そもそも血栓症とは?なぜ起こる?
血液中には血小板とフィブリンという凝固に関わる成分があります。通常は怪我などで出血した際、血小板とフィブリンが血液を固めて止血します。そして血管の破損部分を塞ぐ血液の塊は治癒すると自然に血液中に溶けます。
しかし血管が破損されていない状態でも、なんらかの理由で静脈内や動脈内に血液の塊ができることがあり、それを「血栓」と呼びます。
例えば長距離移動の飛行機や災害時の車中泊など、あまり水分を取らずに長時間同じ姿勢を保つことが原因で足に血栓ができ、立ち上がった際などに血栓が血管内を移動して肺動脈に飛ぶことがあります。
一般的に「エコノミークラス症候群」として知られています。
また生活習慣は血栓のリスクに直結します。生活習慣病である糖尿病の既往や運動不足、高脂質な食事、喫煙などが動脈硬化につながり、血流が悪くなって血栓ができやすい体内環境となります。
これら以外にも、妊娠や骨折後のギプス固定などでも血流が障害されやすく血栓のリスクとなります。このように血栓と血流は大きく関係しています。
「血栓症」はこれらの血栓が溶けずに血管内を移動して細い血管を詰まらせたり、太い血管内で徐々に大きくなって血管の内側を狭くすることで血流を阻害する疾患です。
血栓症の症状は様々です。無症状で気づかないこともあれば、心臓や脳内の血管に出来てしまうと、治療の遅れによっては後遺症が残ったり死に至ることもあります。
現在の血栓症の治療方法は?
血栓の治療は予防が何よりも大切です。
予防のためにはまず生活習慣の改善です。昔は欧米人に多い病気でしたが、日本人の食事の変化や運動量の減少とともに日本でも患者数が増えました。従って、食生活や運動習慣・喫煙習慣の見直しが治療の第一歩となります。
そして飛行機の移動などで長時間座っている場合、適宜立ち上がったり足首を動かすなどして血液循環を促すことが大切です。また水分を定期的に摂取することも血流改善のために欠かせません。
血栓予防のための薬物治療は抗血小板療法(血液凝固の原因である血小板の働きを抑える)と抗凝固療法(血液凝固の原因のタンパク質を抑える)を行います。
日本で抗血小板療法で使われる薬で最も使われる内服薬はバイアスピリンです。そして抗凝固療法では内服薬はワーファリン、注射にはヘパリンが主に使われます。
血栓ができてしまった場合の治療法は血栓の場所により変わります。
肺塞栓症(エコノミークラス症候群)
手や足の静脈血栓はその場に留まっている限り発覚することは少なく、胸痛や呼吸苦を自覚することによって受診をし、そこで初めてエコノミークラス症候群(肺塞栓症を併発)と診断されることが多いです。
肺塞栓症の治療は弾性ストッキングで発症部位を加圧し再発を防ぎ、抗凝固薬を使用して血栓を溶かします。予防のために血管内にフィルター設置(万が一血栓が出来ても肺まで飛ばないようにする)が行われることもあります。
心筋梗塞症
心筋梗塞症は狭くなった冠動脈(心臓全体に血液を供給する動脈)に血栓ができ、心臓全体への酸素供給が出来なくなって心臓の細胞が壊死してしまう病気です。いかに早く治療を開始するかが予後に関わってきます。
まず発症後(突然の胸痛)すぐに医療機関にかかりましょう。直後は不整脈による突然死の可能性も高く危険です。急性心筋梗塞が原因で死亡する患者のうち、発作(危険な不整脈)が起こってから一時間以内が半数以上です。
入院すると心臓と全身の状態に応じて酸素投与や血管造影、心拍刺激装置の装着など様々な処置が行われます。この間絶えず心電図や血圧などのモニタリングが続けられます。
心筋梗塞症の治療で最も重要なことは冠動脈の閉塞部位を開通させ血流を確保することです。カテーテルを心臓の血管に通し内腔を広げて血栓を除去し、再び血栓が出来ないように抗凝固薬を投与します。
カテーテル治療が難しい場所に梗塞がある場合はバイパス手術(病変部を残したまま閉塞部位の先の部位に別の血管を繋ぐ手術)を行います。
脳血栓症(脳梗塞)
脳の血管がなんらかの理由で閉塞し、血流が遮断される疾患を総称して「脳梗塞(虚血性脳血管疾患)」と呼びます。
脳血栓症も脳梗塞のうちの一つです。血栓は脳内でできるものと心臓や頸動脈など他の部位から運ばれてくるものがあります。
脳梗塞の治療は急性期(発症〜1か月頃)とそれ以降の慢性期に分けられます。
急性期は心筋梗塞症と同様に、いち早く閉塞部位を開通させて血流の確保をすることが求められます。使用される薬や治療方法は発症から3時間以内、6時間以内、24時間以内、そして48時間以降で変わります。
脳梗塞の治療で使用される血栓を溶かす薬の一つであるt-PAは非常に強い薬で効果的ですが、発症からの経過時間や局所性貧血の状態によっては脳出血を起こしやすいという特徴があります。
それ以外の薬剤は脳を保護する薬、脳の浮腫を抑える薬、血液を固まりにくくする薬、血栓が出来ないようにする薬などが長期に渡って使用されます。
慢性期に入ると再発予防の内服と寝たきり予防や日常生活に戻るためのリハビリがメインになります。再発予防には血栓の原因となりやすい動脈硬化のリスクを減らすために基礎疾患(高血圧や糖尿病)の治療も含まれます。
CBDやCBDオイルは脳梗塞や脳腫瘍に作用する?エビデンスも紹介!血栓症は再発しやすい病気です。基本的には一度発症すると一定期間、もしくは一生涯通院したり血液抗凝固薬を内服することになります。
血液を固まりにくくする薬を摂取するということは、それらの薬を使用している間は日常の何気ない怪我で出血が止まらなかったり、女性であれば月経が非常に重くなるなどのたくさんの副作用があります。
また手術も高リスクとなります。手術にもよりますが基本的には医師の指示で手術前に服薬を中止します。そして手術後は健康であっても血栓リスクが高い状態です。血栓の既往のある患者はさらに危険な状態となります。
このように血栓症は生活に大きな影響を与えます。
CBDやCBDオイルは血栓症に効果あり?
CBDやCBDオイルは体中に存在するエンドカンナビノイドシステム(体の恒常性を保つシステム)に働きかけます。
エンドカンナビノイド・システムは心血管系にも働きかけ、血栓ができる要因となる動脈硬化を引き起こす高血圧の改善や、血液循環を助ける効果があります。
加えてまだ動物実験の段階ですが、CBDやCBDオイルと同じカンナビノイドであるCBNとTHCが血液の抗凝固作用を示すことが分かっています。
またCBDやCBDオイルは血栓症の症状である患部の腫脹や疼痛の緩和にも効果があります。
これらのことからCBDやCBDオイルは血栓症の予防や症状の軽減に効果的であると言えます。
しかしすでに血栓症と診断された場合にCBDやCBDオイルを服用したい時は、必ず医師に相談するようにしてください。
CBDは血小板を減少させる?増加させる?血小板減少症に効果あり?CBDやCBDオイルには他の薬との相互作用がある?
CBDやCBDオイルと相互作用する薬はたくさんありますがここでは血栓症の治療に関わる薬のみを説明します。
前述した通り、日本の血栓症の治療で最も使われる薬は抗血小板薬(バイアスピリン)と抗凝固薬薬(ワーファリン・ヘパリン)です。
ワーファリンとCBDの相互作用の症例研究によると、CBDが薬剤代謝において影響を与えるCYP450というグループの酵素(肝臓内に存在)の7種のうち、5種がワーファリンのそれと同じものです。
またこの研究において、ワーファリンとCBDを同時に摂取するとワーファリンの効果(抗凝固作用)を強めることが示されました。
最終的にワーファリンの量をおよそ30%減らしCBDの量を増加することで、ワーファリンの量を減らしてもCBDのおかげで同じ効果が得られるという結果になりました。
抗凝固薬の注射であるヘパリンはCBDやCBDオイルとの相互作用が認められていません。
抗血小板剤のうち、最も処方されるバイアスピリンに関してはCBDやCBDオイルの相互作用は現在のところ報告がありません。
しかし日本国内で処方される他の抗血小板薬でのプラビックス、パナルジン、プレタールはワーファリンのように肝臓で代謝されCYP450を阻害します。したがってこれらはCBDと相互作用があります。
CBDの研究はまだ十分な症例があるとは言えません。しかし重大な副作用が認められる抗血小板薬や抗凝固薬の服用量を減らし、かつ副作用の少ないCBDは将来的に血栓症の治療に期待されています。
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