CBDやCBDオイルはチック症に作用する?米トゥレット協会の見解は?

CBDやCBDオイルはチック症に作用する?米トゥレット協会の見解は?

チック症は多くの子どもが経験しますが、受診をするほど重症なことはほとんどありません。しかし長期間続く場合は、日常生活や社会生活に影響することもあります。CBDやCBDオイルはチック症の治療に効果があるのかどうか、海外の研究を元に解説します。

チック症はどんな病気?

チック症は4〜6歳頃に現れやすく、およそ20〜25%の子どもが発症するとされています。男児の発症率は女児の3倍と言われています。

チック症には体の一部を繰り返し動かす運動性チックと、声や音を連続的に発する音声性チックがあります。

運動性チックとはまばたきをする、突然頭を振る、顔をしかめる、肩をすくめる、飛び跳ねる、噛み付く、自分を叩く、他者の動きを模倣するといったことを数秒から数分に一度繰り返します。

音声性チックとは、咳払いをする、唸る、舌打ちをする、鼻を鳴らす、その場にふさわしくない言葉や暴言、卑猥な言葉、また他者の言葉などを反復します。

私たちは体の一部にかゆみを感じた場合、その部位を掻くことで安堵感が得られます。しかしそれを我慢をしなければならないとなると非常に苦痛です。

この現象と同じように、チック症は突如衝動を感じ、それを対処するための行動を取らなければ非常に気持ち悪さを感じます。これは生理現象と同じく自身でコントロールできるものではありません。

ほとんどのチック症は一年以内に自然に消失したり、小学校高学年頃に自然に軽快したりするため、受診や薬の内服などはしないことがほとんどです。思春期ごろまでに自然に治らない割合は1%以下とされています。

通常は音声性か運動性のどちらかが短期間現れますが、運動性と音声性の両方が一年以上持続する場合はトゥレット症候群と呼ばれます。

トゥレット症候群は1,000人に3〜8人ほどとされていますが、受診率は少ないため正確な患者数は不明です。

現段階では原因は解明されていませんが、遺伝や出生児に低体重であること、妊娠期間に母体がストレスを受けることなどが関連していると考えられています。

チック症やトゥレット症候群は、注意欠陥障害・多動症(ADHA)や学習障害(LD)、強迫症(OCD)などと合併症を引き起こすことがあり、学校生活や家庭生活などに支障が出る場合は診断を受けた方が良いでしょう。

また成人まで症状が持続する場合は、うつ病や双極性障害なども視野に入れた治療が必要となります。

CBDやCBDオイルはチック症に効果がある?

CBDは大麻草などから抽出されるカンナビノイドと呼ばれる天然成分です。CBDオイルは植物から抽出されたCBDをオリーブオイルやココナッツオイルなどのキャリアオイルと混合したものです。

CBDやCBDオイルは体内のエンドカンナビノイドシステム(ECS)に働きかけます。

ECSとはアナンダミド(AEA)や2-AGなどの内因性カンナビノイドがCB1やCB2などのカンナビノイド受容体に結合することで 体内の様々な機能を調節する体内の仕組みです。

CB1は主に脳や中枢神経系、CB2は主に免疫系や末梢神経系に発現します。

CBDは直接CB1やCB2に働きかけることはほとんどありませんが、AEAや2-AGの分泌量を増加させたり、様々な神経伝達物質受容体を活性化したり抑制することで心身に様々な効果をもたらします。

CBDには精神を興奮させる作用はありません。大麻などから抽出される向精神作用を示す植物性カンナビノイドにはTHCがあり、様々な疾患の治療に有効とされていますが日本を含め多くの国や地域で違法な成分となります。

チック症やトゥレット症候群とエンドカンナビノイドシステム(ECS)は関連があるとされており、これまでに様々な研究が行われてきました。

1998年に初めて行われた研究で、CBDとTHCの両方を含有した治療薬であるナビキシモルス(Nabiximols)は、運動性と音声性の両方において、およそ82%のチック症患者の症状に減少傾向が見られました。

この研究では、AEAや2-AG、THCによって神経系に存在するCB1やCB2が活性化されることで、チック症の行動の原因となる不意に起こる衝動が抑制されたのではないかと考えられています。

次に、チック症やトゥレット症候群に見られる集中を持続することが難しいことや非常に動きが活発なことはADHDの症状と類似しています。

この二つの疾患は要因や行動の特徴などが似ていることもあり、ADHDの治療を行うことによってチック症が改善されることがあります。

2017年にイギリスで行われた研究では、NabiximolsによってADHDの患者の治療を行ったところ、チック症の患者にも頻繁に見られる攻撃的な行動が抑えられたと報告されました。

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その他に、チック症やトゥレット症候群は強い不安が共通した疾患であるOCDやパニック障害とも関連があります。

OCDの特徴である、手が荒れても何度も手洗いを行ったり、同じ確認を繰り返し行ったりするなどの固定化された習慣や思考は、チック症の「それをしなければ気持ち悪い」という衝動の延長であるとされています。

過去にトゥレット症候群の患者で、強い不安やパニック障害を発症したことが報告されています。OCDやパニック障害を放置することは、アルコール依存や薬物依存、また症状を重症化させてしまう可能性などがあります。

CBDはセロトニン受容体(5-HT1)へ働きかけることで不安を軽減し、パニック障害の治療に有効であることが報告されています。この作用はチック症やトゥレット症候群の改善にも効果があると考えられています。

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以上のようなことから、ECSやカンナビノイドはチック症やトゥレット症候群の治療において鍵となると言えます。しかし、CBDのみを治療に使用した例はまだありません。

TAA(アメリカのトゥレット協会)のCBDに対する見解は?

TAAには医療用大麻によって成人のチック症やトゥレット症候群の症状が改善されるという報告は数多く寄せられていますが、治療の有効性を結論づけるためには今後さらなる研究の継続が必要であるとしています。

そして、医療用大麻がチック症やトゥレット症候群の治療に有効であると認められたとしても、患者の大多数を占める小児が医療用大麻に含まれるTHCを摂取することに対する懸念が大きいです。

2018年にアメリカ食品医薬品局(FDA)がCBDを主成分とするエピディオレックス(Epidiolex)を処方薬として承認し、小児のてんかん治療に投与されるようになりました。

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てんかん以外にも様々な神経疾患や精神疾患を治療することができる可能性はありますが、現段階ではCBDだけを摂取することでチック症やトゥレット症候群の治療できるかどうかはエビデンスが不足しています。

TAAのCBDを使用することに対しての見解は、不安を軽減することで、チック症やトゥレット症候群が重症化するのを防ぐ効果があるとしています。

CBDやCBDオイルを摂取する際の注意点は?

CBDは体内でシトクロム450(CYP450)という薬剤の代謝・排泄に関わる酵素の働きを抑制するため他の薬を同時に摂取すると、薬効を増強する可能性があります。

特にチック症やトゥレット症候群の治療薬である精神や神経に働きかける薬剤は、多くがこの酵素によって体外へ排出されており、CBDと治療薬を同時に摂取することは危険なことがあります。

他に薬を内服している場合は、CBDやCBDオイルの内服を開始する前に医師に相談するようにしてください。

また、CBDやCBDオイルを選択する際にはラベルをしっかりと確認するようにしてください。現在、CBD製品のラベル表記に関するルールが制定されていないため、内容が曖昧にしか書かれていないものも数多くあります。

CBDは単体で摂取するよりも、CBD以外にも様々なヘンプの成分が含有された製品であるフルスペクトラムやブロードスペクトラムの方がより効果があるとされています。

しかし、ヘンプの全成分が含まれるフルスペクトラムは本来の分類上、THCが混入しているものを指します。THCが少ないとされる産業用大麻であっても完全にTHCを取り除くことは不可能です。

日本ではこれらの分類が曖昧となっていることがありますので、よほどCBDを使い込んでいる人でない限りは、まずはCBD単体での効果を実感してみるのが良いでしょう。

次に、原料であるヘンプや大麻などを栽培する際に、土壌が汚染していたり危険な農薬などを使用していると、CBDやCBDオイルにも重金属などの化学物質が含まれる危険性があります。

購入の際には、日本では違法となる成分が含まれていないこと、体にとって危険な物質が検出されないことが第三者機関によって検査されていることを確認するようにして下さい。

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