- CBDとTHCの違いが気になる方
- 日本におけるCBDやTHCの規制が気になる方
- CBDの安全性やCBD製品の使用に不安を感じている方
そもそもCBDやTHCとは?
CBD [Cannabidiol; カンナビジオール] とTHC [Tetrahydrocannabinol; テトラヒドロカンナビノール] は、大麻草などに含まれる大麻成分 (カンナビノイド) です。
CBDとTHCは構造が非常によく似ており、化学式も同一です。ただし、両者は原子配置が異なり、違った構造をしています。この構造の違いが、摂取した際の生体への効果に大きな違いをもたらしています。
生体には、エンドカンナビノイドシステム (ECS) と呼ばれる、生体維持のメカニズムがあります。ECSは、代謝、気分、消化、睡眠、免疫、心臓機能、体温など、生存のために必要なさまざまな機能を調節しています。
CBDもTHCもECSに深く関わりますが、その作用の仕方は異なります。
詳しい作用機序は後述しますが、THCは劇的な精神活性作用 (「ハイ」になる作用) があることからマリファナの原料にもなっており、日本を含む多くの国で規制対象になっています。
ただし、身体への良い効果も確認されており、医療大麻として使用を認めている国や地域もあります。
一方で、CBDはTHCのような効果はもたらさず、日本でも規制対象にはなっていません。
また、こちらも詳しい効果や効能は次項で解説しますが、CBDは心身にさまざまな良い効果をもたらし、病気の症状を緩和するなどの働きも確認されています。
CBD製品として最もよく知られているのがオリーブオイルなどのキャリアオイルにCBDを溶かしたCBDオイルです。
また、CBDに対してはWHO (世界保健機構) によって、病気の諸症状への効果が実証・示唆されており、CBDに乱用の可能性や個人・公衆衛生上に問題が起こり得る危険性が確認されていないと認めています。
WHO (世界保健機構) によるCBDに関する詳しい見解は下記の記事で紹介していますので、CBDの安全性が気になった方は是非ご覧ください。
WHOはCBDやCBDオイルを認めている?安全性や選び方を解説ただし、あくまでも「悪影響が確認されていない」という見解であり、絶対に安全であると保障しているわけではないので、注意が必要です。
CBDをTHCに変換したりTHCをCBDに変えることは可能?
ちなみに、同じ大麻成分 (カンナビノイド) から成るCBDとTHCですが、CBDをTHCに変換したりTHCをCBDに変換することは一般的には容易ではありません。例えば、カンナビノイドを加熱する”脱炭素”や分子内の原子の配置を変化させる”異性化”などの化学反応を起こす必要があります。ただ、プロセスが複雑なことに加え、専門的な知識や装置が必要になります。先ほど説明した通り、日本ではTHCは規制対象となっており違法ですので、CBDとTHC間の変換は行うべきではありません。
ライター:竹内真一(アメリカ在住薬剤師)
CBDとTHCの効果・効能の違いは?
先ほどCBDとTHCについて簡単に説明しましたが、両者には具体的にどのような効果や効能があるのでしょうか。
先にお知らせしたように、CBDとTHCは生体内のエンドカンナビノイドシステム (ECS)に作用することで、効果を及ぼします。しかし、両者のECSへの関わり方には若干の違いがあります。
THCは強い精神活性作用をもたらす
ECSは通常、生体に存在する内因性カンナビノイドが、カンナビノイド受容体に結合することで引き起こされます。しかし、THCはカンナビノイド受容体であるCB1に自ら結合します。
CB1は脳神経に広く分布しており、そのためCB1に直接相互作用するTHCは強く精神に影響を与えます。
それによって、視覚や聴覚、味覚などが鮮明に感じられるようになったり、気分が高揚したり欲求が高まったりします。
この作用が、マリファナの「ハイ」になるという症状です。
THCはマリファナの主成分であるため、精神活性作用に注目が集まりやすいですが、実は生体に与える影響はそれだけではありません。
THCはCB1に起因する作用に加えて、末梢神経や免疫細胞、内臓組織などに分布するCB2という受容体とも相互作用し、鎮痛、沈静、催眠、食欲増進、抗がんなどの作用があると言われています。
そのため、カナダなど医療大麻として使用が認められている国もあります。ただし、これは医療目的としての扱いであり、嗜好品としてマリファナを吸うのとは意味が異なります。
また、現在の日本では医療大麻は認可されていませんのでご注意ください。
CBDは心身の健康の維持に関与する
では、CBDはどのようなメカニズムで、どういった効果をもたらすのでしょうか。実はCBDのカンナビノイド受容体に対する親和性は、THCほど強くはないと言われています。
CBDが生体に影響があるのは、内因性カンナビノイドを活性化することで、間接的にECSに作用するためです。
THCは精神に劇的な活性をもたらしますが、CBDを摂取することによって得られるのはリラックス効果です。
日々のちょっとしたストレスの解消にもCBDは効果的ですが、うつや不安、パニック障害などのより大きな精神面の問題にも、CBDは有効であるとされています。
さらに、CBDは身体の痛みやかゆみを抑えたり、ニキビなどの皮膚の炎症も緩和します。
そのほか、神経変性疾患や高血圧、動脈硬化、関節炎・リウマチ、アトピー性皮膚炎、がんなどのさまざまな病気の症状への効果も実証または示唆されています。
CBDにはそれら以外にも多くの症状への作用が示唆されています。詳しく知りたくなった方は、下記の記事も併せてご覧ください。
話題沸騰中!CBDやCBDオイルの効果・効能や副作用を徹底解説!このように、CBDもTHCもECSを介して心身さまざまな症状に効果があることは共通しています。しかし、やはり大きな違いは、強い精神活性作用があるかないかです。
この点が、CBDとTHCについて考えるうえでの大きなポイントになるでしょう。
ライター:佐野美和(薬剤師兼臨床研究コーディネーター)
CBDとTHCに副作用はある?
CBDやTHCを摂取した際に、副作用はあるのでしょうか。
実は、両者とも副作用が確認されています。しかし、その症状や程度には、大きな違いがあります。
以下に両者の副作用などの悪影響について解説し、比較します。
THCには依存性があり、心身によくない影響も与える
THCは摂取することで気分の高揚感をもたらしますが、その反動で良くない症状が出ることも知られています。
そのひとつが依存性です。
THCは脳内報酬系という経路に強く作用します。脳内報酬系とは、行為や経験による刺激に対して快楽を感じ、その刺激を反復して求めるようになる経路です。
脳内報酬系は食事、排せつ、生殖など、人間の生存・繁栄において必要なシステムですが、場合によってはその行為に依存してしまうなど、悪い影響を及ぼすこともあります。
THCにも依存性が確認されています。
依存の程度はカフェインと同等でそこまで大きくはないという説もありますが、それでもマリファナの常習者が突然摂取をやめた際に強い禁断症状が出ることも確認されており、軽視は決してできません。
また、THCを継続して摂取すると、精神や脳機能に影響を与えます。
大麻による精神・脳機能の影響について、大麻精神病という言葉が使われることがあります。
大麻精神病は正式な病名ではないものの、大麻が幻覚や妄想、気分の変化といった状態をもたらすことからそのような名称がつけられ、その症状は統合失調症に近いともいわれています。
現に、大麻使用者が統合失調症の遺伝的素因を持っていると、その発症の時期が早まるという説があります。
また、記憶障害、問題解決能力の低下といった脳機能の障害をもたらすこともあります。
2016年、大阪大学の研究では、大麻が脳神経の必要なネットワークを刈り取ってしまうことが発見され、大麻が脳機能に重篤な悪影響を及ぼすことが示されました。
さらに、心拍数の増加や運動機能の障害、吐き気・嘔吐など、身体にも影響を与えます。
CBDにも多少の副作用がある
一方で、CBDの副作用としては、高用量の摂取によりめまい、吐き気、下痢、食欲不振などが報告されています。
しかし、THCのように精神や脳機能に重篤な障害をもたらすわけではなく、心身への悪影響はわずかだと言われています。
もっとも、CBDの副作用の出方には個人差があり、また持病がある人は、その症状によっても違いが出る可能性があります。さらに、特定の種類の薬はCBDとの薬剤相互作用によって大きな影響が出る場合もあります。
CBDがどんな薬と薬物相互作用を引き起こしてしまうかについては下記の記事で紹介しています。
CBDやCBDオイルは薬の効果を妨げる?飲み合わせや相互作用は?THCより悪影響が少ないからと安心して良いわけではありませんが、正しい摂取の仕方をしていれば、CBDについてはそこまで悪影響を心配する必要はないでしょう。
ライター:竹内真一(アメリカ在住薬剤師)
CBDとTHCを一緒に摂取することのメリットは?
ここまでで、CBDやTHCの効果や悪影響があるかどうかについて説明してきました。
しかし、麻には100を超える種類のカンナビノイドやテルペン (カンナビノイド以外に麻に含まれる成分) が含まれています。
カンナビノイドを摂取する際には、単体として単離してきたものばかりではなく、複数の成分が混合しているものを使う場合もあります。
そのため、CBDとTHCの影響について考える場合は、それら単体だけではなく、一緒に摂取したケースも視野に入れておく必要があります。
カンナビノイドは複数摂取した方が効果は上がる
まず、カンナビノイドに挙げられる大きな特徴に、アントラージュ効果というものがあります。
これは、単体のカンナビノイドを摂取するより、他のカンナビノイドやテルペンを複数摂取することにより、相乗的な効果が得られるというものです。
例えば、CBD単体を徐々に量を増やしながら摂取していった場合、ある程度の量までは効果は上がっていきますが、ある量を境に効果効率は下がっていきます。
この現象は、その評価をグラフにした際に見える形状から、釣鐘効果と呼ばれています。
しかし、他のカンナビノイドやテルペンと組み合わせた場合、効果効率は停滞することなく、増え続けます。これがアントラージュ効果です。
このことから、CBDやTHCといったカンナビノイドは、単体で摂取するよりも他の麻の成分も複数摂取した方が、よりよい効果が得られやすい、ということになります。
高用量のCBDがTHCの中毒症状や精神症状を緩和する
CBDやTHCも同時摂取することで単体とは違った効果をもたらします。
特に、THCの脳神経に与える影響を変化させることが知られています。
2019年に発表された論文では、36人の被験者を対象にTHCとCBDを同時摂取した時の中毒症状の違いを評価しています。
その実験結果から、低用量のCBDはTHCの中毒症状を高めますが、高用量のCBDは減少させることが分かりました。
また、CBDはTHCによる精神症状や脳機能の低下を緩和することも示されています。
2012年には、CBDがTHCによって誘発されるパラノイド (被害妄想) や記憶障害を抑制することが明らかになりました。
これらの結果から、低用量のCBDはTHCの影響を高めますが、高用量のCBDはTHCの悪影響を打ち消すことが分かります。
CBDとTHCはそれぞれ日本で合法なの?
CBDとTHCについて解説してきましたが、実際のところ日本ではこれらの成分は認められているのでしょうか。
実は、日本では大麻取締法によって大麻は厳密に規制されており、所持しているだけで違法となってしまいます。特にマリファナの主成分であるTHCは全面的に禁止されています。
しかし、CBDについてはその限りではありません。
CBDは先ほども説明した通り、強い精神活性作用が確認されていないため、成分そのものとしては規制対象になっていません。
また、麻という植物はマリファナばかりに利用されてきたわけではありません。衣類、神具、食用など、さまざまなことに利用されてきた歴史があります。
そのため、麻全般を規制するわけにはいかず、大麻草でもTHCの含有量が限りなく少ないとされる成熟した茎や種子は、例外的に法律上の大麻の分類から外しています。
つまり、成熟した茎や種子から抽出し、混合物としてTHCが検出されないCBDは日本の法律的に問題がないことになります。
近年、日本でもCBDオイルなどのCBD製品が販売されるようになりましたが、それにはこのような背景があったのです。決して違法なものではありませんので、安心して使用できます。
【2024年12月施行】大麻取締法改正でCBD内のΔ9-THC残留量が規定されます
2024年12月12日に大麻取締法が改正され、日本で販売されているCBD製品内のΔ9-THC(大麻の精神活性成分)の規制が強化されます。従来は、主に大麻の栽培や使用を禁止することに焦点を当てていましたが、今回の改正では、たとえ微量であったとしてもCBD製品に含まれるTHCに対してより厳しく具体的な規制が行われます。
法改正後は海外からCBD製品を購入する際にもより一層の注意が必要です。海外で合法であっても、THCが含まれる製品は日本の税関で没収されたり、法的な問題に発展する可能性があります。
CBD製品の選び方のコツ
CBD製品を購入する際は購入前に製品ラベルをしっかりと確認し、日本で合法であり安全に使用できる製品かを見極めることが非常に重要です。
CBDの製造方法によるTHCの有無を確認しましょう
Δ9-THCが検出されるCBD製品は違法とみなされてしまうため、必ずTHCフリー(THCが一切含まれていない)と明記されている製品を選びましょう。また、CBD製品によっては、第三者機関による成分の分析調査が行われたことを証明する検査報告書や検査証明書の記載もあります。購入時に必ずご自身でラベルや製品紹介欄にしっかりと目を通してください。
CBDオイルなどのCBD製品には、日本で製造販売されておらず、既製品として海外から輸入されてきたCBD製品もあります。
大麻の認識は各国で異なり、規制のされ方も日本とは少し異なる場合があります。例えば、アメリカではTHCの含有率が0.3%以下のCBD製品は合法であり、その点で日本の法律とは合致しません。
もっとも、海外のCBD製品が日本に入ってくる際には、販売代理店がきちんと日本の法律に抵触しないCBD製品を厳選している場合が多く、税関でも検査が行われています。
しかし、そうはいっても、THCが含まれるCBD製品がまったく流通していないとは限りません。
現に2020年2月、厚生労働省ではあるブランドから販売されているCBD製品の一部が大麻に該当する可能性があるとして、対象となる商品の回収を呼びかけました。
このブランドは大手であり、日本でも広くCBD製品が販売していました。そのような商品であっても、手違いでTHC入りのものが流通してしまう危険があることは、消費者も常に認識しておかなくてはなりません。
そのため、ご自身でもその製品の安全性を確かめる必要があります。
ラベルの成分表や「THCフリー」の表記があるかを確認するのはもちろんですが、品質に対する検査結果が公表されているか、口コミの評判はどうかといった情報もウェブサイトなどでチェックするようにしてください。
また、先ほどの厚生労働省の事例のようなケースもありますので、購入後もチェックは継続するようにしましょう。
「安全です」という宣伝文句を鵜呑みにするのではなく、ご自身で責任をもって確かめることが、健康上も法律上も自分を守ることにつながります。決して怠らずに、自主的に調査するようにしましょう。
CBD製品の種類やおすすめの選び方・使い方
リラックス効果やストレス緩和が期待できるCBDですが、製品によってCBDの摂取方法や使い方が異なります。CBD製品にはどのような種類やタイプがあるのでしょうか。
CBD電子タバコ(VAPE)
CBD電子タバコはリキッドにCBD成分を含ませたものです。リキッドには様々なフレーバーがあるため、味を楽しみながら吸うことが出来ます。CBDリキッドの濃度も低いものから30%以上の高濃度のものまで様々ですので、使い方や選び方によっては効果を得られやすいでしょう。
CBD配合のサプリメントやタブレット
CBDサプリメントやタブレットは経口摂取によりCBDの効果を感じられるタイプになります。通常のサプリメントや医薬品と同様に、手軽に服用できるため、CBDを日常生活に取り入れることが容易です。
CBD配合のグミ・キャンディ
CBDグミやキャンディーはお菓子感覚で楽しみながらCBDを摂取したい方に人気のあるタイプです。もちろん、食べ過ぎによるCBDの摂りすぎには注意が必要ですが、気軽に始めやすいという利点があります。
CBDオイル
CBDオイルは舌下で摂取することができるCBDが配合されたオイルです。そのまま直接飲むこともできますが、コーヒーやスープなど食べ物や飲み物に加えることもできます。個人差はありますが、舌下から摂取するため素早く吸収され効果を感じやすいかもしれません。
ライター:佐野美和(薬剤師兼臨床研究コーディネーター)
関連文献
- Articles, Development/Plasticity/Repair Developmental Switch in Spike Timing-Dependent Plasticity and Cannabinoid-Dependent Reorganization of the Thalamocortical Projection in the Barrel Cortex
- A randomised controlled trial of vaporised Δ9-tetrahydrocannabinol and cannabidiol alone and in combination in frequent and infrequent cannabis users: acute intoxication effects
- Cannabidiol inhibits THC-elicited paranoid symptoms and hippocampal-dependent memory impairment
CBDとTHCの違いに関して皆様から頂いた質問
CBDとTHCの違いがよくわかりません。教えてください。(20代男性)
CBDとTHCはどちらも大麻草などに含まれる大麻成分ですが、抽出される部位や化学構造式、及ぼす作用などの点において異なります。特に作用について言えば、THCは強い精神活性作用によって「ハイ」になる症状をもたらします。それ故日本では、大麻取締法により所持することが違法です。その一方でCBDは、心身の健康の維持に関与します。WHOは2017年に「CBDは乱用や害を及ぼさない」という見解を示しました。また、医学的な治療効果や健康効果があるのではないかということで海外で様々な研究が行われています。
CBDが大麻成分であることを知り「ハイ」にならないのか心配です。(20代女性)
CBDは「ハイ」になることはありません。実際に、WHOがCBDには乱用の可能性や個人・公衆衛生上に問題が起こり得る危険性が確認されていない、と示しています。人を「ハイ」にするのはTHCと呼ばれる成分です。CBDとTHCはよく混同されがちですが、抽出される部位も化学構造式も性質も、全く違うということを覚えておきましょう。
CBDやTHCは違法ではないのですか?(30代男性)
CBDの使用については、現在日本で規制する法律はありませんので安心してご使用いただけます。一方でTHCと呼ばれる成分の所持は、日本では大麻取締法に違反するため注意しましょう。