CBDやCBDオイルは産後の症状を緩和する?授乳中に摂取して良い?

CBDやCBDオイルは産後の症状を緩和する?授乳中に摂取して良い?

CBDやCBDオイルを日常的に摂取している女性は多いと思いますが、産後にも使用出来るのでしょうか。本記事では、CBDやCBDオイルが産後の母体に与える作用や、母乳を通じて赤ちゃんの健康に影響はないのかどうかについて解説します。

CBDとは?危険なもの?

CBDとTHCの違い
近年日本でも注目され始めたカンナビジオール(CBD)は大麻などに含まれるカンナビノイドと呼ばれる成分の一種です。CBDには幅広い作用が期待できる上、副作用が市販の薬などと比較して少ないことが特徴です。

CBDは疼痛や炎症、不安、ストレス、睡眠、食欲などの調節機構である私たちの身体のエンド・カンナビノイド・システム(ECS)に働きかけます。

ECSはもともと、全身に発現するCB1やCB2などのカンナビノイド受容体に、アナンダミド(AEA)や2-AGなどの内因性カンナビノイドが作用することで機能しています。

CBDは直接CB1やCB2への作用はありませんが、AEAや2-AGを破壊する酵素を抑制することで分泌量を増加させたり、様々な神経伝達物質の受容体に作用することが2015年にカナダで報告されています。

大麻にはTHCという向精神作用や陶酔作用などを引き起こすカンナビノイドが含まれています。これらの作用が広く知られているため、CBDにも身体への悪影響があったり違法であったりすること心配されるかもしれません。

THCとCBDの体内での作用は全く違うため、CBDを摂取しても「ハイ」になることはありません。また、日本で大麻取締法において所持が禁止されているのはTHCを含有する植物や製品に限ります。

産後どのような症状が現れることがある?

妊娠期間の十月十日で身体や精神は大きく変化します。産後、身体は産前の状態に戻るために再び大きく変化することに加え、育児という慣れない環境的変化もあります。

常に心身が変化する妊娠期間を経て、産後にはどのような症状が現れるのでしょうか。

全身の痛み

通常の子宮の大きさは握りこぶし一つ分程度ですが、出産直前にはそれが約20〜30倍に大きくなります。そして、出産後に子宮が広がったままでは出血するため、産後すぐから元の大きさに戻るために収縮します。

子宮が収縮する際に後陣痛と呼ばれる下腹部の鈍痛が生じます。多くの女性が経験したことのある生理痛と同じような痛みです。後陣痛はおよそ2週間ほど続くとされ、その間は生理のような出血(悪露)もあります。

また、産後は関節痛や腱鞘炎も生じます。その原因には、ホルモンバランスが急激に変化することやカルシウムが不足しやすいこと、また、赤ちゃんを抱える機会が増えることなどが関わっています。

関節の痛みは子どもを抱き上げたり子どものお世話をする間はずっと続く可能性もあります。

他にも、会陰を切開した場合は傷が治るまでは会陰の痛みや排尿時痛などがあります。また、乳腺炎や授乳による乳頭裂傷などによる痛みもあります。

消化器症状

産後、授乳を開始すると食欲が異常に増加すると言われています。また、慣れない環境などのストレスなどでも食べ過ぎてしまったり、反対に食欲が低下する方もいるでしょう。

そして、育児が始まるとゆっくりと自分の食事に時間をかけられなくなり、食事の時間がバラバラになったり急いで食べなければならなかったりすることなどもあると思います。

食事量の増減に加え、育児に追われると赤ちゃんが気になるためトイレにあまり行かなくなくなったり、運動量が少なくなったりすることで便秘になりやすくなると言われています。

また、食事や運動習慣の変化から、産後に妊娠以前より体重が増加することも珍しくありません。

精神・神経症状

ホルモンバランスや生活サイクルなどの急激な変化は、精神面へにも多大な影響を与えます。

多くの方がマタニティ・ブルーや産後うつという言葉を聞いたことがあるかと思います。

マタニティ・ブルーは半数近くの産婦が経験すると言われいる産後2〜3日頃から現れる短期間の精神症状で情緒不安定、不安、抑うつ、イライラ、注意散漫、不眠、頭痛、疲労感などの症状が現れます。

マタニティブルーは10日ほどすると自然に症状が快方に向かい、一ヶ月ほど経過するとほとんどなくなるとされています。

一方で産後うつはマタニティー・ブルーが終わる頃に始まるとされています。長ければ一年以上続くこともあるため早めの診察や治療が大切です。

産後うつのサインの一つに日常での思考力の低下が挙げられます。赤ちゃんのお世話や自分の食事の準備などをしなければならないと分かっていても、何をどうすれば良いか考えられなくなると言われています。

産後うつになりやすいのは妊娠前からうつの症状があった方だけではありません。

キャリアウーマンだった方が妊娠・出産前後での生活の変化の大きさに戸惑うことや、自身のキャリアへの不安などから産後うつになる方も多いとされています。

また、産後うつに加えて生活サイクルの乱れは長期的な睡眠障害を引き起こす可能性があります。深夜に何度も授乳したりオムツを変えたりして体内時計が狂うと、身体は疲労しているのになかなか眠れなくなります。

そして、睡眠障害は産後の身体の回復や産後うつ、日常の疲労感などをさらに悪化させてしまいます。

CBDやCBDオイルは産後の症状に作用する?

CBDと妊婦
産後の症状は身体にも精神にも様々な形で現れますが、CBDやCBDオイルはどのように作用するのでしょうか。

鎮痛作用・抗炎症作用

CBDやCBDオイルは体内で数多くの物質に働きかけ、全身の痛みを緩和することができると言われています。

例えば、産後特有の痛みである後陣痛は子宮の収縮によって引き起こされますが、CBDやCBDオイルは同じく子宮の収縮である生理痛に有効であると2017年にブラジルで報告されています。

生理痛などで頻繁に服用されるロキソニンなどの「NSAIDs」という種類の薬剤の作用と、CBDの作用は非常に似ています。そのため、市販の鎮痛剤などの代わりとして使用しても有効である可能性が高いです。

NSAIDsはプロスタグランジンという炎症や疼痛を引き起こす酵素(COX2)の分泌を阻害します。

プロスタグランジンは炎症や疼痛の原因となるだけではありません。COX1というプロスタグランジンには胃粘膜を守る役割がありますが、NSAIDsはCOX1とCOX2を両方とも阻害します。

そのため、NSAIDsを服用すると鎮痛作用は強いですが、副作用として胃痛などの消化器症状が現れます。

一方で、CBDはCOX2の産生を抑制しますが、COX1に対してははほとんど作用しません。つまり、CBDを摂取すると胃痛などの副作用を気にすることなく鎮痛作用が期待できます。

また、CBDは免疫細胞から分泌される炎症性物質を抑制することで全身の炎症を軽減する作用もあります。関節炎や腱鞘炎などは赤ちゃんを抱きかかえたり家事をしたりすることで長期間続くことが考えられます。

関節炎などに対してはCBDの粘膜摂取や経口摂取なども有効ですが、CBDを患部に直接塗ることもできます(経皮摂取)。皮膚からCBDを吸収させる場合は、CBDを塗布した部分にだけ局所的な効果が得られます。
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食欲・体重のコントロール

CBDと食欲の関係
CBDやCBDオイルは脳の食欲中枢を調節し食欲を抑え、反対に食欲がない場合に食欲を増加させる作用も示唆されています。

そのため、ストレスや授乳の影響などで過食気味である場合や、睡眠不足や疲労などで食欲が低下している場合など、両方において作用する可能性が高いです。
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便秘の解消

ECSは消化管の機能の調節にも関わっています。

全消化管内にはCB1が発現し、2-AGによって活性化されることで腸管の動き(蠕動運動)を良くしたり便秘を改善できる可能性があることが2015年にカナダで報告されています。

また、身体が緊張状態にあると腸の蠕動運動はほとんどなくなります。CBDやCBDオイルは副交感神経を優位にして心身をリラックスさせる作用があるため、精神的な緊張からくる便秘の改善にも有効である可能性が高いです。

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これらのことから、CBDやCBDオイルによって便秘が解消される可能性は高いでしょう。

精神・神経症状の緩和

CBDは脳内の神経伝達物質のバランサーであるセロトニンの分泌量を増加させることで心身をリラックスさせたり、脳の不安をコントロールする中枢に間接的な働きかけをすることで不安を緩和させたりします。

産後うつは出産後から一年以上継続する可能性もあります。病院などで処方される抗うつ薬や抗不安薬などは副作用も多いため、長期間の使用は望ましくありません。

後で詳しく解説しますが、授乳などがない場合に限り医師に相談した上で副作用の少ないCBDやCBDオイルを試してみるのも良いでしょう。
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睡眠・覚醒サイクルの改善

睡眠障害の改善は、CBD製品のレビューなどでも最も頻繁に見かけるCBDのメリットの一つです。過去には多くの睡眠に関連する研究も行われており、その有効性は示唆されています。

育児で特に生後半年頃まではまとまった睡眠時間を確保することは難しく、どうしても深夜に何度も起きなければならないことも多いでしょう。

継続して睡眠時間を確保できないと、日中に眠気が強くなったり思考力や判断力などの低下に繋がるため危険なことがあります。

CBDやCBDオイルは睡眠の質を改善することで広く知られていますが、摂取量によっては脳を覚醒させる効果もあると、2014年にブラジルにて報告されています。

睡眠前の摂取に加え、日中に眠気が起きない程度にCBDを摂取することで産後うつの症状の一つでもある思考力・判断力の低下などにも有効である可能性が高いです。

CBDやCBDオイルは産後や授乳中に摂取しても良い?

授乳中は母親が摂取したものが母乳に影響を与えるため、CBDやCBDオイルを摂取することで赤ちゃんに影響があるかもしれないと心配されるかと思いますが、実際はどうなのでしょうか。

母乳への影響は?

CBDと子ども
アメリカの小児科医であるNewman医師によると、母親の「血液から」母乳に移行するCBDの量は、母親が摂取したCBDのうちの0.1%程度とされています。

赤ちゃんが飲んだ母乳のうち、消化管から吸収されて血管へ吸収されるCBDの量は6〜20%です。

つまり、最終的に赤ちゃんの血管内に吸収されるCBDの量は、母親の血管内に吸収されたCBDのうちの0.006〜0.02%です。

例えば母親が10mgのCBDを舌下摂取(吸収率:13〜35%)した場合、赤ちゃんの血管内に吸収されるCBDの量は最高でも0.0007mgです。

したがって、たとえCBDが赤ちゃんにとって危険な物質であったとしても、母乳に含まれる程度の量を摂取する限りは問題は全くないと考えられています。

ただし、母親がCBDやCBDオイルを摂取しても危険は少ないというだけで、推奨されているわけではありません。

アメリカ食品医薬品局(FDA)の見解は?

CBDやCBDオイルが日本以上に普及しているアメリカでは正式な統計はないものの、妊娠中や産後にサプリメントを始めとしてCBDやCBDオイルを使用する女性は少なくはないようです。

インターネット上では妊娠中や産後にCBDやCBDオイルを使用して、つわりや産後うつなどが改善したという逸話が複数見受けられます。

しかし多くの逸話があるものの、妊娠中や授乳中にCBDやCBDオイルを使用することに対する安全性を証明する正式なエビデンスはありません。

これまでに、母親が大麻を常用している場合の妊娠や胎児への影響などについての研究はありましたが、CBDやCBDオイルだけに焦点を当てた研究はありません。

現段階でFDAは、まだ安全性を証明するエビデンスがない状況であるため、妊婦および授乳中の産婦はCBDを摂取するべきではないと提言しています。
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授乳しなければCBDやCBDオイルを摂取しても良い?

産後、様々な理由で授乳をしないのであれば赤ちゃんが母乳を通じてCBDを摂取する危険性はありません。

上述したようにCBDやCBDオイルには多くのメリットがあり、また副作用なども病院で処方される薬などと比較すると非常に少なくマイルドな症状がほとんどです。

比較的安全性の高い成分ではありますが副作用は全くないわけではなく、人によっては過剰摂取してしまうと強い眠気が生じたり疲労感が増強したりしてしまうこともあります。

妊娠前などからCBDやCBDオイルを使用しており、自身の適切なCBDの摂取量を把握している場合であれば摂取しても良いと思われるかもしれません。

しかし、出産後の身体はホルモンバランスなどが不安定であるため、妊娠前と全く同じ効果を得られるかどうかはわかりません。また、以前にはなかった副作用などが現れることも考えられます。

そもそも、個人差はありますが体格や骨盤が比較的小さい日本人は、欧米諸国の女性と比較して、体重が3kg近い胎児を子宮内で育て出産する負担がより大きいと言われています。

例えば、イギリス王室のキャサリン妃は入院後3時間で出産し、出産後7時間で退院をしたことがあります。

しかし、彼女の骨格と平均的な日本人の骨格は全く違いますし、退院後の医療体制などの整備もおそらく大きく違います。私たち日本人が同じように出産後数時間で歩けるまでに復活するかというとおそらく無理でしょう。

産褥期(産後6〜8週以内)は特に身体の回復に最も大切な時期であり、伝統的に日本では「床上げ」までの3週間は極力身体に負担をかけないよう周囲の協力を得て母親はなるべく布団の上で過ごす習慣があります。

産褥期に無理をすると後々に影響をすると言われており、医療が発達した現代であっても産後の日本人女性の身体は回復に時間がかかることには違いがありません。

そのため、産褥期においてはCBDやCBDオイルの摂取にはより慎重になるべきでしょう。

結論として、欧米の妊産婦の間でCBDやCBDオイルは時期に関係なく使用されているようですが、日本では授乳をしない場合であっても心身の調子が不安定なうちにCBDやCBDオイルを摂取することはおすすめしません。

ただし、局所的な効果を得られる経皮摂取の場合は全身への作用がないため、CBDジェルなどを関節痛や腱鞘炎などに使用することは問題がないでしょう。

授乳をしない場合でCBDやCBDオイルを使用したい場合は、必ず婦人科医師や心療内科医師などに相談をするようにしてください。

産後の長期的な問題である産後うつの傾向がある場合は、早めに対処をすることでその後の経過が変わる可能性が高いです。

また、産後に初めてCBDやCBDオイルを摂取する場合は、強い眠気などの副作用が現れる可能性もあるため、必ず他の誰かが赤ちゃんを見ていられる状況などで使用するようにしてください。

関連文献

産後のCBDの使用に関して皆様から頂いた質問

CBDは産後のどのような症状に作用しますか(20代女性)

鎮痛作用・抗炎症作用、食欲・体重のコントロール、鎮痛作用・抗炎症作用、便秘の解消、睡眠の改善などに作用するのではないかということで海外では研究が行われています。ただし、まだ研究段階でもありますので。CBDやCBDオイルを使用したい方は、必ず婦人科医師や心療内科医師などに相談をするようにしてください。

産後に授乳をしない場合、CBDは摂取しても大丈夫なのですか。(30代女性)

産後に授乳をしない場合であっても心身の調子が不安定なうちにCBDやCBDオイルを摂取することはおすすめしません。授乳をしない場合でCBDやCBDオイルを使用したい場合でも、必ず婦人科医師や心療内科医師などに相談をするようにしてください。

産後うつにCBDオイルを摂取しても大丈夫ですか。(30代女性)

CBDは日中に眠気が起きない程度にCBDを摂取することで産後うつの症状の一つでもある思考力・判断力の低下などにも作用するのではないかということで、海外では研究が行われています。ただし、まだCBDの研究も少ないことから、使用する前には必ず婦人科医師や心療内科医師などに相談をするようにしてください。