CBDやCBDオイルって何?「ハイ」にはならない?
CBDは近年、サプリメントや嗜好品などで日本でも広く取り扱われるようになりました。CBDオイルはそのようなCBD製品の一種です。
日本でCBDが注目され始めたのは最近のことですが、実はアメリカやヨーロッパなどの諸外国では以前からCBDやCBDオイルは注目されていました。
それは、CBDには心身をリラックスさせたり、てんかんや多発性硬化症などのさまざまな病気の症状に効果があることが、数々の研究や使用者の体験談などで示されてきたためです。
アメリカでは2013年に、難治性小児てんかんにCBDが劇的な効果をもたらしたというテレビの報道が、爆発的に国民がCBDを認知するきっかけになりました。
そのようなCBDですが、正式名称はカンナビジオール (Cannabidiol) といい、その正体は麻から抽出されるカンナビノイドと呼ばれる成分の一種です (麻以外の植物にも含まれています) 。
このように説明すると「それって大丈夫なの?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
麻 (=大麻) はマリファナという麻薬の原料にもなる植物であり、日本では大麻取締法によって厳しく規制されています。
有名人が大麻を吸って逮捕されたというニュースを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
しかし、心配する必要はありません。
実は、すべてのカンナビノイドが日本で禁止されているわけではなく、問題となっている成分はTHCという物質です。
THCは正式名称をテトラヒドロカンナビノール (Tetrahydrocannabinol) といいますが、摂取すると精神を「ハイ」にする作用があり、マリファナの主成分にもなっています。
しかも、常用すると認知や情緒に悪影響が出たり、心拍数の増加など身体に負担がかかる危険もあります。
そのような観点から、THCは日本を含むさまざまな国で禁止されています。
一方で、CBDは規制されていません。そのため、CBDの抽出物やそれを配合した製品を所持・使用しても違法にはなりません。
また、CBDがもたらすのは、先ほども紹介した通りリラックス効果です。THCのような悪影響は及ぼさず、むしろ心身に良い効果が期待できます。
なぜCBDにそのような効果があるのかというと、生体システムであるエンドカンナビノイドシステム (ECS) に働きかけるためです。
ECSは生体内に存在する内因性カンナビノイドがカンナビノイド受容体 (CB1, CB2) に結合することで起こるシグナル伝達システムで、生体のあらゆる機能や恒常性の維持に関わっています。
カンナビノイドは、これら内因性カンナビノイドやカンナビノイド受容体にアプローチすることで、ECSの働きを促進することが知られています。
カンナビノイドの中でも、CBDはECSによく働きかけ、生体に多くのプラスの効果をもたらすと言われています。
CBDやCBDオイルでリラックスできる?不安解消やストレス緩和にも効果的?
心身の健康に良いとされ、近年では日本でも見かけるようになったCBDやCBDオイルですが、具体的にどのような効果をもたらしてくれるのでしょうか。
CBDは、生体のさまざまなところで働くECSを促進するため、実にさまざまな効果があります。
痛みやかゆみ・炎症の抑制、内臓機能の促進、血圧低下などの他に、てんかんなどの神経障害、糖尿病予防、がん治療などのさまざまな病気の症状にも効果が期待されています。
中でも、精神のリラックス効果は特に注目されている効果の一つです。
なぜCBDにそのようなリラックス効果があるのかというと、先ほど紹介したECSへのアプローチの仕方がその大きな理由となっています。
精神・心を司る脳神経には、CB1というカンナビノイド受容体が多く存在しています。
マリファナの主成分であるTHCは、CB1に直接結合し劇的な精神作用があります。
しかし、CBDはCB1には直接結合せず、内因性カンナビノイドを活性化することで、間接的に脳神経のECSに働きます。そのため、THCとは異なり、脳への作用は緩やかです。
CBDが働きかける内因性カンナビノイドとして、アナンダミドが知られています。CBDはアナダミドの分解を抑制し、その働きを促進することが証明されています。
また、CBDとの関わりが知られている別の物質として、セロトニンがあります。
セロトニンは神経伝達物質であり不安の解消や精神の向上に関わりますが、CBDはその受容体である5-HT1Aの働きを促進します。
このように、CBDは精神を穏やかにする脳内の物質の働きを向上させる作用があります。そのため、精神をリラックスさせてくれるのです。
CBDのリラックス効果は、日常生活や社会生活でのストレスや不安などを解消するのに大いに役立ちます。
しかし、単にCBDによる効果があるのは、日常の場面にとどまりません。以下のような症状にも効果が期待できます。
うつ病や不安障害の症状緩和
日常生活でストレスや不安は感じやすいものですが、それらをため込みすぎるとうつ病などの精神疾患や不安障害を発症してしまうことがあります。
CBDはそのようなより重篤な症状にも効果が期待されています。
2014年のブラジルでの研究で、CBDによるセロトニンの作用の促進は、抗うつ薬と同様の働きが期待できることが示されました。
セロトニンはうつなどの治療にも注目されている物質です。抗うつ薬の一種であるSSRI (選択的セロトニン再取り込み阻害剤) は、神経間のセロトニンの伝達効果を高めることでうつや不安の症状に働きます。
CBDとSSRIはセロトニンの働きを促進するという点で、同様の効果をもたらすということです。
またCBDは、不安にも大きな効果があります。
2011年には、不安障害の一種である社会不安障害の症状をもつ人にCBDを与え、模擬的なスピーチをするというテストを行いました。すると、CBD摂取によって不安が有意に解消されたという結果になりました。
また、社会不安障害以外にも、心的外傷後ストレス障害 (PTSD) 、パニック障害、強迫性障害など他の種類の不安障害にも効果があると言われています。
2019年の研究では、PTSDの患者11人を対象にCBDを投与したところ、10人の患者に有意な効果がみられました。
また、うつ病や不安障害の治療には、抗うつ薬用いられることがありますが、抗うつ薬はしばしば常習性や副作用が問題になります。
しかし、CBDにそのような悪影響はほとんど確認されていません。
先に紹介したPTSD患者の臨床試験でも、CBDによる悪影響で治療を中断した患者はいませんでした。
このように、CBDは抗うつ薬と同様の効果があり、また悪影響もほとんどないことから、うつ病や不安障害の治療に効果があると期待する人もいます。
CBDやCBDオイルは活力をもたらす?うつ病や不眠症に効果的?
安眠促進による不眠症や睡眠障害への効果
良い眠りに就くことは健康の必要条件ですが、ストレスや生活習慣などの影響で睡眠時間が短くなったり眠りが浅くなったりすることはよくあります。
しかし、CBDのリラックス効果やうつ・不安を解消する作用は、心身の緊張を和らげ安眠をもたらすことが知られています。
また、CBDは眠りを促すアデノシンという物質の経路を調節する作用があることも知られています。
このようなCBDの睡眠に対する働きは、不眠症などの睡眠障害にも効果があります。
実際に、不眠症の方が高用量のCBD (160 mg) を摂取したところ、睡眠時間が長くなったというデータがあります。
CBDの安眠効果で興味深いのは、夜間は眠りを促進するのに対し、日中は覚醒を促すという点です。
一見、矛盾しているように思えるかもしれませんが、これがECSを通じて生体機能そのものに働きかけるCBDのすごいところと言えるでしょう。
実際に、CBDによって働きが促進されるセロトニンは、日中は活力をもたらしますが、夜間はメラトニンという物質に変化し眠りを誘発すると言われています。
つまり、CBDはセロトニンの働きを促進すると同時に、夜間のメラトニンの働きにも関わっていると考えられます。
実際に、ラットを使った実験では、日中にCBDを摂取するとラットが元気になったのに対し、夜摂取するとラットは眠くなりました。
CBDは睡眠の質を上げて睡眠障害や不眠を緩和する?睡眠薬とは違う?
しかしながら、CBDの副作用として日中の強い眠気を訴える人もいます。
そのような場合は、CBDを摂取するタイミングや摂取量を変化させると効果的です。
タイミングとしては、日中の活力を求めたい時には起床後や昼に、夜眠りたい時には就寝前に摂取すると効果があるかもしれません。
また、CBDの摂取量についてですが、CBDは多量に摂取した方がリラックス効果が高まりによって眠気が増すことが知られています。
そのため、日中はCBDの量を少なめにし、夜間は多く摂取するとよりよい眠りのサイクルが得られるかもしれません。
CBDの効果の現れ方には個人差がありますので、使用者個々人が最適と実感できる摂取の仕方を選ぶようにしましょう。
心身共にリラックスさせたいあなたへ!CBDにはどんな摂取方法がある?
リラックスや安眠、睡眠改善のためにCBDを摂取したいという時には、一体どのような摂取方法を用いれば良いのでしょうか。
CBDが配合されている製品にはさまざまなものがあり、それぞれの製品で適した摂取方法も異なります。
以下に、代表的な摂取方法を紹介します。
経口摂取
CBD製品を口から直接飲み込んで摂取する方法です。
CBDは消化管から吸収され、肝臓で代謝を受けた後、血管を通じて全身を巡ります。
経口摂取をするCBD製品には、フード類やドリンク類が多く、外出先などでもおやつ感覚で気軽に摂取できるのもメリットの一つです。
一方で、肝臓で代謝される際に、ほとんどのCBDが分解されてしまうため、生体への吸収率が低くなってしまうのが難点です (吸収率は6%~20%程度) 。
経口摂取ができるCBD製品には、CBDカプセル、CBDグミ、CBDチョコレートなどがあります。
吸入摂取
CBDリキッドをVAPEなど電子タバコで気化して摂取する方法です。
CBDが肺から毛細血管に直接入るため、吸収率は34~56%と非常に高く、また摂取後すぐに効果が出始めることもメリットです。
また、VAPEは近年注目を集めており、そのためウェブサイトなどでもCBDリキッドを紹介しているページはかなり多く、どのような商品があるのか目につきやすいという利点もあります。
一方で、VAPEを使うには専用のキットを買わなければならず、初心者には高価になりやすいという傾向もあります。
また、効果の持続時間が30分~1時間程度で切れてしまうという特徴もあります。そのため、その場でリラックスしたい時などには役立ちますが、効果を持続させたい時にはあまりおすすめはできません。
経皮摂取
皮膚や毛穴からCBDを染み込ませて摂取する方法です。
CBDは付近の細胞や組織に浸潤し直接効果を与えます。
しみや湿疹、かゆみ、腫れによる痛みなど、局所的な場面で役立つ摂取法です。
毛根に入り込み、髪質を良くする作用もあります。
一方で、塗布した部位の毛細血管を除き、血流にはほとんど入り込まないため、全身に効果を与えることはできません。
経皮摂取が用いられるCBD製品には、CBDパッチ、CBDクリーム、CBDシャンプーなどがあります。
舌下摂取
CBDオイルによく使われる摂取方法です。
口から摂取するという意味では経口摂取と同じですが、異なる点は舌の下部のくぼみの部分に30~90秒ほどCBDを置いてから飲み込む点です。
CBDは口内の毛細血管を通じ、直接血液中に入り込むことができます。肝臓での代謝を受けない分、経口摂取に比べて吸収率は13~35%と優位な値を示します。
また、持続時間も4~8時間と吸入摂取と比べるとかなり長いという特徴もあります。
継続して使用したい時にはとても効果がある摂取方法といえます。
CBDの摂取方法にはさまざまなものがあり、それぞれにメリット・デメリットがあるので、自身の目的に合わせて使い分けると良いです。
ただし、精神の安定や安眠、持病の症状を緩和させたいなどで、継続的にCBDを摂取したい時には、全身に効果があり吸収率と持続時間のバランスが良い舌下投与を選ぶのが一番と言えるでしょう。
CBDやCBDオイルの摂取方法の選び方は?経口摂取がおすすめ?関連文献
CBDやCBDオイルのリラックス効果に関して皆様から頂いた質問
CBDやCBDオイルにはどのような作用がありますか?(30代男性)
CBDは実に多くの作用があるのではないかと考えられ海外では研究が行われています。痛みやかゆみ・炎症の抑制、内臓機能の促進、血圧低下などの他に、てんかんなどの神経障害、糖尿病予防などのさまざま疾患の症状にも作用すると期待されています。ただ、まだまだ研究段階でもありますので、今後の研究結果に期待しましょう。
CBDやCBDオイルにはリラックス作用がありますか?(20代女性)
CBDの作用の中でも、精神のリラックス作用は特に注目されています。THCの作用とは全く異なり、精神を「ハイ」にする働きは一切ないため日常生活や社会生活でのストレスを解消するのに役立つかもしれません。
CBDにはどのような摂取方法がありますか?(20代男性)
CBDの摂取方法には舌下摂取、経皮摂取、経口摂取、吸入摂取があります。作用の発現時間や持続時間、またご自身の身体の状態に合わせて摂取方法を選ぶと良いでしょう。CBDの摂取方法について知りたい方はこちら