ病、睡眠障害など、様々な精神疾患の症状を改善する可能性が示唆されています。また、高齢者に多いパーキンソン病やアルツハイマー病などへの効果も期待されています。
CBDオイルはパーキンソン病やレビー小体型認知症に作用する?
様々なアメリカのデータを見ると、現段階でおよそ40〜60%のCBDユーザーが「不安」に対してCBDを摂取しているようです。
日本での正確なデータはありませんが、引きこもりなどの原因となる社会不安障害などに対してCBDはまだほとんど使用されていないのではないでしょうか。
日本では、今後も精神疾患を抱える患者が増え続けることが予想されます。
CBD産業が精神保健の分野に本格的に参入することは日本にとって新しいビジネスとなるだけでなく、日本の社会が抱える大きな問題の解決の糸口となるかもしれません。
日本におけるCBD普及への課題
日本のCBD市場が拡大するためには、まずはCBD自体の認知度をあげること、そして「大麻由来」「怪しい」「身体に悪い」といったネガティブなイメージを払拭することではないでしょうか。
そのため、日本では大麻吸引や水タバコを連想させるようなVAPEの普及はなかなか難しく、化粧品や食品などの方が先に受け入れられやすいと考えられます。
美容業界もCBD化粧品やスキンケア用品などに注目しています。今年、2020年には日本初のCBD基礎化粧品ブランドが発表され、インスタグラムなどでも徐々に注目を集めています。
韓国では既にCBD化粧品やCBDスキンケア用品が今後10年で250億ドル(約2兆6千億円)の売り上げが見込まれています。
日本でも流行に敏感な女性によって美容業界にCBDが広まるのは間近ではないかと考えられます。
また、東京ではCBD入りドリンクやCBD入りデザートなどが楽しめるCBDカフェが今年に入って続いてオープンしています。
CBD専門店というと警戒してしまうかもしれない人でも、気軽に入れるようなカフェなどであればCBDに対する抵抗が少なかったり、またSNSなどでシェアしたりすることで認知度は広まっていくのではないでしょうか。
これからCBDのブームは日本でも確実にやってくるでしょう。
関連文献
CBD産業に関して皆様から頂いた質問
CBDはどの年代の利用者が最も多いですか。(30代男性)
アメリカのGallupという会社が2019年に行った調査データを見ると、CBDを日常的に使用している人口の割合は18〜29歳が20%と最も多いです。次に、30〜49歳が16%です。18〜49歳の働き盛りと言える世代ではおよそ5人に1人がCBDを常用している計算になります。
世界でのCBDの認知度はどのくらいですか。(30代女性)
2020年に行われた全米での調査で、CBDについて知っている人は約90%、CBDを過去に使用したことがあると回答した人は約18%という結果でした。日本のようにCBDの認知度がまだ低い国もあれば、アメリカのようにほとんどの人がCBDを知っている国もあるようです。
日本でのCBD業界は今後どのようになると予想されますか。(40代男性)
2020年には日本初のCBD基礎化粧品ブランドが発表され、インスタグラムなどでも徐々に注目を集めています。今後は、流行に敏感な女性によって美容業界にCBDが広まるのは間近ではないかと考えられます。