CBDやCBDオイルは脳梗塞や脳腫瘍に作用する?エビデンスも紹介!

CBDやCBDオイルは脳梗塞や脳腫瘍に作用する?エビデンスも紹介!

医療用大麻の研究が進むアメリカでは、CBDを主成分とする薬が小児のてんかん治療薬として正式に処方されています。人気拡大中のCBDやCBDオイルは他の脳の病気にも効果があるのか、本記事では生命を脅かす脳腫瘍および脳梗塞を取り上げて解説します。

CBDオイルとは?どのような効果がある?

CBDとは大麻や産業用のヘンプなどの植物から抽出されるカンナビノイドと呼ばれる天然成分の一種です。

CBDオイルはこれらの植物から抽出したCBDを、ココナッツオイルやオリーブオイルなどのキャリアオイルと混合した製品です。

人の体内には元来アナンダミド(AEA)や2-AGなどの内因性カンナビノイドが分泌されており、全身に発現するCB1やCB2などのカンナビノイド受容体に作用することで様々な身体機能の調節が行われています。

この仕組みはエンドカンナビノイドシステム(ECS)と呼ばれ、疼痛、炎症、ストレス、不安、気分、睡眠、食欲、吐き気などの調節に関わっています。

CB1は脳や中枢神経系に多く、CB2は免疫系や抹消神経系に主に発現します。

CBDは直接CB1やCB2に作用することはほとんどありませんが、AEAや2-AGを破壊する酵素(FAAH)の働きを抑制したり、様々な脳内の神経伝達物質の受容体を活性化、もしくは阻害する作用があります。

CBDの原料となる大麻や産業用ヘンプなどには、向精神作用を示すTHCが含まれています。THCはCB1やCB2に直接作用します。そのため、THCだけを多量に摂取すると脳や神経を刺激し高揚感をもたらします。

CBDには精神を興奮させる作用はありません。CBDはCB1を抑制し、THCとは反対に興奮を落ち着ける効果があります。
 

CBDやCBDオイルは脳梗塞や脳腫瘍にどのように作用する?エビデンスを交えて紹介!

脳梗塞とは血液の塊(血栓)が脳の血管を詰まらせることで脳の主要な組織への酸素供給が遮断され、神経や脳細胞を損傷して身体機能や精神機能などが障害される疾患です。

脳梗塞は脳の血管が破れる脳出血とあわせて「脳卒中」と呼ばれ、日本では生活習慣病としてがんや心臓病に次ぐ第3位の死因です。要介護や寝たきりとなる患者の4割ほどは脳卒中が原因であると言われています。

脳梗塞のタイプや原因は様々ですが、不整脈などの心臓病が原因となってできた血栓が脳に飛んだ場合は重症化しやすく死亡率が高いです。また、脳梗塞の発作が起こってから治療が遅れると麻痺などの重篤な後遺症が残ります。

現在の脳梗塞の治療には血栓を溶かす、血液を固まりにくくする、脳のむくみを抑える、神経や脳細胞を炎症から保護する、などの様々な目的に応じた薬物治療が行われます。

CBDによる脳や血管への作用は、脳梗塞の治療に投与される薬の作用と似ていることが多いです。

CBDは神経や脳細胞などにダメージを与えるとされている体内の活性酸素を除去する抗酸化作用があり、脳細胞や神経細胞を損傷から保護する作用があります。

また、脳梗塞によって血液の流入が途絶えた(虚血状態)脳や神経は炎症性物質を分泌し、脳全体に炎症症状の一つである脳の腫れ(浮腫)が引き起こされます。

脳浮腫は外傷や脳腫瘍などでダメージを受けた時にも引き起こされる脳疾患の典型的な症状の一つです。過去に行われた研究では、虚血状態であった豚の脳浮腫がCBDの投与によって一時的に改善が見られた報告があります。

他にも、CBDは神経を構成するミクログリア細胞にも作用します。ミクログリア細胞は損傷により炎症性物質を放出しますが、ミクログリア細胞にはCB2の発現が見られ、CBDの摂取により炎症が抑制されます。

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さらには、神経を興奮させる神経伝達物質であるグルタミン酸は中枢神経系のCB1に作用しますが、脳が虚血している状態では神経の損傷を悪化させる神経細胞に作用する毒として働きます。

CBDの摂取によりAEAや2-AGの分泌量が増えることで中枢神経系のCB1が調節され、グルタミン酸による神経の興奮を抑制すると言われています。

また、CBDは神経だけではなく血管にも作用します。

セロトニン受容体である5-HT1に作用することで血管を拡張し、脳全体の血流量を回復させます。また、血圧の調節には、CBDが作用するアデノシン受容体も関わっています。

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そしてCBDやCBDオイルにも血液を固まりづらくさせる働きがあります。

血栓の治療に使用されるワルファリンやヘパリンのように強い作用ではありませんが、CBDを併用することで副作用の多い血液抗凝固薬の投与量を減らすことができると考えられています。

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これらはあくまでCBDの作用の一例ですが、様々な作用が脳梗塞の治療に効果的であると考えられています。 

現段階で実際に人にCBDやCBDオイルを投与して治療を行った実績はありません。しかし、動物実験ではこれまでに脳梗塞のサイズを縮小することに成功した症例が報告されています。

また、CBDやCBDオイルはダメージを受けた後の脳の血流量を改善し脳機能の低下を予防したことも報告されています。

そして、CBDの効果は脳腫瘍においても有効性があると考えられています。

脳腫瘍は頭蓋内にできる様々な腫瘍の総称です。脳は部位によって機能が異なるため、腫瘍ができる場所により出現する症状は様々です。また、良性腫瘍や悪性腫瘍、グレードなどによっても治療の難しさは変わります。

現在は手術や抗がん剤治療、放射線治療などを組み合せて治療しますが、完全に健康な状態に戻ることは難しく、悪性であれば5年以内の死亡率が高い疾患です。

CBDやCBDオイルの脳腫瘍への効果は、前述した通り神経保護や脳浮腫の改善などに加え、がん細胞そのものを治療できる可能性があります。

これまで行われた研究では、CBDやCBDオイルが様々ながん細胞の成長を遅らせる、がん細胞の分化を抑制する、がん細胞の転移を阻止する、がん細胞を消失させるなどの効果が報告されています。

しかし、CBDやCBDオイルを人の脳腫瘍の治療に適応するには、現段階では研究数は十分ではありません。

現在、海外などの医療用大麻が合法である地域では、抗がん剤や放射線治療の副作用である吐き気や食欲不振、疼痛などに対して医療大麻やCBDオイルが投与されている例があります。

もしも抗がん剤の副作用などに対しCBDやCBDオイルを服用したい場合は、必ず担当の医師に相談するようにしてください。

CBDやCBDオイルの服用時の注意点は?他の薬の服用中には十分注意を!

CBDやCBDオイルは処方薬と比較して副作用がほとんどありません。これまでに報告されている症状として多いものは、下痢や口渇、食欲の増加、強い眠気などですが健康に影響を与えるものではありません。

しかし、多量に摂取をすると肝臓の機能が低下することも報告されているため、効果を得るために一度に目安以上に摂取することは避けてください。

また、CBDは病院などで処方された他の薬と併用すると、体内で処方薬の効果が増強する可能性があります。

肝臓にはシトクラム450(CYP450)という薬剤の代謝・排泄に関わる酵素があります。全薬剤のおよそ60%がCYP450によって分解されているとされてます。

CBDはCYP450によって肝臓内で分解されていますが、同時にCBDがCYP450の働きを阻害します。

そのため、CBDと同時にCYP450によって代謝される薬剤を摂取すると、薬剤が体外へ排出されるまでの時間が長くなり通常よりも強い薬の効果をもたらします。副作用も増強されることがあり非常に危険です。

特に脳梗塞などの治療で投与されるワルファリンは血管内で血液が固まることを阻害しますが、必要以上に作用が増強されると些細な衝撃や少し力を入れただけでも出血してしまうような危険な状態になります。

すでに治療薬を処方されている場合はもちろんのこと、サプリメントなども含め何か内服をしている場合は必ず医師に相談してからCBDやCBDオイルの服用を開始してください。

CBDやCBDオイルは将来的に脳梗塞や脳腫瘍の治療することが可能になるかもしれません。しかしまだ圧倒的に研究は不足しています。そもそもCBDやECSに関してもまだ解明されていないことも多くあります。

そのため、CBDやCBDオイルのみに頼るのではなく、現在のスタンダードな治療法を最優先に考えるようにしてください。

脳梗塞や脳腫瘍は生命に関わる疾患です。必ず専門家の指示に従うようにしてください。

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