CBDはブレインフォグ(脳の霧)を引き起こす?それとも緩和させる?

CBDはブレインフォグ(脳の霧)を引き起こす?それとも緩和させる?

ブレインフォグ(脳の霧)は新型コロナウイルス(COVID-19)の後遺症としてもテレビやネットニュースなどで取り上げられ名前を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。本記事では、CBDやCBDオイルがブレインフォグに作用するのかを解説します。

最近頭が働かなくなったと感じたらブレインフォグ(脳の霧)?その症状や原因は?

簡単なことが理解できない、調べ物のためにスマホを開いたら何を調べるかを忘れた、ケアレスミスが多い、人と会話したり本を読んだりするのがしんどい、というような経験がある人は少なくないのではないでしょうか。

ブレインフォグとは、覚醒と睡眠のための脳内のホルモンや神経伝達物質などのバランスが崩れ、日中に身体は起きているにも関わらず「半分寝ている」かのように頭がぼんやりとしている精神症状です。

現段階では正式に医学的な定義が定められている訳ではありませんが、一例として以下のような状態が挙げられます。

  • 新しいことを覚えられない、覚えたことをすぐに忘れる
  • 思い出すことができない
  • 考えがまとまらない
  • すぐに気が散る
  • 言葉の理解や文章の組み立てが難しい
  • 視覚や空間の認識ができない(物の形や場所などの全体像が把握できないなど)
  • 計算を間違える、できない
  • 複雑な情報処理能力が低下する(情報収集、整理、分析、計画など)など

このように「頭を使うこと」全般が困難になるブレインフォグですが、原因となる疾患がない場合や加齢などによる脳の老化といった要因が無くても引き起こされることは決して珍しいことではありません。

最も分かりやすい例としては睡眠不足の状態で起床後しばらくは頭が「まだ眠っている」状態で、急に複雑な思考を必要するようなタスクを求められても遂行することが難しいと感じるでしょう。

また、ほとんどの人が空腹時の低血糖や脱水症状になった時などに頭が働かなかったり集中力の維持が難しくなったりすることも経験したことがあるのではないでしょうか。

そして、空腹時とは反対に満腹になっても頭は働く訳ではありません。食事摂取量が多ければ消化のために消化器官に血流が集中するため、一時的に脳への血流が少なくなって眠気などが引き起こされます。

さらには、脳の栄養素としてグルコース(糖分)が必要であることは広く認知されていますが、糖分だけを多く摂取しても頭がすっきりと冴え渡る訳ではありません。

砂糖や炭水化物ばかりの食事では、急激に血糖値は上昇して短時間は覚醒する感覚がありますが、血糖値を下げるインスリンも同時に大量に分泌されるため、血糖値はすぐに下がり再びブレインフォグが起こる可能性があります。

菓子パンとジュースなどで食事を済ませてしまうと、脳でグルコースが消費されずにブレインフォグが引き起こされるだけでなく、インスリンにより糖分はエネルギーとして脂肪に取り込まれてしまいます。

また、鉄分が不足すると酸素を全身に運ぶヘモグロビンが血液中で作られなくなるため、酸素を脳へ供給することができずに脳の活動に大きく影響します。

ダイエットや生理などで鉄欠乏性貧血になりやすい女性は注意が必要です。

そして、現代は不健康な食事以外にも強いストレスや不安、過労、睡眠不足、デジタル中毒(スマートフォンやパソコンなど)、飲酒、喫煙、運動不足、肥満などブレインフォグが引き起こされる要因は日常に数多くあります。

ホルモンバランスの変化もブレインフォグの要因の一つです。

特に女性はPMS(月経前症候群)や更年期障害、妊娠などでホルモンバランスが劇的に変化します。これらの時期に集中力が低下したり、物忘れが激しくなったり、ミスが増えたりすることは珍しくありません。

また、女性ホルモンの変化と同様に、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される甲状腺機能亢進症などでもブレインフォグは起こりうるとされています。

ブレインフォグが起こるとされている他の疾患には、多発性硬化症や線維筋痛症、慢性疲労症候群、アルツハイマー病、起立性調節障害(自律神経失調症)、睡眠時無呼吸症候群、うつ病などがあります。

また、疾患だけでなく作用の強い治療薬の副作用としてもブレインフォグが起こることがあります。抗不安薬や睡眠薬、抗がん剤(ケモ・ブレイン)、ステロイド剤などは精神に大きな影響を与えることが報告されています。

ブレインフォグそのものは病気ではないため、特定の治療薬はありません。ブレインフォグを引き起こす疾患が分かっている場合は疾患の治療とともに改善することもあります。

原因となる基礎疾患がない場合は、考えられる生活習慣の見直しや、忘れたり間違えたりすることを予防するような環境作りが基本となります。

生活習慣の改善では、栄養バランスのとれた食事をする、適切な睡眠時間を確保する、適度に運動をする習慣を持つ、適宜休息をとる、ストレスをためない、飲酒や喫煙を控えるといった健康的な生活を心がけることが大切です。

また、物忘れが多かったり予想もしなかったようなミスをすると落ち込んだり自己嫌悪に陥ったりするかもしれませんが、ブレインフォグが現れることをまずは自覚し、症状に合わせて環境を整えることも効果的です。

なるべく集中できる静かな環境で作業をしたり、整理整頓をして物の定位置を決め、予定などはスマートフォンのリマインダーを活用したりしましょう。

CBDやCBDオイルにはどんな効果がある?脳に与える影響は?

CBD(カンナビジオール)はカンナビス ・サティバ ・エル(産業用大麻)やカンナビス ・インディカ(マリファナ)などの植物から抽出されるカンナビノイドと呼ばれる成分の一種です。

カンナビノイドは現段階で100種類以上存在すると言われており、大麻には精神を「ハイ」にすることで知られているTHC(テトラヒドロカンナビノール)も含まれています。

CBDとTHCの体内での作用は全く違うものであるため、CBDやCBDオイルのみを摂取することで向精神作用や陶酔作用などが引き起こされることはありません。

CBDの作用についてより理解を深めるために、疼痛や炎症、ストレス、不安、睡眠、食欲、吐き気など身体機能の調節を行うエンド・カンナビノイド・システム(ECS)について見てみましょう。

ECSはもともと体内で分泌されているアナンダミド(AEA)や2-AGなどの内因性カンナビノイドが、CB1やCB2などのカンナビノイド受容体を活性化することで機能しています。

CB1は主に中枢神経系(脳・脊髄)に発現し、CB2は末梢神経や免疫細胞などに発現します。

CBDは直接CB1やCB2へ作用することはほとんどありませんが、AEAや2-AGを破壊する酵素(FAAH)を阻害することで分泌量を増加させる役割があります。

一方のTHCは脳や神経のCB1を直接活性化する作用が確認されており、大量に摂取すると激しく興奮したり陶酔したりします。

また、CBDは全身の様々な神経伝達物質受容体に作用することが分かっています。

CBDやCBDオイルはブレインフォグ(脳の霧)を引き起こす?それとも緩和させる?

CBDの頭痛や耳鳴りへの作用
現段階では、直接的にCBDやCBDオイルがブレインフォグに作用するかどうかを検証する研究は行われていません。

ブレインフォグと関連性が高そうな少人数の成人グループを対象に行われた研究では、CBDとTHCの両方を用いて比較が行われています。

その結果、THCだけを摂取したグループや多量のCBDと多量THCの混合薬を摂取したグループより、少量のCBDと少量THCの混合薬摂取したグループの方が、起床後のタスクの成績が良かったことが報告されています。

この結果より「少量の」CBDやCBDオイルは覚醒や集中を促してブレインフォグを緩和させる可能性はあるのではないかと考えられます。

しかし、CBDやCBDオイルは摂取量が多すぎると副作用として強い眠気や疲労感が生じることが知られています。過度にCBDやCBDオイルを摂取するとブレインフォグが引き起こされる可能性はあると言えるでしょう。

また上記の研究より、THCだけを摂取したグループおよび高濃度THCと高濃度CBDを摂取したグループは翌日の記憶力の低下や強い眠気、気分のムラなどがあったということです。

THCは日本では違法となる物質のため基本的には摂取できる機会はないと考えられますが、ブレインフォグや不安などを悪化させる恐れがあることは知っておいた方が良いでしょう。

それでは、具体的にCBDは脳内でどのように作用してブレインフォグを緩和させたり悪化させるのかみていきましょう。

神経伝達物質の分泌バランスを整える

ブレインフォグの根本的な原因として興奮性のドーパミンやノルアドレナリン、抑制性のGABAなどの神経伝達物質、ストレスによって増加するコルチゾールなどのホルモンのバランスが崩れている状態があります。

脳内は様々な神経伝達物質やホルモンが絶妙なバランスを保つことで覚醒と睡眠のサイクルを作っていますが、その両方に関わっている「脳内物質のバランサー」であるセロトニンに注目してみましょう。

緊張したり興奮したりする時に時に分泌されるドーパミン(喜び)やノルアドレナリン(恐怖)などの神経伝達物質は、心身をリラックスさせる作用のあるセロトニンの分泌量の増減によって調節が行われます。

心身が興奮したり緊張したりする際に分泌されるドーパミンやノルアドレナリンが高濃度の状態が続くとは心身が疲弊して様々な精神疾患の原因になります。

そのため、脳は自動的にセロトニンの分泌量を増やすことでシーソーのように興奮と鎮静のバランスをとります。

何らかの理由でセロトニン不足になってしまうと、不安や緊張が常に強い状態が続きブレインフォグを引き起こすうつ病やパニック障害などに繋がる恐れがあります。

CBDは脳内物質に対してどのように作用するのでしょうか。

まず、脳内のセロトニン受容体(5-HT1A)を活性化し、セロトニンの分泌量を増加させる作用があります。それに加えて、抑制系の神経伝達物質と呼ばれるGABA受容体にもCBDが作用することが分かっています。

他には、CBDはストレスによって増加するコルチゾールの分泌を減少させる作用が報告されています。

睡眠障害を改善する

良質な睡眠はブレインフォグの改善に欠かせません。CBDが睡眠に影響を与える作用は複数ありますが、その中でもやはりセロトニンは大きな役割を担っています。

睡眠中はノンレム睡眠(深い眠り)とレム睡眠(浅い眠り)の周期を交互に繰り返しながら、朝に近づくに連れて徐々に眠りが浅くなってやがて覚醒します。

2012年の研究によると睡眠と覚醒のリズムを司る部位(前脳基底部・視索前野)においてセロトニンが不足すると、24時間の睡眠・覚醒のリズムが崩れ活動量と睡眠量の両方が大幅に低下することが報告されています。

また、暗くなると体内で自然に生成されて眠気を引き起こすホルモンであるメラトニンはセロトニンをもとに作られるため、セロトニンの量が不足してしまうとメラトニンが作られずに入眠障害となる可能性があります。

他にも「エネルギーの燃えかす」であり夜間には「睡眠のためのエネルギー」として使われるアデノシンは、CBDとAEAの両者の作用によって脳内でより効率よく利用されることが分かっています。

CBDやAEAなどによってアデノシンが長時間脳内に存在することにより、ノンレム睡眠の周期を長く持続したりレム睡眠の周期で生じる悪夢や体動などを軽減することができることが示唆されています。

このように、CBDやCBDオイルは睡眠・覚醒のリズムを作るセロトニン、入眠に関わるメラトニン、そして睡眠を深くするアデノシンと言った睡眠に関わる多くの神経伝達物質やホルモンに影響を与えます。

しかし、先述したように多量にCBDやCBDオイルを摂取するとこれらの作用も増強される可能性が高く、副作用として日中にも強い眠気が残ってしまいブレインフォグが改善されず逆効果となる恐れもあります。

そのため、効果を感じられる量で副作用が起きない自身が必要とするCBD摂取量をしっかりと把握しておく必要があるでしょう

不安やストレスの緩和

不安やストレスは直接的にブレインフォグの原因となるだけでなく、ブレインフォグを引き起こす睡眠障害も悪化させる可能性があります。

上で解説した、CBDによって分泌が活性化するセロトニンやGABAにはストレスを緩和して心身をリラックスさせる作用があります。

CBDは不安や恐怖、ストレスを感じたりそれらを記憶に定着させたりする脳の領域にあるCB1を間接的に活性化します。

それによって不安や恐怖などの負の感情を軽減したり、ストレスに対して心拍数や血圧が上昇したりする身体的負担を減少させます。
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疼痛の緩和

疼痛は集中力などに影響を与えるなどブレインフォグの直接的な原因となることもありますが、ブレインフォグを引き起こす可能性の高い不安やストレス、睡眠障害を悪化させたりすることなどにも繋がります。

CBDやCBDオイルが疼痛を緩和するメカニズムは複数あります。

中枢神経のCB1を間接的に活性化することで疼痛の神経伝達を抑制したり、免疫細胞のCB2を間接的に活性化することで炎症によって引き起こされる疼痛を抑制したりします。
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CBDやCBDオイルを摂取する際の注意点は?

CBDやCBDオイルは一日1,500mgなどの相当な量を摂取しても、処方薬などと比較すると健康を害するほどの重篤な副作用の出現は少ないとされています。

CBD1,500mgは、15%で10mlのCBDオイルだと丸々一本分摂取することになります。こにのような高用量を摂取することは考えられないため心配しすぎる必要はないと言えそうです。

また、世界保健機構(WHO)もCBDは心身への危険性は少ない物質としています。

しかしながら、効果の感じ方には個人差があり、個人の摂取許容量を超えると軽度の副作用が現れる場合があります。現段階で報告されている症例では先ほど解説した強い眠気や疲労感の他に、下痢や口渇感、食欲・体重の増加、吐き気などがあります。

CBDやCBDオイルを初めて摂取する場合は副作用の出現がないことを確認しながら自身にとって最適な量や摂取の時間帯を見つけると良いでしょう。

次に、現在日本ではCBD製品の販売に関する規定が曖昧であるため、CBDやCBDオイルを購入する際には以下のような項目に注意が必要です。

CBDの原料となる大麻は、土壌の成分を植物体内に蓄積する性質があります。そのため、汚染された環境で成長した大麻から抽出されたCBDの原料やそれを使用したCBD製品も汚染されている可能性があります。

また、日本ではごく微量であってもTHCの混入があると大麻取締法において違法となります。

したがって、THCや有害物質などの成分が抽出されていないことが「第三者機関」によって検査されていることを購入前に必ず確認するようにしてください。

製品のラベルの表記やホームページなどに付属されている書類などを隅々まで確認し、できればCBDの原産地や大麻の栽培方法、CBDの抽出方法、CBD製品に含まれる原料なども全て確認しましょう。

これらの情報がどこにも書かれていない場合は避けた方が無難です。

そして、購入の際にはラクマやメルカリなどのフリマサイト、アマゾンや楽天などの通信販売サイトで購入するのではなく、メーカー公式のオンラインショップでの購入をおすすめします。

最後に、CBDは薬剤との相互作用があります。

シトクラム450(CYP450)という薬剤の代謝・排泄に関わる酵素がCBDによって阻害されるため、CBDと薬を同時に摂取すると薬の効果が増強される可能性があります。

すでに内服薬がある場合や持病などがある場合などは担当の医師にCBDやCBDオイルの服用について相談をしてから服用を開始するようにしてください。

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