CBDやCBDオイルは他の薬と相互作用を引き起こす?
CBDやその他多くの薬剤は、肝臓内で代謝・排泄が行われます。肝臓にはシトクロムP450(CYP450)という多くの薬剤の代謝に関わる酵素が存在しています。
CYP450は薬剤を体外に排出されやすい形に変える作用がありますが、CBDはCYP450の中のCYP34Aによって代謝されます。この酵素は全薬物のおよそ60%の代謝に関わっており、CYP450の中で最も重要な酵素です。
そして、CBDはCYP34Aによって代謝されるだけではなく、様々な種類のCYP450の働きを阻害する作用が有ります。
つまり、CBDと肝臓で代謝される他の薬剤を同時に摂取すると、その薬剤が体外に排出されず血中濃度が高いまま持続されるため、薬の効果が増強されることになります。
CBDやCBDオイルは薬の効果を妨げる?飲み合わせや相互作用は?手術前にCBDやCBDオイルを摂取しても大丈夫?
どんな手術であっても、手術前には多くの方が緊張したり、強い不安を感じたりします。精神的な影響は血圧や脈拍などにも影響を与えるため、CBDやCBDオイルのリラックス効果は味方となる可能性もあります。
現段階ではCBDやCBDオイルは危険な副作用はほとんどないと言われています。しかし、いくつか手術を受けるに当たって注意するべき作用があります。
先述した通り、CBDは体内で他の薬剤の効果を増強する作用があります。手術中は麻酔薬をはじめ鎮痛剤や血圧をコントロールする薬など、様々な薬剤を使用するため、麻酔の効果に影響を与える可能性があります。
また、CBDやCBDオイルには血液抗凝固作用が確認されており、手術中に出血が止まりにくくなる可能性もあります。そして心臓や血管にも作用するため、血圧や脈拍数などの変動を引き起こすかもしれません。
現在、アメリカの一部の研究者は医療大麻や嗜好用大麻の常用と、麻酔の効果には関連があるのではないかと考えています。
大麻を常用している患者は非常用者と比較すると、検査や手術などで麻酔をかけられた際に効果が現れるまでに時間がかかり、2倍以上の薬が必要であったと報告されています。
しかし、この結果を懐疑的に見ている研究者も多く、毎日飲酒をしている患者でも同じ現象が起こるため、さらに多くの症例を研究しなければ結論は出せないとしています。
日本よりも研究が進んでいるアメリカなどでも、CBDやCBDオイルの使用と麻酔に関するエビデンスは少なく、危険とも安全とも言えない状態であり、各施設でそれぞれ摂取中止の基準を設けています。
また、手術にも色々あります。局所麻酔で皮膚表面の小さな腫瘍を取るようなリスクの低い短時間の手術もあれば、人工心肺が必要となる心臓や大血管の手術もあり、使用する薬剤や予想される出血の程度も全く違ってきます。
したがって、手術前にCBDやCBDオイルの服用が可能かどうかは、手術や麻酔を担当する医師の判断次第と言えます。
しかし、研究数の少ない現段階では、緊急手術でない限りは早い段階で医師の指示を仰いでCBDやCBDオイルの使用を中止した方が良いでしょう。
そもそも健康に問題がなく飲酒や喫煙歴もない人であっても、手術や麻酔は絶対に安全なものではありません。手術や麻酔に対するリスクが限りなく少ないというだけであり、可能な限り危険因子は取り除く必要があります。
また、原則手術の前日の夜から飲食や飲水が禁止されます。麻酔薬の副作用で胃の内容物を嘔吐してしまう危険があるためです。全身麻酔下での嘔吐は気管に入ると窒息や誤嚥性肺炎となる恐れがあり非常に危険です。
そのため、医師に指示された時間以降のCBDやCBDオイルの経口摂取は少量であっても絶対に避けてください。
CBDやCBDオイルは研究が始まって数十年ですが、何百年も前から行われている全身麻酔でも解明されていないことは数多くあります。年々安全性は高まっていますが、常に危険性は孕んでいます。
どれくらいからCBDやCBDオイルを摂取するのをやめた方が良い?
血液中のCBDが体外へ排出される期間は体重や食生活、代謝能力、摂取量、摂取期間などが影響します。
1991年に行われた研究で、治療のために一日に約700mgのCBDを6週間連続で使用した後に摂取をやめた患者グループの血中濃度を観察しました。
その結果、排出にかかった時間は男女差はなく2〜5日ほどであった報告されています。また、CBDによる治療を中止して一週間後には血液から全く検知されなくなったということです。
そのため、手術や麻酔予定の一週間前に摂取を中止することを目安にすると特に問題はないと考えられますが、自己判断は避けるようにしてください。必ず麻酔科医師や各科の医師の指示に従ってください。
現在、医療大麻・嗜好用大麻が合法化している国でもCBDやCBDオイルの摂取を中止する明確な時間の基準はありません。アメリカやカナダでは医療施設がそれぞれに基準を設けています。
例えば、カナダ・オンタリオ州にある病院では、大麻の吸引および経口摂取は麻酔や手術の予定時間の12時間前を最終摂取の限度としています。
CBDやCBDオイルの摂取に関しては予定時間の4時間前まで許可されています。
しかしこちらの施設によると、やはりエビデンスが少ないため「可能な限り早い段階で」大麻やCBDオイルなどの摂取を中止する方が望ましいとしています。
また、大麻やCBDオイルなどの摂取によって、何かしら影響が見られる場合は、麻酔科医が手術の延期や中止の判断をする可能性があることも患者に伝えられています。
一方、アメリカ・テキサス州にある美容クリニックでは、CBDやCBDオイルを手術の2週間前から摂取を中止するようにしています。しかし2週間という期間の設定に科学的根拠はありません。
この施設では、全ての患者に手術予定前の2週間はサプリメントやビタミン剤、ニコチンなどの摂取を禁止しており、CBDやCBDオイルもこれらと同様に扱っているとのことです。
手術後にCBDやCBDオイルを摂取すると良い?
手術の部位や傷の大きさにもよりますが、ほとんどの患者にとっての手術後の最大の苦しみは疼痛であると思います。
創部だけではなく、傷から離れた部位であっても神経の刺激により痛みが生じることもあります。例えば、腹部の手術を受けた患者が強い肩の痛みを訴えることも珍しくありません。
麻酔の覚醒前から投与される痛み止めは、傷の痛みはコントロールできても、内臓の痛みや併発した筋肉痛、頭痛などには効果を示さないことがあります。そのため、点滴からの痛み止めの投与に加え座薬などを併用します。
また、麻酔から覚醒した直後は麻酔薬や痛み止めの副作用により嘔気や嘔吐が引き起こされることがあります。
疼痛や吐き気は、睡眠障害や食欲不振、また離床の遅れにつながることがあり、手術後の身体の回復に影響する可能性があります。
手術後のCBDやCBDオイルの効果については現段階ではほとんど研究されていませんが、効果は期待できると考えられています。
体内には様々な機能を調節するエンドカンナビノイドシステム(ECS)があります。内因性カンナビノイドが全身に存在するカンナビノイド受容体に作用することで疼痛や炎症、吐き気、食欲などをコントロールします。
CBDやCBDオイルは、体内の内因性カンナビノイドの量を増加させる作用があります。
内因性カンナビノイドが脳や神経系にあるカンナビノイド受容体に作用することで、全身に鎮痛作用をもたらします。
CBDやCBDオイルは痛みを和らげるのに効果的?塗るタイプもある?CBDやCBDオイルの最大のメリットは、術後鎮痛のために投与されるNSAIDsや麻薬などの痛み止めと比較して、副作用がほとんどないことです。
また、CBDやCBDオイルは麻酔薬や鎮痛剤の副作用である嘔気や嘔吐の改善や食欲の促進、睡眠障害の改善、抗炎症作用などもあるため、総合的に手術後の身体の回復をサポートできる可能性は高いです。
しかし、手術後にCBDやCBDオイルを摂取する前には必ず医師の許可を得るようにしてください。他の薬との相互作用や血液抗凝固作用のために出血量が増加する可能性などもあります。
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