自閉症とは一体何?子供に多い?その特性を紹介します!
映画「レインマン」やドラマ「光とともに」「グッド・ドクター」など「自閉症」を題材にした作品は数多くあり、一度は言葉を耳にしたことがあると思います。
作品の中では、他人には理解し難いような細かいこだわりがあったり、場所や時間を忘れて好きなことに対してひたすら熱中したり、また時折ずば抜けた才能を発揮したりするようなキャラクターが描かれることが多いです。
普段から自閉症の方と関わる機会がなければイメージが湧きにくく、誤解されたりしている部分も多いのではないかと思います。現在の「自閉症」はどのように定義されているのでしょうか。
自閉症スペクトラム障害(ASD)とは?
自閉症の定義は、分類が多様化するにつれてこれまで何度もアップデートされています。
現在使用されている自閉症の診断マニュアルは2013年に改定され、以前は別々に分けられていた以下のようなさまざまなタイプを全て含めて「自閉症スペクトラム障害(ASD)」と呼ばれています。
自閉性障害・高機能古典的自閉症
1940年代に提言された、いわゆる多くの方が想像する典型的な「自閉症」です。
知的障害を伴うことが多いですが、近年では発達早期からの支援が発展したり、人々の理解が昔より深まったりしたこともあり「個性」として捉えられるまでに生活力やコミュニケーション能力が発達する場合もあります。
また、言葉に遅れはあっても知的障害を伴わない場合は「高機能古典的自閉症」と呼ばれます。
個人差の大きい自閉性障害ですが、全ての自閉性障害の患者に共通する特徴には、言語の遅れおよび様々な理由(無関心、社会性の欠如など)によるコミュニケーション障害、興味の対象が極端に狭いことが挙げられます。
自閉性障害に頻繁に見られる行動には、繰り返し行動(手を顔の前でひらひらさせる、自傷行為など)、予定外の状況でのパニック(緊急ニュースなど)、一定の対象への執着(決まった順序で整列させるなど)などがあります。
アスペルガー症候群
ASDの中で、アスペルガー症候群は言語や知能のレベルは健常者と同等、もしくは高い傾向にあります。
知的な問題が少ないため、人によっては学生時代などは障害が分からないこともありますが、自閉性障害と同様に他者と適切なコミュニケーションが取れなかったり、興味の対象が極端に狭いという共通点があります。
知能の問題はほとんどありませんが、アスペルガー症候群の患者は「推し量る」「思慮深く考える」ことが苦手であったり「中間」という概念を持たないことなどがあります。
言い換えると、想像することが苦手で両極端な性格です。
それゆえに、言われたことを真に受ける(相手の意図が読みれない、例え話が理解できないなど)、他者の気持ちを理解できない、空気が読めない、自分がしたいこと以外を一切放置する、など社会生活で様々な障害が生じます。
日本では「アスペ」という呼び名で一般に広く定着しています。
認知されることは良いことである反面、侮辱で「アスペ」という呼び名が使用されたり、内弁慶や他者と話すことが苦手な性格というだけで自身もアスペルガー症候群に当てはまるのではないか、などの不安を抱える方もいます。
特定不能の広汎性発達障害
上述した自閉性障害やアスペルガー症候群はともにコミュニケーションに関する障害と興味の対象が極端に狭いことがあります。
このどちらにも属さず、しかし社会生活において必要な対人コミュニケーションが困難であったり、知能レベルは問題ないけれど想像力が欠如していたりする場合などにこのグループに属することがあります。
ASDの二次障害は?
ASDの患者は以下のような症状を併発していることが多いです。
睡眠障害
不眠症、過眠症など
精神障害
うつ病、不安、強迫神経症、摂食障害、攻撃性、多動、注意欠陥障害、学習障害、チックなど
神経障害
てんかん、感覚過敏、頭痛など
ASDの原因や治療法とは?
ASDは遺伝子の変異による脳の先天的な障害であり、育児法や家庭環境、生活環境、もしくは虐待やネグレクトなどによって引き起こされることはありません。
ごく近年まで、母親の育て方や躾などが原因で「喋らない子になる」「成長が遅い」などの誤解が広まっていたこともありますが、最新のASD診断マニュアルにおいて完全に否定されています。
現段階では、生まれてくる子供がASDになるリスクとして90%は遺伝であるとされています。
他にも、いくつかの特定の薬剤が母体に影響を与えたと報告もされていますが、発症のメカニズムはほとんど解明されていません。現在進行形でASDに対する様々な仮説の検証が行われています。
ASDは知的障害や注意欠陥・多動障害(ADHD)、学習障害(LD)などと同じ神経発達症群(発達障害)の一つです。
現在のASDの治療の目的は「根治」ではなく、それぞれの特性に合わせて成長をサポートし、ASDを抱えながらも、薬で様々な症状を抑制しながら自立した社会生活を送ることができるようにすることです。
ASDは子どもに多い?
ASDの中で特に自閉性障害は多くが2〜3歳ごろまでに診断されます。小児期特有の障害ということではないため、当然成人でもASDの方は多くいます。
1998年から2018年の20年に渡って行われた研究では、ASDの寿命が短いことが示唆されました。
406人のASD患者のうち、6.4%が39歳前後で亡くなったことが報告されています。
ASDの平均寿命を縮める要因として、脳神経疾患や循環器疾患を併発しているなどの病気によるもの、不慮の事故、そして自殺が多いことが挙げられています。
CBDやCBDオイルは自閉症に作用する?自閉症からくるその他の症状にも効果あり?
様々な効果・効能をもつCBDやCBDオイルですが、ASDに対してはどのような研究が行われているのでしょうか。
CBDやCBDオイルとは?
CBDは大麻草などから抽出されるカンナビノイドと呼ばれる成分の一種です。
私たちの身体にはエンド・カンナビノイド・システム(ECS)という身体のさまざまな機能を調節する仕組みがあります。CBDはECSを間接的に活性化する作用があります。
ECSはもともと体内で分泌されているアナンダミド(AEA)や2-AGという内因性カンナビノイドがCB1やCB2などのカンナビノイド受容体を活性化することで機能しています。
CB1は主に脳や中枢神経系に発現し、CB2は免疫細胞や末梢神経などに発現します。
CBDはAEAや2-AGを破壊する酵素(FAAH)を抑制することで内因性カンナビノイドの分泌量を増やしたり、CB1をブロックして脳や中枢神経の興奮を抑制したりする作用があります。
また、抗酸化作用によって脳神経を保護する作用があります。
ASDとECSの関連とは?
脳や中枢神経には多くのCB1が発現します。現段階では胎児〜小児期の脳や神経の発達異常により発症すると考えられているASDは、ECSが関わっていると推測されても不思議ではありません。
ASD発症の原因として挙げられている仮説は数多くありますが、その中でECSが関わっているものを紹介します。
エンドカンナビノイド仮説
この仮説は、ASDとして生まれてくる子どもは生まれた時点でECSの機能に異常があるとするものです。
自閉性障害を有するマウスを使用した研究では、胎児の中枢神経系に発現するCB1に異常が見られたことや、内因性カンナビノイドであるAEAが正常に機能しなかったことが報告されています。
CBDは間接的にECSを活性化させることで知られています。
今後さらなる研究が必要ではありますが、今後CBDやCBDオイルによる治療がASDを改善させることができ「治せる障害」になるようなことがあるかもしれません。
ミクログリア仮説
ミクログリアは神経を構成する細胞の一種です。
胎児や乳幼児の脳や神経の発達において非常に重要な細胞ですが、2016年に発表された研究によると、自閉症児においてミクログリアが神経以外の部位で異常に増殖していることが報告されました。
ミクログリアは神経系の中で「免疫細胞」として機能します。病気などによって神経が損傷されるようなことが起こると、ミクログリアが増殖して活性化します。
ミクログリアには損傷された神経細胞を除去する自食作用があったり、炎症性物質を放出して神経を攻撃するウイルスなどから神経を守ったりする働きがあります。
しかしミクログリア細胞の活性化が過剰になると、自身が放出する炎症性物質によって神経損傷を加速してしまうことがあります。
ミクログリアにはカンナビノイド受容体であるCB2が発現し、CB2を活性化させることによってミクログリアによる炎症を抑制する効果があることが報告されています。
このような作用からも、CBDやCBDオイルは何かしらASDの治療において役立つ効果があるのではないかと期待されています。
ASDの二次障害に対して有効?
ASDそのものを治療するということは現在の医療では難しくても、ASDの患者に頻繁に起こる様々な症状を改善することは社会生活を送る上で非常に重要です。
CBDやCBDオイルはASDの二次障害として頻発する睡眠障害、不安やうつなどの精神症状、てんかんなどの改善において有効です。
2019年の研究では、188人のASDの患者を対象に高濃度のCBDと低濃度のTHCの混合オイルを投与したところ、90%以上の患者において何かしらの症状の改善が見られたことが報告されました。
また、この研究で1つ以上の副作用があったのは25%でした。
CBDやCBDオイルは子供が使用しても平気?副作用はあるの?
海外ではCBDやCBDオイルを子どもが摂取している例があります。次の項目で詳しく解説するてんかんの治療において、多くの18歳以下の子どもがCBDを摂取しています。
現段階では薬剤が承認されて数年ということもあり、子どもがCBDやCBDオイルを摂取することの安全性を支持するデータがまだ十分ではありません。
CBDはそもそも副作用が起こりにくい成分であり、処方薬や市販薬などと比較すると安全性は高いとされています。
副作用として頻度の高いものは下痢や口渇感、強い眠気、疲労感、食欲や体重の増加などがありますが、他の薬剤に比べるとマイルドな症状がほとんどです。
そのため、子どもであっても医師や薬剤師に相談をした上で指示された摂取量を守る限りは、あまり副作用の発現を心配しなくても大丈夫ででしょう。
しかし、安全性の高いCBDやCBDオイルであっても、摂取量が増えると副作用が現れる可能性も高くなるため、保護者は十分に摂取量に注意する必要があります。
てんかん治療のためにCBDを多量に摂取した子どもの重篤な副作用では、肝臓の機能が低下したことが報告されています。子どもに与える場合はかならず少量ずつ与えて副作用が起きていないことを確認するようにしましょう。
さらに、CBDやCBDオイルは他の薬と同時に服用すると薬と相互作用を起こし、薬の効果を強めてしまう作用があります。
子どもが何かしら他の薬を服用している場合は、CBDやCBDオイルの服用を開始する前に必ず医師に確認してください。
また、CBDやCBDオイルの中には向精神作用や陶酔作用などを引き起こすTHCが含まれているものもあります。
THCは日本では大麻取締法において違法となるだけでなく、ごく微量であっても子どもの心身には望ましくありません。
子どもは大人以上に影響を受けやすいため、購入の前にTHCフリーの製品であることを必ず確認するようにしましょう。
CBDやCBDオイルを子どもが摂取しても安全?製品の選び方は?医療用のCBDって何?てんかん治療に使用できるの?
CBDを主成分とする医薬品であるエピディオレックス(Epidiolex)は2018年にアメリカ食品医薬品局(FDA)に正式に承認されました。
現在FDAによって正式に「医療用CBD」として認められているのはEpidiolexのみです。これまでにFDAに認可された大麻草由来の薬剤は全部で3種類ですが、他の2種類にはTHCが含有されています。
なお、他にもCBDが含まれている医薬品としては多発性硬化症治療薬のサティベックス(Sativex)がありますが、SativexはTHCの含有量が多いため、医療用CBDとは言い切れない部分もあります。
医療用CBDとして認められている以外のCBDオイルやCBDカプセルなどの製品は全て健康食品としての扱いになります。
Epidiolexは小児の難治性てんかんであるドラベ症候群とレノックス・ガストー症候群の2症例に限定して投与されています。
アメリカでは、Epidiolexによって多くのてんかん患者が救われています。
ある症例では、一日に100回以上起きていたてんかん発作が劇的に少なくなったり、全く発作が起きなかったりしたこともあるとの逸話もあります。
てんかんは脳から異常な電気信号が身体に送られる病気です。そのメカニズムはほとんど解明されておらず抗てんかん薬が十分に効かなかったり、強い副作用に苦しんだりすることも多々あります。
てんかん発作が起こると自身の神経を損傷して神経の炎症が生じるため、さらにてんかんの症状を酷くするという悪循環も起きてしてしまいます。
日本国内でもてんかん発作に苦しむ子どもを持つ保護者たちの間で、Epidiolexの承認を求める声が上がっています。
ASDの患者のうち、5〜30%がてんかん発作を併発するとされています。そのため、EpidiolexはASDの子どもを持つ親にとっても重要な存在となるのではないでしょうか。
2019年には厚生労働省の担当者によって、日本国内でもEpidiolexを使用する「治験」を認める見解を示したことから、聖マリアンナ医科大学を中心に準備が勧められました。
日本国内での治験の成績についての報告はまだされていないため、今後の動向に注目していきましょう。
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