CBDやCBDオイルとは?キマらない(ハイにならない)?
CBDは大麻などから抽出されるカンナビノイドと呼ばれる天然成分の一種です。カンナビノイドは人の体内に存在するエンドカンナビノイドシステム(ECS)という身体機能を調節する仕組みに作用します。
人の身体には元々、内因性カンナビノイドであるAEAや2-AGが分泌されており、それらがCB1やCB2などのカンナビノイド受容体と結合することで疼痛、炎症、不安、ストレス、睡眠などの調節を行っています。
CB1は主に脳や中枢神経系に発現し、CB2は免疫細胞や末梢神経系などに発現します。
CBDは直接CB1やCB2に作用することはほとんどなく、AEAや2-AGを破壊する酵素の活動を抑制することで間接的にECSを活性化したり、体内の多くの神経伝達物質受容体を活性化したり反対に抑制したりします。
エンド・カンナビノイド・システム(ECS)とは?最新研究も紹介!
大麻などの摂取によって「キマる」「ハイになる」といった脳や精神への影響を聞いたことがあるかと思いますが、これは大麻などに含まれる主成分であるTHCというカンナビノイドの作用によるものです。
THCは脳のCB1に結合することで脳や神経を活性化させ、陶酔作用や向精神作用を引き起こします。日本では大麻取締法によりTHCを含有する植物や製品などの所持が制限されています。
CBDとTHCの体内での作用は全く違うため、CBDやCBDオイルを摂取しても「ハイ」になることはありません。
CBDやCBDオイルのガン細胞や腫瘍に対する研究成果とは?
がんには、乳がんや胃がん、肺がん、大腸がんなど、大きな臓器に発現するものもあれば、神経や血液のがん(白血病やリンパ腫など)もあります。
腫瘍とは身体に発生するいわゆる「できもの」の総称です。
私たちの身体はおよそ60兆個の細胞から作られています。常に古い細胞は代謝されて新しい細胞が産生されますが、健康な身体では身体の細胞数は一定に保たれるようになっています。
しかし、何らかの原因で細胞に異常が生じることで、必要以上に細胞が増殖した状態が腫瘍と呼ばれます。腫瘍には良性腫瘍と悪性腫瘍(悪性新生物)があり、後者が一般的に「がん」と呼ばれています。
それでは、良性腫瘍と悪性腫瘍の違いは何でしょうか。
例えば、皮膚にできる粉瘤腫や脂肪腫など美容面以外に問題はなく健康には全く被害を及ぼさないものや、月経過多などの症状はあっても生命は脅かされない子宮内膜ポリープや子宮筋腫などは「良性腫瘍」に分類されます。
腫瘍が良性である場合、腫瘍が発生した臓器組織そのものへのダメージはないことが多いです。またその場合、「腫瘍」と「本来の正常な組織」の境界線が明確なことがほとんどです。
そのため、臓器は残したままポリープや筋腫などだけを手術で摘出したり、薬物療法を行ったりすることで多くの場合は治癒や症状の改善が見込まれます。
また、良性腫瘍は栄養血管があることなどの一定の条件下では増大しますが無限には大きくならず、腫瘍が発生した臓器などから他の臓器や組織に転移することもありません。
一方、悪性腫瘍(がん)は正常な細胞を侵食し、臓器そのものにダメージを与えます。その結果、身体に慢性的な炎症や機能障害などを引き起こします。
そして、悪性腫瘍の場合はがん細胞と正常な組織細胞の境界線が不明瞭なことが多いため、手術でも腫瘍ができた部位だけでなく臓器などを一部または全部摘出する必要があります。
良性腫瘍の細胞とがん細胞のもう一つの違いは、がん細胞は細胞を成長させる栄養血管などがなくても増殖し、さらに血流やリンパの流れに乗って他の臓器に転移することです。
CBDのがん細胞研究
近年急激に人気が上昇しているCBDやCBDオイルは、非常に幅広い効果が注目されており様々な難治性の病気への効果を検証する研究が行われています。
がんはもちろんのこと、生命を脅かす可能性が低い良性腫瘍であってもCBDによって腫瘍のサイズが小さくなったり、症状が軽くなって手術の必要がなくなったりするのではないかと期待が出ることも自然なことでしょう。
これまでに行われた研究により、CBDは「がん細胞」そのものに作用することは数多く報告されています。以下に、過去の研究症例の一部を紹介します。
乳がん
2015年に公表されたアメリカでの研究において、CBDは乳がんの細胞の増殖、転移そして乳房組織の破壊を抑制したことが報告されました。
まず、様々な濃度のCBD入りの液体にがん細胞を入れてがん細胞の数を計測すると、CBDの濃度が高いほどにがん細胞の数が減少することが確認されました。
細胞数増殖の抑制はがんの大きさを小さくする上で重要な作用です。
次に、がん細胞には様々な種類がありますが、その中で非常に転移しやすい性質を持つがん細胞があります。
例えば、手術でがんを切除するために使用された器械に転移しやすいがん細胞が付着していた場合、その器械で全く別の正常な臓器の組織などに触れるだけで正常であった細胞が「がん化」するということがあります。
同研究では、CBDはがん細胞が他の臓器へ転移すること、さらにがん細胞が正常な細胞を「侵食」することを抑制する作用があることが確認されました。これは濃度の高くないCBDでも効果があったと報告されました。
そして、細胞レベルの実験だけではなく同研究では、実際にCBDによってマウスの乳がんの腫瘍が縮小され、さらには多くの乳がん患者に引き起こされる転移性肺癌の減少も見られました。
最後に、CBDがどのようにがん細胞の増殖や転移を抑制するかは全ては解明されていませんが、同研究ではCBDが腫瘍内の白血球の一種であるマクロファージの数を減少させるのに有効であったと報告されました。
マクロファージは組織の炎症によって分泌される炎症性物質(サイトカイン)で、腫瘍に栄養血管を新生したり、間接的にがん細胞の転移を刺激したりするとされています。
そのため、CBDの持つ抗炎症作用が結果的にがんを縮小させ、転移も阻止するのではないかと考えられています。
CBDやCBDオイルと乳がんに関する研究は行われている?CBDの副作用も解説!
大腸がんの肝臓転移
2015年にイギリスで発表された研究では、CBDによって抑制されるGPR55に注目して研究が行われました。GPR55はがん細胞の転移に関わっているとされる神経伝達物質の受容体です。
悪性度が高く転移しやすい性質の大腸がんの細胞を用い、GPR55の阻害剤とCBDの両者はどの程度がん細胞の転移を抑制するか調べ、両方において大腸から肝臓に転移したがん細胞の減少が確認されました。
胃がん
2019年の海外での研究では胃がんの細胞が用いられ、CBDは正常な細胞を攻撃することなく、特定のタンパク質を抑制することでがん細胞のみの死滅が引き起こされたことが報告されています。
また、同研究においてCBDによってマウスの胃がんのサイズが縮小したとも報告されました。
ここで紹介した乳がん、大腸がん、胃がんなどの研究症例はごく一部であり、これら以外にもCBDやCBDオイルの「がん細胞」に対する研究は多く行われています。
しかし、試験管内のがん細胞や小動物の身体の大きさではCBDやCBDオイルが有効あっても、人の身体の大きさで同じ結果が出るかどうかはわかりません。
また一人の患者にCBDやCBDオイルのがんを小さくする効果が認められても、全く同じ条件で他の大勢の患者にも効果があることや、CBDやCBDオイル以外ががんに作用した可能性がないかが検証される必要もあります。
CBDやCBDオイルが「人のがん治療」に有効である期待は大きいですが、まだ多くの課題がある状態です。
がんは早期発見・早期治療が鉄則です。特に若い人はがんの進行が早く、高齢になるほどゆっくりと進行すると言われています。これは若いほどに細胞の代謝が活発であるためです。
若いうちから毎年健康診断を受け、早期にがんを発見し治療を開始できるように注意していきましょう。気になる症状がある方は必ず病院に行き、医師の指示に従って検査や治療を受けるようにしてください。
CBDやCBDオイルの摂取とがん症状との関係性は?
がんは「不治の病」のイメージが強く、恐ろしい病気と認識されていると思いますが、具体的にどのような症状を思い浮かべるでしょうか。急激に痩せたり吐血したり、倒れたりするなどを想像されるかもしれません。
「がんの症状」はがんが発生する部位や進行度などによって様々です。また同じ病気であっても個人差があります。一つ共通して言えることは、ほとんどのがんでは初期段階は無症状であることが多いです。
例えば胃がんや大腸がんなどの消化器がんや子宮や卵巣、乳房などの女性生殖器のがん、肺がん、脳腫瘍などであっても「この症状が現れるとがんである可能性が高い」という「がん特有の症状」はほとんどありません。
初期は大半の人が無症状か、微熱が続く、息切れする、疲れやすい、なんとなく調子が悪いと感じる、など私たちが日常に感じる不調と差があまりない場合が多いです。
また、場合によっては進行しても尚、がんの症状が出ないこともあります。特に肝臓は「無痛の臓器」と言われており、末期になっても痛みなどの症状が出ないまま進行することも珍しくありません。
がんは症状よりも、治療の辛さの方が広く知られているかもしれません。
がん治療は、早期であれば腫瘍だけを切除することで完治することもありますが、進行すると副作用が非常に強い抗がん剤や放射線治療などで腫瘍の大きさを小さくした上での手術となることがあります。
また手術は臓器そのものの摘出となるため、身体機能に影響が出ることはもちろん、乳がんなどはボディイメージが変容することがあり手術後の生活に大きく影響します。
海外では、医療大麻やCBD、THCなどががんの症状や抗がん剤の副作用を抑制することを目的として使用が許可されている国もあります。
鎮痛作用がより強い医療大麻やTHCは日本では違法になってしまうため使用できませんが、CBDはどのようにがんの症状や副作用を改善できるのでしょうか。
炎症
体内でがん細胞が増殖したり転移したり、また抗がん剤の副作用で粘膜などが荒れたりすることで以下のような症状が引き起こされます。
がん性疼痛
ほとんどのがんでは初期には痛みを感じることはありません。腫瘍が大きくなるにつれて違和感が現れ始めやがて痛みとなります。がんによって引き起こされる様々な全身の痛みはがん性疼痛と呼ばれます。
痛みは腫瘍のある臓器に現れることもあれば、腫瘍や抗がん剤が神経に圧迫やダメージを与えることでがんが発生した部位から遠い手や足に痛みや痺れなどが生じることもあります。
2017年にカナダで、CBDやCBDオイルは炎症性疼痛や神経障害性疼痛の両方の痛みへの効果が報告されています。THCよりも効果がマイルドである可能性はありますが、摂取量を調節することで疼痛を緩和できると考えられます。
体重減少
体重減少はホルモン分泌の変化や疲労感の増強など心身にさまざまな影響を与えます。がん患者の体重減少には様々な要因が考えられます。
まず、がん細胞が全身に炎症を起こすことによって身体が常に発熱し、基礎代謝量が上昇します。
それに加えて、抗がん剤の副作用である吐き気や口内炎、精神的な要因などにより食欲は減少することが考えられます。
また、抗がん剤や放射線治療などはがん細胞だけではなく正常な細胞の再生も抑制するため、消化器の粘膜を荒れさせます。そのため、下痢や便秘など消化機能に影響が出ることも体重減少の一因であると言えるでしょう。
CBDやCBDオイルは、上記のような体重減少の様々な要因に効果があると考えられます。
まず、全身への抗炎症作用によって体温を下げてエネルギー代謝を抑制したり、消化器の炎症が改善されて消化機能を助けることができる可能性があります。そして、CBDは食欲の改善や吐き気の調節にも有効であることが、2001年にイスラエルの研究者らによって報告されています。
CBDやCBDオイルの体重への影響は?ダイエットに効果的?
精神症状・睡眠障害
がんの「不安」は非常に複雑です。
病気そのものが与える精神的ショックに加え、疲労感や痛みなどの身体的症状、脱毛や体重減少などの外見の変化、抗がん剤や放射線治療などの副作用に対する不安など数多くの原因が考えられます。
また、これらの不安から睡眠障害を抱える患者は数多くいます。そして睡眠障害は身体・精神ともに悪化させることもあるでしょう。
原因が多岐に渡るため、不安を軽減したり睡眠障害を改善したりすることに時間はかかるかもしれません。
CBDやCBDオイルは心身をリラックスさせたり睡眠障害を改善したりする一つの要因となることが期待できることが2019年にアメリカの研究者らの実験によって報告されています。医療従事者や家族、友人など周囲に頼ったりCBD以外にも多くのサポートを持つことが良いでしょう。
この項目で説明した「がんの症状」や「抗がん剤の副作用症状」などはあくまで一例であり、全ての方が同じように経験するわけではありません。
がん治療を行いながらCBDやCBDオイルの服用を開始する場合は、必ず医師の指示に従うようにしてください。
CBDやCBDオイルの摂取量と濃度、副作用について解説
CBDやCBDオイルを摂取した際の心身への効果の現れ方は個人差があり、一定の体重に対しどのくらいの量を摂取をすれば良いかという明確な基準はありません。
そのため、それぞれが適した摂取量を見つけることが大切です。
例えば、CBDが1,500mg配合されている濃度15%のCBDオイルの場合は、最初はスポイト半分〜一本分程度にし、CBDの実感度合いによって1週間ごとに調整していきましょう。
CBDやCBDオイルは摂取してすぐに効果を感じる人もいれば、数ヶ月以上摂取を続けて変化を感じることもあります。
そのため、一度や数日間の摂取で効果を感じないからと言って、すぐに摂取を取りやめることはせず、定期的にCBDの摂取量を見直して継続することが大事です。
また、CBDやCBDオイルは大量に摂取すれば体に良いというものではありませんが、摂取量が少なすぎても効果がありません。CBDは決して安価ではないため、製品の選び方にも注意した方が良いでしょう。
CBDやCBDオイルを選択する目安として、なるべく濃度が5%以上のものを選ぶようにしてください。
例えば、10mgのCBDをオイルで摂取するのに、濃度が5%の商品と15%の商品では1滴あたり摂取できるCBD量が単純計算で3倍違うことになります。濃度(CBD量)に対して購入価格が見合っているのか(コストパフォーマンス)を調べた上で購入するようにしましょう。
その他に注意する点としては、CBD製品と間違えやすい製品にヘンプオイルがあります。ヘンプオイルのパッケージはCBDオイルと非常に似ていますが、容器には「ヘンプの濃度」が記載されています。
購入の際には必ず「CBDの濃度」が表記されていることを確認してください。
そして、CBDやCBDオイルは市販の鎮痛剤や病院などで処方される薬などと比較すると副作用は少なく安全です。
これまでに報告されている副作用でも、下痢や口渇感、強い眠気、疲労感、食欲の変化など健康に重篤な影響を与えないご自身で対処が可能な症状が多いです。
ただし、治療などのためにCBDやCBDオイルを多量に摂取した患者では肝機能障害が現れたケースもあるため摂取量には注意が必要です。
特に、がんやがん治療により肝臓や全身の機能が低下しているかもしれない時はより一層慎重になる必要があるでしょう。
また、CBDは他の薬と相互作用があるため、飲み合わせには注意が必要です。CBDは肝臓に存在する薬の代謝に関わるシトクラム450(CYP450)という酵素を阻害し、薬剤の効果を増強する作用があります。
CBDやCBDオイルは薬の効果を妨げる?飲み合わせや相互作用は?
現在病院で処方されたり市販されていたりする薬剤のうち、およそ60〜80%がCYP450によって代謝されます。日本でがん治療に使用される多くの抗がん剤もこのCYP450が代謝に関わっています。
そのため、がん治療を行いながらCBDやCBDオイルを摂取する場合は必ず医師に相談をし、薬剤の量を調節するなどした上で摂取する必要があります。
自己判断でCBDやCBDオイルの摂取を開始することは絶対に避けるようにしてください。
CBDやCBDオイルと動物の癌との関係は?
犬や猫などの哺乳類にもECSは存在します。そのため、CBDやCBDオイルは犬や猫の体内でも人と同じように様々な効果をもたらします。
詳細は下記の記事「CBDやCBDオイルを猫や犬に与えるとどうなる?癌にも効果あり?」を参考にしてください。
CBDやCBDオイルを猫や犬に与えても大丈夫?癌との関係性も解説
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