CBDやCBDオイルの作用とは?女性が抱える悩みにも効く?
CBDとは麻などの植物から抽出されるカンナビノイドと呼ばれる成分の一種です。CBDは人や動物の身体機能を調節するエンドカンナビノイドシステム(ECS)に働きかけることで心身に様々な効果をもたらします。
ECSは内因性カンナビノイドと呼ばれるアナンダミド(AEA)や2-AGが全身に発現するCB1やCB2などのカンナビノイド受容体に作用することで疼痛や炎症、ストレスや不安、睡眠などを改善する仕組みです。
CBDはCB1やCB2に直接作用することはほとんどありませんが、AEAや2-AGなどの分泌量を増加させたり、ECS以外の体内に発現する様々な受容体を活性化したり阻害したりします。
CBDやCBDオイルは、これまで有効な治療法が確立されていなかったり薬剤の副作用が強く治療が困難であったりした様々な難病の治療にも役立てられる可能性が高い成分です。
その一例として、2018年より海外では小児のてんかん発作であるドラベ症候群とレノックス・ガストー症候群の治療薬としてCBDを主成分とするエピディオレックス(Epidiolex)が処方されるようになりました。
また、大麻には精神を「ハイ」にさせるTHCというカンナビノイドも含まれており、多くの国で所持が禁止されています。CBDとTHCは全く違う作用をするため、CBDには向精神作用はありません。
今回のテーマである女性特有の症状や疾患の中でほとんどの方が経験するのがPMS(月経時症候群)であると思います。
多くの方がすでにご存知であるように、PMSは個人差が非常に大きいです。先日、SNSなどで生理用品の広告の「生理は個性」というキャッチフレーズが取り上げられ、物議を醸し出しました。
ある人は身動きが取れないほどに痛みに苦しんだり、食欲が止まらなくなったり、ネガティブな思考が止まらなかったりします。しかし一方で、ほとんど症状がなく普段と変わらずに過ごすことができる人もいます。
婦人科系の症状や病気にはエストロゲンとプロゲステロンという女性ホルモンが大きく関わっています。特にエストロゲンは後述する様々な女性生殖器疾患に関わっています。
女性ホルモンは、閉経するまでは月経やPMSの症状を毎月もたらします。閉経後は、エストロゲンの分泌量の低下に伴ってほてり(ホットフラッシュ)やだるさ、めまいなどを主症状とする更年期障害が引き起こされます。
更年期障害の治療には女性ホルモンを補充するためのホルモン補充療法が効果的です。しかしホルモン補充療法の副作用として乳がんや卵巣癌などを発症したりがんの進行が早まったりといったことが起こります。
このように女性は一生のほとんどをホルモンに振り回されるといっても過言ではありません。ホルモンの分泌は多すぎても少なすぎても身体や精神に影響を与えます。
ECSは身体の様々なホルモンの分泌に関わっているとされていますが、CBDやCBDオイルを摂取することでエストロゲンやプロゲステロンが増加したり減少したりするというエビデンスはありません。
そもそもホルモンバランスは体重や生活習慣、ストレス、年齢などの様々な要因の影響を受けることで乱れやすくなります。
CBDやCBDオイルにはホルモンに悪影響を与えるストレスの緩和や睡眠障害の改善に役立てることができます。また生理前などに甘いものなどを欲する際に食欲のコントロールなどもできるとされています。
生理やPMSに悩む女性必見!CBDやCBDオイルの有効性を解説!CBDやCBDオイルと卵巣癌や多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)に関する研究結果は?
女性ホルモンの一つであるエストロゲンは肌を綺麗にしたり胸を大きくしたりするなど、身体に「女性らしさ」を与えるホルモンです。
しかし過剰に分泌されたり、年齢やストレスなどの影響を受けて分泌量が減少すると様々な疾患が引き起こされるホルモンです。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
PCOSは卵巣で毎月卵子が作られるにも関わらず、ホルモンバランスの異常により排卵を促すエストロゲンやプロゲステロンが分泌されず、排卵が障害される症状です。疾患ではなく「体質」と定義されることが多いです。
排卵が正常に行われないために月経周期が長期化したり、男性ホルモンの影響が強く出ることからニキビや体毛の増加などが自覚症状として現れます。また、インスリンが過剰に分泌されることから肥満にもなりやすくなります。
2019年にアメリカで行われた研究では、CBDやCBDオイルはホルモンバランスを整え、インスリンの過剰分泌を抑制したり、肥満を改善するために食欲を抑えたり、また細胞のエネルギー消費を助けたりする効果などがあることが報告されています。
またPCOSはホルモン分泌に異常が生じることで精神面への影響も現れやすいです。CBDやCBDオイルは不安やストレスを軽減することができるため、PCOSの精神症状の緩和にも役立てることができるでしょう。
子宮内膜症
子宮内膜は妊娠に備えて通常は子宮の内側で増殖します。これが不要になった際に剥がれ落ちて月経時に出血が生じます。
しかし、子宮内膜症は子宮内膜となるはずの組織が卵巣や腹膜などの子宮以外の場所で増殖する疾患です。症状はひどい生理痛や不妊になりやすいことが特徴です。卵巣にできた場合はチョコレート嚢腫となります。
子宮内膜はエストロゲンによって増殖します。そのため、子宮内膜症を患っている方は薬物療法や手術療法などの治療を行わない限り閉経を迎えるまでの間は常にひどい生理痛などの症状に苦しむことになります。
また、チョコレート嚢腫から卵巣がんになるリスクは高いため、子宮内膜症だけではなく定期的に卵巣の検査も受ける必要があります。
CBDやCBDオイルの鎮痛作用は子宮の痛みや子宮内膜症に付随する腰痛などの症状を緩和する効果があるとされています。
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また、CBDやCBDオイルは異常な細胞の増殖や転移を抑制したり、細胞を死滅させたりする作用があることが、2019年にオーストリアで行われた実験で報告されています。
そのため、子宮内膜症そのものを改善できるのではないかと考えられています。
子宮筋腫
子宮筋腫は子宮の内側もしくは外側、または子宮の筋肉の層の間に発現する良性の腫瘍です。子宮の筋肉組織がなんらかの理由で腫瘍となり、エストロゲンが分泌されることによって増大します。
子宮筋腫から出血することで月経過多となったり、生理痛がひどくなったりします。
子宮筋腫が大きくなると手術で子宮筋腫のみ、もしくは子宮ごと摘出します。閉経してエストロゲンの分泌量が減少すると子宮筋腫が縮小することもあるため、経過観察のみで治療を行わないこともあります。
CBDやCBDオイルの鎮痛作用は子宮筋腫の症状である痛みの軽減に有効であるとされています。
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現段階ではCBDやCBDオイルによる子宮筋腫の縮小は報告されていません。
卵巣がん
卵巣がんは遺伝などによるリスクもありますが、ほぼ全ての女性においてエストロゲンの分泌量の減少に伴って発症のリスクが上がる悪性腫瘍です。
特にリスクが高いのは閉経前後や妊娠経験のない女性、またPCOSや子宮内膜症、子宮筋腫、チョコレート嚢腫などの婦人科疾患を患っている場合です。
CBDやCBDオイルによる抗がん剤治療における副作用改善の研究は、2019年のアメリカ・2019年のオーストリアでの論文など数多く報告されており、副作用による痛みの軽減等の作用が期待されています。
しかし、実際に卵巣がんの治療にCBDやCBDオイルが適応されるにはさらなる研究数を必要とし、まだ時間はかかるでしょう。
現在、海外では主にがん性疼痛の緩和や抗がん剤の副作用である吐き気や食欲低下を改善するためにCBDやCBDオイルが使用されています。
また、卵巣がんのリスクとなる上記のような婦人科疾患を改善できたり、さまざまながんのリスクとなる食事や睡眠などの生活習慣を改善したりするためにCBDやCBDオイルを使用することは有効であると言えるでしょう。
普段から生理が重い場合は上述したような疾患を発症している可能性があります。CBDやCBDオイルの使用を開始する前に、まずは婦人科を受診して検査を受けるようにしましょう。
また、卵巣がんは症状がないまま進行することもあります。年齢とともに女性生殖器疾患は発症する確率が高くなるため、症状がなくても定期的にがん検診などを受けるようにしましょう。
CBDやCBDオイルと不妊の関係性は?噂の真相とは?
CBDやCBDオイルは様々な女性特有の症状や疾患を改善できる可能性があることから、不妊への効果もあるのではないかと考えられていますが、現段階では不妊への効果はエビデンスが十分ではない状態です。
女性の不妊に対するCBDやCBDオイルの効果はほとんど研究が行われていませんが、CBDやCBDオイルが男性不妊や妊娠中の女性へ与える影響に関してはいくつかエビデンスがあります。
例えば、精子には植物性および内因性カンナビノイドによって活性化される受容体であるGPR18が発現します。
GPR18の活性化は精子の活動性を向上させるため、CBDやTHCの摂取によって直接的または間接的に妊娠の確率を上げることが出来ると考えられています。
しかし一方で、2015年に報告されたデンマーク人を対象にした実験では、大麻常用者の精子の量は非常用者と比較すると28%少ないことが報告されました。これがTHCによるものかCBDによるものかは正確には判明していません。
2011年に出版されたCBDやCBDオイルの副作用をまとめた海外論文の中では、「Reduced fertility capacity(生殖能力の低下)」と報告されています。
FDA(アメリカ食品医薬品局)も同研究の報告を支持しており、ホームページにてCBDやCBDオイルは男性生殖機能に影響を与える可能性があることを記しています。
そして、妊娠中の女性はCBDやCBDオイルの使用を中止するようにFDAによって警告されています。
2011年に海外で発表された論文によると、マウスを用いた研究で、内因性カンナビノイドであるAEAの分泌量の増加は胎児の成長を阻害することが報告されました。そのため、CBDやCBDオイルが妊娠に影響を与える可能性は否定できません。
実際に妊娠中にCBDやCBDオイルをつわりの対策のために服用し、特に影響はなかったという逸話もあるため、不妊治療にCBDやCBDを取り入れることは絶対に悪影響を与えるというエビデンスもありません。
しかしまずは不妊治療専門の医師などに相談をしてください。
CBDやCBDオイルを摂取する際の注意点をご紹介!
CBDやCBDオイルは市販の鎮痛剤などと比較すると副作用の心配は少ないですが、必要以上に摂取をすると下痢や強い眠気、口渇などの副作用が現れやすいとされています。適切な量を適切な方法で摂取するようにしましょう。
また、CBDやCBDオイルは他の薬の効果に影響を与える可能性があるため、薬の飲み合わせに注意しなければなりません。
他の薬を飲んでいたり、持病がある場合などはCBDやCBDオイルの摂取を開始する前に医師や薬剤師に相談するようにしてください。
関連文献
- Endocannabinoids and the Endocrine System in Health and Disease
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- Safety and Side Effects of Cannabidiol, a Cannabis sativa Constituent
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- Association Between Use of Marijuana and Male Reproductive Hormones and Semen Quality: A Study Among 1,215 Healthy Young Men
- What You Should Know About Using Cannabis, Including CBD, When Pregnant or Breastfeeding
- Modulation of the endocannabinoid system in viable and non-viable first trimester pregnancies by pregnancy-related hormones