そもそもCBDやCBDオイルとは?
CBDは大麻草などから抽出される天然成分の一種で、向精神作用を示さないカンナビノイドの一種です。カンナビノイドは体内で様々な効果をもたらします。
人の体内には身体機能の様々な調節を行うエンドカンナビノイドシステム(ECS)が存在しています。
アナンダミド(AEA)や2-AGなどの内因性カンナビノイドがCB1やCB2などのカンナビノイド受容体に作用する事で疼痛、炎症、ストレス、不安、食欲、睡眠、精神活動などの調節を行います。
また、CBDはビタミンCやビタミンEよりも強力とされる抗酸化作用があり、脳や神経の保護作用があります。
脳や中枢神経系にはCB1が発現し、末梢神経系や免疫細胞などには主にCB2が多く存在します。またカンナビノイド受容体は皮膚や骨、眼球、内臓などのほとんど全身の細胞に存在していることが分かっています。
CBDはCB1やCB2に直接作用することはほとんどありません。しかし、内因性カンナビノイドを破壊する酵素の働きを抑制したり、様々な神経伝達物質の受容体を活性化したり、反対に阻害したりすることもあります。
CBDオイルは植物由来のCBDをココナッツオイルやオリーブオイルなどのキャリアオイルと混合したCBD製品です。舌下からCBDを吸収させることで、速く効率よくCBDを体内に摂取することができます。
帯状疱疹はどんな病気?現在の治療法は?
小児期に水疱瘡にかかったり、予防接種を受けたりすることで体内に侵入した水痘ウイルスは、神経組織の中に永久的に潜伏します。成長とともに免疫力が向上することによって、ウイルスは不活化したまま長期間経過します。
ストレスや疲労、加齢、病気などによる免疫力の低下に伴い、体内に潜在している水痘ウイルスが再活性することで発症します。
帯状疱疹はウイルス性感染症の一種ですが、小児期の水疱瘡のように人から人へ感染することはありません。また、一度治癒すると再発することは少ないとされています。
50歳以上では発症のリスクは2倍以上にあがるとされていますが、20〜40代の若い世代の発症も決して少なくありません。
通常、体の一部に数日間持続する痛みを自覚する事で発症に気づきます。その後、同部位の皮膚に点状の発赤や痛み・かゆみを伴う水疱が発現します。皮膚症状と同時に頭痛や発熱、腹痛などが生じることもあります。
10日ほど経過すると水疱はかさぶたになりますが、完全に消失するまでには3〜5週間ほどかかるとされています。
また、ウイルスによって神経が損傷されるため、炎症の鎮静後も神経性疼痛(帯状疱疹後神経痛)が数ヶ月〜数年間続くこともあります。およそ3割の患者がこの帯状疱疹後神経痛へ移行するとされています。
帯状疱疹は治療が困難である疾患の一つです。
初期段階であれば抗ウイルス薬の投与が症状を軽減する上で有効です。しかし、ほとんどの場合は疼痛や炎症への対処療法となります。長期間の疼痛管理が必要となるため、薬の服用により様々な副作用が現れます。
疼痛の程度によっては麻薬の一種であるオピオイドが処方されることもあり、強い依存性を引き起こすこともあります。その他に、神経に麻酔薬を注射する神経ブロックなどもありますが、腎臓の機能が悪ければ制限されます。
CBDやCBDオイルは帯状疱疹に効果がある?
前述したように、ECSは帯状疱疹の症状である疼痛や炎症、疼痛を増強するストレスなどを緩和する作用があります。そのため、CBDやCBDオイルは帯状疱疹の症状に対して効果があると考えられています。
皮膚症状が現れる前の痛み(前駆痛)や皮膚に炎症が現れている間の痛み(急性帯状疱疹痛)は炎症性物質が引き起こす疼痛であり、炎症が鎮静した後の痛み(帯状疱疹後神経痛)は神経の損傷による疼痛です。
炎症性疼痛と神経障害性疼痛は違う種類の痛みのため、必要な疼痛コントロールの方法も違います。しかしCBDは体内で様々な作用をするため、違った種類の疼痛にも効果的であると考えられています。
疼痛の調節に関わる神経伝達物受容体は中枢神経系(脊髄)に存在するCB1やバニロイド受容体(TRVP-1)、セロトニン受容体(5-HT1)、アデノシン受容体(2A2)などがあります。
炎症性疼痛のコントロールには、CBDやAEAがカプサイシンなどの様々な刺激を調節する受容体であるTRVP-1へ作用することが有効であると考えられています。
また、AEAや2-AGが白血球などの免疫系細胞に出現するCB2を活性化することで炎症を抑制します。これまで様々な自己免疫疾患において、CBDの摂取によって著明な抗炎症作用を示すことが立証されています。
CBDやCBDオイルは炎症に効果がある?中毒症状や副作用はない?そして、炎症性疼痛にも神経性疼痛にも関わるのが、中枢神経系を構成する神経細胞であるミクログリア細胞の活性化です。
ウイルスにより神経が損傷すると、損傷部位周辺のミクログリア細胞が活性化し、炎症性物質が分泌されます。それらが神経への刺激となり疼痛が生じます。
また、同時にミクログリア細胞の活性化によって、神経の修復に関わる栄養素である液性蛋白質(BDNF)が放出されます。BDNFは神経を修正するだけではなく新たな神経経路を形成するため、痛みに対し過敏となります。
さらに水痘ウイルスの抗体の一種は、BDNFにより形成された神経の拡大を助長する作用があるとされています。これらが、炎症が改善した後も衣服が触れるような刺激などでも痛み感じる状態が持続する原因とされています。
ミクログリア細胞にはCB2が発現することが分かっています。そしてミクログリア細胞のCB2が内因性カンナビノイド によって活性化すると、ミクログリア細胞の活動性は抑制されます。
また、CBDの抗酸化作用は神経保護作用をもたらします。そのため、CBDやCBDオイルは炎症によって生じる神経損傷を軽減することができ、神経の修復を補助できるのではないかと考えられています。
そして、ストレスのコントロールは神経性疼痛を緩和する上で欠かせません。ストレスによって交感神経が優位となると、神経をさらに過敏にするため上述した痛覚過敏を増強します。
CBDはセロトニン受容体やGABA受容体への作用があり、「抑制性」の神経伝達物質の分泌を促すことで、神経性疼痛を軽減することができます。
CBDは神経因性疼痛に効果がある?カンナビノイド系の疼痛治療剤とは?そのほかにも、ウイルス性感染症において、ウイルスを抑制するリンパ球は副交感神経が優位にある状態で最も活動性が高くなります。そのため質の良い睡眠をしっかりと取ることは免疫の働きを助けるために非常に大切です。
CBDやCBDオイルは睡眠障害を改善する効果があり、数多くの研究において効果は立証されています。
以上のように、CBDやCBDオイルは帯状疱疹に対して様々な効果が期待できますが、特に数ヶ月から数年間続く神経性疼痛の軽減において、副作用の可能性が高い鎮痛剤を長期間服用するよりも安全であると言えるでしょう。
帯状疱疹に対してCBDやCBDオイルを摂取する際の注意点は?
CBDやCBDオイル自体にウイルスの活動性を抑制する効果はありません。ウイルスによる炎症は体内の免疫システムによって鎮静化されます。
現段階では、CBDやCBDオイルの免疫への作用は見解が分かれています。
前述した通り、CBDは免疫システムの過剰な活動によって炎症が生じる自己免疫疾患などでは、免疫細胞の活動を抑制して炎症を改善することは数多く研究されています。
一方で、CBDは過剰な免疫の活動を抑制するだけではなく、免疫力が低下している場合には免疫の活動を誘発するという見解もあります。しかし研究はまだ初期段階であり、十分に証明するデータはありません。
炎症時の発熱や疼痛は、異物に対する免疫細胞の活動性を最大限にするためであり、体にとって必要な反応です。仮にCBDの免疫抑制作用が体温を必要以上に下げる効果などがあれば、免疫の活動に影響する可能性があります。
CBDは処方薬の免疫抑制剤や鎮痛剤などのように、体内で過剰に作用することはほとんどないとされています。しかし、現在は帯状疱疹に対しての安全性を裏付ける研究はなく、個人的な体験談しか情報がありません。
皮膚の炎症などにCBDジェルなどを使用することを勧める記事なども見られますが、自己判断はあまりおすすめできません。
現段階では、CBDやCBDオイルの使用は炎症鎮静後の帯状疱疹後神経痛に限定した方が安全であると言えます。また、CBDやCBDオイルの服用を開始する前には、必ず医師の診察を受けて指示に従うようにして下さい。
関連文献
- Cannabidiol Attenuates Experimental Autoimmune Encephalomyelitis Model of Multiple Sclerosis Through Induction of Myeloid-Derived Suppressor Cells
- Modulation of the cannabinoid CB2 receptor in microglial cells in response to inflammatory stimuli
- Role of brainstem serotonin in analgesia produced by low-intensity exercise on neuropathic pain following sciatic nerve injury in mice
- Sleep and immune function