そもそもCBDやCBDオイルとは?
CBDとはカンナビジオールとも呼ばれる化合物で、大麻草の茎や種子などから抽出される成分です。現在、CBDが含まれた様々な製品が販売されていますが、その中で最もメジャーな製品がCBDオイルです。
CBDは大麻草から抽出されることからマリファナを想像して、CBDを摂取するとハイになったりするのではないかと不安になる人もいるでしょう。
しかし、CBDは人をハイにさせるような精神活性作用は一切なく、大麻草以外にオレンジからも抽出される安全性が非常に高い成分であることも知られています。
また、最近はCBDが健康に効果をもたらすのではないかと話題にもなっています。
CBDの効果として期待されているのは、疼痛抑制、抗不安、抗炎症、神経保護作用などです。
話題沸騰中!CBDやCBDオイルの効果・効能や副作用を徹底解説!
さらに、CBDがてんかん発作の抑制にも効果があるのではないかということが注目されています。
てんかん(癲癇)とはどんな病気?
脳内には数百億の神経細胞(ニューロン)があり、すべての脳の働きはこのニューロンの電気的活動によって行われています。
この電気刺激が正常に行われていれば、身体の動きや意識を脳がコントロールできていることになります。
しかし、電気刺激が自発的に起こり不安定な状態になると、脳が身体や意識を制御できない状態になり、けいれんや突然の意識消失、泡を吹くなどの発作を起こします。
この発作をてんかん発作と言い、てんかん発作を繰り返す疾患をてんかんと言います。
てんかんを持つ患者は1,000人に5~8人で、日本のてんかん患者の数は60~100万人ほどと言われています。
小児のてんかん患者が多いことから、てんかんは生まれつきや遺伝性の疾患だと考えられがちですが、遺伝子によって起こるてんかんは極めてまれです。
てんかんの多くは遺伝とは関係なく、どの年齢層でも発病する可能性があります。
てんかんはQOL(Quality Of LIFE)を低下させてしまう
てんかん発作はいつ起こるか予測ができません。そのため、外出時に突然発作が引き起こされ、事故の危険性を高めてしまう可能性もあります。
また、てんかんを持っているせいで自動車の運転ができなかったり、就職ができなかったり、学校に行けなかったりすることも珍しくなく、QOLを著しく下げてしまう原因にもなっています。
さらに、自分がてんかんを持っていなくても家族がてんかん発作を頻繁に起こすということで、毎日不安な思いを抱きながら生活している人もいます。
てんかんの治療法
現在行われているてんかんの治療法は、抗てんかん薬による薬物療法が主流です。
良性の脳腫瘍など、明らかな病変が原因で発病した症候性てんかんと呼ばれるものの場合は、病変を取り除く外科的手術で完治することもありますが、原因不明の特発性てんかんは、基本的に薬物治療が行われます。
66~75%の患者は、抗てんかん薬を投与することによりてんかん発作を抑えることができ、通常の社会生活が送れるようになります。
CBDやCBDオイルはてんかんに効果的?
CBDやCBDオイルがレノックス・ガストー症候群(LGS)やドラベ症候群と呼ばれる難治性のてんかん発作の抑制に効果があることが注目されています。
これらのてんかん発作は幼少期に発症する疾患です。制御不能な発作が繰り返され、死亡率が高いことでも知られています。また、現在の一般的な治療法では十分な効果が得られないという特徴もあります。
一般的な薬物治療ではLGSやドラベ症候群はあまり効果が見られないと言われています。これらの小児てんかん患者にCBDを投与したアメリカのラザリディス博士らによる研究によると、けいれん発作の頻度が減少したという結果が得られたことが2019年に報告されています。
てんかんにおけるCBDの作用機序はまだあまり解明されていません。
2018年のアメリカの研究者らによる報告によれば、CBDが親油性であり脳内に急速に分布できる特性があることや、CBDの抗炎症作用やカルシウム調節作用、抑制系神経の活性化作用が影響しているのではないかなどと考えられています。
また、CBD自体に抗てんかん作用があることに加え、CBD以外の大麻成分にも抗てんかん作用があることも、上記の同報告にて示唆されています。
そのそのため、相乗効果によってCBD製品が高い抗てんかん作用を示している可能性もあります。
シャーロットの贈り物とは?
「Charlotte’s Web(シャーロットの贈り物)」と呼ばれるフルスペクトラムのCBD製品がアメリカで販売されています。
CBD製品の名前にもなっているシャーロットという女の子が、CBDをアメリカ中に広めたきっかけになりました。
シャーロットは薬剤抵抗性のてんかんであるドラベ症候群を患っていました。
薬剤抵抗性があり抗てんかん薬の効果は乏しく、症状は悪化して薬を投与しても週に300回、1時間に2回のてんかん発作を繰り返しました。そのため、発達障害や脳の損傷、死の危険性さえもあったといいます。
また、5歳まではシャーロットは歩いたり話したりすることも難しく、食事も栄養チューブが必要な状態でした。
そのような状態の時にシャーロットはCBDオイルを試してみることになりました。すると、ドラベ症候群によって引き起こされるてんかん発作が、劇的に減少したのです。
発作が軽減されたため、シャーロットは服用していた抗てんかん薬の服用を停止しました。そして、抗てんかん薬の副作用から解放されたシャーロットは、歩いたり食事をしたりすることが可能になりました。
また、てんかん発作での入院の必要がなくなり、学校に行ったり、乗馬をしたり、兄弟と遊んだりすることもできるようになりました。
残念ながらシャーロットは、新型コロナウイルスの合併症のため2020年の4月に13歳で天に召されましたが、シャーロットの出来事は今も同じ難治性てんかんを患う多くの子供たちを救っています。
CBDを使用した抗てんかん薬エピディオレックス(Epidiolex)とは?
エピディオレックスとは、イギリスの製薬会社が開発した抗てんかん薬で、CBDを精製して作られた薬です。
エピディオレックスは、THCやCBD以外のカンナビノイドが含まれている医療用マリファナとは異なり、CBDで構成されています。
CBDが主成分のため、人をハイにさせるような精神活性作用はないことが、2020年のアメリカでの報告によってまとめられています。
LGSとドラベ症候群の患者において、すでに行われている治療薬にエピディオレックスを追加投与したところ、てんかん発作が大幅に減少したことを、エピディオレックスを取り扱うメーカー「ジャズファーマ」公式サイトにて報告されています。
また、アメリカでは、LGSとドラベ症候群の治療にエピディオレックスが使われることが認められ、ヨーロッパのいくつかの国ではエピディオレックスの商業販売の開始が予定されています。
世界の国々がエピディオレックスを承認しているのに対して日本ではどのような対応がとられているのでしょうか。
日本では、大麻草から製造された医薬品の輸入や患者への投与は大麻取締法により禁止されていることから、エピディオレックスは承認されておらず、治療や商業目的で販売することはできません。
しかし、厚生労働省が2019年に「研究者である医師が厚生労働大臣の許可を受けてエピディオレックスなどを輸入すれば、治験薬として国内の患者に用いることができる」という見解を示しました。
この見解をきっかけに2022年現在、聖マリアンナ医科大学では大麻成分を含むエピディオレックスなどの治験申請を始めています。
日本ではエピディオレックスはまだ承認されていませんが、治験薬として使用すれば投与可能になったということです。
CBDやCBDオイルはてんかんに作用する?CBDの薬は日本で合法?エピディオレックスと他の薬との相互作用
エピディオレックスはすでに服用している抗てんかん薬に追加投与することでてんかん発作を抑制したことが報告されていますが、すべての医薬品と一緒に服用できるわけではありません。
中にはエピディオレックスを併用することにより、身体に有害作用をもたらしてしまう医薬品もあるため、エピディオレックスを服用する前には必ず医師や薬剤師などの医療の専門家に相談してください。
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