CBDやCBDオイルは悪夢や奇妙な夢をもたらす?
CBDは麻などの植物に含まれるカンナビノイドと呼ばれる成分で、正式名称をカンナビジオールといいます。
カンナビノイドはCBD以外にも多くの種類があり、現在100を超えるカンナビノイドが確認されています。
その一種であるテトラヒドロカンナビノール (THC) は、精神活性作用があり、服用すると俗に言う「『ハイ』になる」という症状が出ます。
THCを原料に作るマリファナは人々の心身の健康に悪影響を与え得るとして、世界的にも問題視されています。そのため日本では、THCは大麻取締法によって規制されている成分です。
しかし、CBDにはそのような悪影響は確認されておらず、日本でも禁止されていません。
むしろ、CBDはリラックス効果をもたらし、さらに身体のさまざまな機能にも良い効果をもたらすと言われています。
そのようなCBDを気軽に摂取できるよう、さまざまなCBD製品が販売されています。
中でも、CBDオイルはオリーブオイルやMCTオイルなどのキャリアオイルにCBDを配合したものであり、CBDを効率よく摂取できるアイテムとして広く流通しています。
さて、そのようなCBDですが「摂取をすると悪夢や奇妙な夢を見るのでは?」という指摘もあります。
なぜそのような説が出るのかというと、おそらくTHCなどのカンナビノイドが精神・心に影響を与え得るという事実からでしょう。
大麻を使用すると、認知に影響があり混乱、幻覚、不安、妄想などの経験をすることがあるといわれています。
CBDは先述の通り、THCのような精神作用はなく、もちろん幻覚や妄想といった症状も出ません。とはいえ、リラックス効果などの精神への作用はあるので、夢に影響を与えてもおかしくはありません。
しかし、結論を申し上げると、CBDが悪夢や奇妙な夢をもたらすという証拠はありません。
CBDはレム睡眠 (浅い眠り) を減少させる
夢についてのメカニズムはまだ完全には明らかになっていませんが、睡眠中のどの段階で夢を見るのかなど、研究によって分かっていることはあります。
睡眠には大きく分けて2つの段階があります。レム睡眠とノンレム睡眠です。
レム睡眠は比較的浅い眠りであり、脳は起きている状態です。ノンレム睡眠は深い眠りです。睡眠時は、レム睡眠とノンレム睡眠のサイクルが繰り返されます。
夢はレム睡眠時にもノンレム睡眠時にも見ますが、鮮明に覚えている夢は起きる直前のレム睡眠の時に見ると言われています。
CBDはこのレム睡眠を減少させると言われています。
2012年の報告では、ラットにCBDを投与したところ生理学的レム睡眠を減少させた、と報告されました。
夢を鮮明に見るはずのレム睡眠が減少されるということは、悪夢を見る可能性は少ない (あるいは見ても覚えていない) ということになります。
「CBDが悪夢を見せる」という指摘とは矛盾する結果です。
ただし、CBDを常用している人が急に摂取をやめると、レム睡眠の割合が高くなりかえって夢を経験しやすくなるという指摘もあります。
CBDと夢の関係には未知の部分も多い
このように、レム睡眠・ノンレム睡眠という睡眠のメカニズムから考えれば、CBDによって悪夢を見る可能性は低いと言えます。
しかし、CBDと夢の関係は、まだ解明されていないことが多いのが現状です。
その理由の一つには「どのような夢を見たか」「悪夢かそうではないか」というような個人的な経験や感想は、科学的な見解に含めにくいというのがあります。
次項でも紹介しますが、CBDと睡眠の関係を調べる実験は過去にも数例行われています。しかし、その研究に夢の質や種類といった部分はあまり反映されていません。
また、先ほども解説しましたが、鮮明に覚えている夢は起床直前のレム睡眠時に見た夢と言われています。
その他の段階で見た夢はほとんど覚えていないため、それが悪夢であったとしても気づかないという可能性もあります。しかし、その人の深層心理や情緒には影響を与えるかもしれません。
以上のことから、現在はCBDが夢に影響する可能性は少ないと言えますが、実際のところどうなのかは未知の部分が多くはっきりとは言えないということになります。
CBDやCBDオイルは睡眠に良い影響を与える?
CBDは、夢との関係性には未知の部分が多いという結論になりましたが、対照的に睡眠自体には良い影響を与えることは知られています。
健康な方に対しても良い眠りを促しますが、不眠や睡眠障害の方の睡眠の質を向上させることも期待されています。
例えば、不眠症に悩む方に160mgという高用量のCBDを投与したところ、睡眠時間が長くなったと報告されています。
CBDは日中の活力にも効果があると言われており、睡眠への効果と比較すると一見矛盾しているように感じるかもしれません。
CBDやCBDオイルは活力をもたらす?うつ病や不眠症に効果的?
しかし、CBDの作用が生体を適切な状態に戻し維持することだと考えれば、納得のいく効果と言えます。
実際に、CBDによって作用が向上すると言われているセロトニンは、日中には覚醒や気分向上を促しますが、夜間はメラトニンという眠りに関わる物質に変換されると言われています。
CBDと睡眠の関係については、別記事に詳しく紹介していますので、そちらをご覧ください。
CBDは睡眠の質を上げて睡眠障害や不眠を緩和する?睡眠薬とは違う?
PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは?
夢を見る要因となり得る精神症状に、不安障害の一種であるPTSD (心的外傷後ストレス障害) があります。
PTSDはショック体験や精神的ストレスがこころのダメージとなり、そのことが何度も思い出されるなどして恐怖を感じ続ける病気です。
自然災害や事故、犯罪被害などが原因として挙げられ、海外では兵士が戦場から帰還した後に発症する例もあります。
PTSDは、不安や緊張・めまい・頭痛が起こったり、眠れなくなったりする症状が出ます。また、当時の体験や恐怖感、肉体的な感覚が日中にフラッシュバック (追体験) したり、睡眠中に悪夢として現れることもあります。
治療には認知行動療法などの心理療法に加え、抗うつ薬や抗不安薬などの薬物療法が組み合わされることもよくあります。
ただし、治療は長期にわたることが多く、投薬に用いられる薬は副作用が出ることもあるという問題点もあります。
CBDやCBDオイルはPTSDに対して作用する?
過去のトラウマからフラッシュバックや悪夢などに悩まされるPTSDですが、CBDはうつや不安などの精神症状にも効果があることが示されています。
CBDやCBDオイルは不安やストレス解消に効果がある?リスクはない?
CBDのPTSDへの効果についても検証は行われています。
2019年の研究報告によると、11人のPTSD患者に対してCBDを経口投与しながら、薬物療法と心理療法などの通例の精神科ケアを組み合わせて観察したところ、10人の患者にPTSDの症状の低下がみられました。
別の実験では幼児期の性的虐待・放置の経験からPTSDを発症している少女に対し、CBDオイルを投与したところ不安症状の減少と睡眠の向上がみられたと報告されています。
このように、CBDがPTSDに効果的であるという報告はいくつかあります。
また、先ほど紹介しましたが、PTSDの薬物治療に用いられる薬には、副作用の危険性もあります。
CBDにも副作用は多少確認されていますが、不安障害などの精神症状に対しての悪影響は極めて小さいことが示唆されています。
先ほど紹介した11人のPTSD患者を対象にした実験では、CBDによる悪影響で治療を中止した患者はいませんでした。
また、別の実験で、不安障害から不眠などの症状に悩む72人の患者に対してCBDを投与したところ、約70%の方に有意な効果がみられました。
一方で、CBDが原因と疑われる症状によって実験を中止したのは3名だけで、それ以外の方には大きな悪影響はみられませんでした。
以上のことから、CBDはPTSDの症状にも十分に効果が期待できると言えるでしょう。
また、CBDが夢に影響を与えるかという議論については、まだ分からない部分が多いのが現状です。CBDがPTSDに効果があると考えると、むしろ悪夢を抑える方に働くのではないかと考察もできます。
そのため、PTSDで悩まれている方で、現在の治療ではあまり改善がみられなかったり、薬の副作用に悩まされているという方は、CBDオイルの摂取を検討してみるのも有効かもしれません。
ただし、CBDオイルを購入・摂取する前に、必ずかかりつけの医師や薬剤師に相談するようにしてください。
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