CBDやCBDオイルは腎臓に悪影響?むしろ良い?
いくつかの研究からCBDやCBDオイルの腎臓への悪影響は否定されています。
アメリカで2007年から2014年にかけて18歳から59歳の健康な男女およそ14,000人(過去30日以前に大麻の使用歴がある、過去30日以内に大麻を使用している、全く使用歴がない)を対象に調査が行われました。
その結果、医療用大麻および嗜好用大麻の使用と腎疾患の発症や腎機能の低下には関連は見られないことが発表されました。
この結果を受けて、現段階では「健康な59歳以下の人」が大麻草などから抽出された成分であるCBDやCBDオイルを使用することによって腎臓に悪影響が起こる可能性はほとんどないと考えられています。
しかし年齢が60歳以上、喫煙量が通常よりも多い、腎疾患がすでにある、もしくはそのリスクがある、といった条件の対象者は入っていません。
大麻およびその抽出物の腎臓への影響をさらに調べるためには、若くて健康な対象者だけでなく様々な条件を比較しなければ安全であるとは言えません。
2018年に報告された研究では、腎疾患患者で大麻常用者は大麻非常用者と比べ腎機能の低下が急速であった症例が報告されました。
これらの症例で腎機能の低下に至った具体的な理由は解明できていません。喫煙など他に要因があったことも十分に考えられます。大麻の摂取方法が吸入や経口摂取であれば問題がなかったはずだと見ている研究者もいます。
いずれにしても、大麻およびCBD製品の健康への影響は研究途中です。安全であるという見方が強いCBDですが、こういった事例もあるので今後も継続的に観察をしていきましょう。
CBDやCBDオイルの腎臓への影響の研究が進んでいく一方で、2017年の研究から腎臓内には数多くのカンナビノイド受容体(CB1, CB2)が存在することが分かっています。
腎臓内のカンナビノイド受容体の存在は、CBDやCBDオイルがエンドカンナビノイドシステム(体の恒常性を保つシステム)に働きかけ、腎疾患の治療に役立つ可能性があることが示唆されました。
慢性腎疾患(CKD)はどんな病気?
慢性腎臓病は(CKD)はChronic Kidney Diseaseの略で、進行的に腎機能が低下し完治することのない腎臓病の総称です。症状が全くない初期から慢性腎不全となった状態まで全てを指します。
患者数は現在日本では1,330万人、世界では8億5千万人とも言われています。
原因として最も多いのは高血圧や糖尿病を長期間コントロールしていないことによる高血圧性腎硬化症と糖尿病性腎症です。
そもそも腎臓はミネラルや電解質バランスのコントロール、赤血球を製造するためのホルモン分泌、血液pHを調節、体内の余分な水分を排出などの様々な役割があります。
腎機能が低下すると体内でこれらの役割を果たせなくなり、病気の進行とともに症状が現れます。しかし初期の段階では血液検査に異常が出る程度で、ほとんどの患者は症状に気がつかないと言われています。
症状は以下のようなものがあります。
水分や血液中の老廃物が排出されないため、眼瞼や手足のむくみ、嘔気や嘔吐、食欲不振、夜間頻尿、不眠、皮膚のかゆみ、疲労、倦怠感、体重減少などを引き起こします。悪化すると肺に水が溜まり呼吸困難に陥ります。
濾過機能の低下により体内に老廃物が溜まるだけでなく、栄養も体外に流れ出てしまいます。それにより低栄養状態が続き全身の臓器に影響を与えます。
また赤血球が作られなくなることから、貧血、口腔内の不快な味、息切れ、めまいなどを生じます。さらには糖尿病や高血圧に起因することから、手足の細かい血管が破壊され痺れなど神経障害も引き起こします。
それ以外にも疼痛や精神症状など症状は多岐に渡ります。ステージ1〜2では腎機能の低下は治療で回復する可能性が高いです。しかしステージ3で治療しなければ最終的には慢性腎不全となり一生人工透析が必要となります。
治療方法はステージや症状によって違います。まずは生活習慣を改善し、貧血や疼痛などの症状に合わせた対処療法が基本となります。
症状が現れる段階では腎機能が初期に比べ低下しているため、腎臓に負担のかからない鎮痛剤が理想ですが、現在選択される薬では鎮痛剤の副作用でさらなる腎機能の低下を招く恐れがあります。
アメリカにおいては疼痛の強いCKD患者に対し医師がオピオイドを処方することがあります。日本では例がありません。
しかしオピオイドの管理は難しく、量を間違えると死に至る麻薬性鎮痛剤です。また長期の使用は中毒になることも問題視されています。
CBDやCBDオイルは慢性腎疾患(CKD)に効果がある?
CBDやCBDオイルはCKDの症状である疼痛や吐き気などの改善に有効です。

現段階ではCBDやCBDオイルはあくまでCKDの症状の緩和のために推奨されており、腎臓病の治療自体には使われていません。しかしこれからの研究によっては今後腎機能への有用性も見直されるかもしれません。
先述した通り、2017年に体の正常な状態を保つエンドカンナビノイドシステムが腎臓内にあると発表されました。
腎臓内のカンナビノイド受容体の存在が発表される以前の2009年に、CBDの注射によりマウスの抗癌剤性腎症を軽減することが報告されています。CBDが腎臓の抗酸化ストレスや腫脹、細胞死を軽減したということです。
これらの結果から、CBDやCBDオイルは症状の緩和や腎臓に負担がかからないだけでなく、腎機能を回復させたり低下を穏やかにするなどの効果も期待されています。
また現在処方されているCKD治療薬の副作用の軽減にも効果が見られています。アメリカではCKDの鎮痛剤としてオピオイドが処方されている例があります。そして、そのオピオイドには強い中毒性があります。
2019年に発表された研究で、CBDはオピオイドなどの薬物中毒の治療に有用性があると報告されました。
CBDやCBDオイルに副作用はある?
通常CBDやCBDオイルは有用性が注目されますが、副作用も報告されています。一例として下痢や食欲の変化、疲労などがあります。
基本的にCBDやCBDオイルは有用性に関しての研究が多く、現段階では副作用に関する報告が多くありません。研究の勧められているアメリカでは健康被害をもたらすような可能性は極めて低い安全な製品とされています。
例えば動物実験で臓器への影響が一件報告されていますが、濃縮されたCBDを過剰に投与していることが指摘されています。
これらのことから適量を摂取する限りは副作用が引き起こされることは考えづらいです。
しかしCBDの効果の現れ方は個人差があります。性別や体格などで目安の量を決められないため、適量がわからないうちは少量ずつ摂取するようにしてください。
また、CBDの摂取後になにか副作用が出た場合にはすぐに医師に相談してください。
CBDやCBDオイルを摂取する際の注意点は?
CBDやCBDオイルはいくつかの薬剤と相互作用をすることが分かっています。
もしも「グレープフルーツ禁」の薬剤やサプリメントを摂取している場合、CBDを摂取し始める前に医師に相談する必要があります。
グレープフルーツもCBDもCYP450という薬剤代謝において重要な役割のある酵素のグループの働きを阻害します。
CBDやCBDオイルは他の薬剤に比べ副作用が少なく安全とされている製品ですが、まだ研究データが十分とは言えません。持病や薬を内服中の場合は必ず摂取開始前に医師に相談するようにしてください。
関連文献
- Cannabinoids and the Kidney: Effects in Health and Disease
- MOVING TOGETHER TO BUILD KIDNEY HEALTH WORLDWIDE
- Hepatotoxicity of a Cannabidiol-Rich Cannabis Extract in the Mouse Model
- Cannabidiol Attenuates Cisplatin-Induced Nephrotoxicity by Decreasing Oxidative/Nitrosative Stress, Inflammation, and Cell Death
CBDの腎臓への作用に関して皆様から頂いた質問
CBDは腎臓の病気に作用しますか?(30代女性)
CBDは腎疾患治療に役立つのではないかということで海外では研究が行われています。CBDは、身体の恒常性を保つシステムであるエンド・カンナビノイド・システムに働きかけ、その結果腎疾患への諸症状に作用するのではないかと期待されているからです。現在腎疾患を抱え、CBDの摂取を検討している方は、まずは摂取開始前に医師に相談するようにしてください。
CBDは慢性腎臓病に作用しますか?(30代男性)
CBDは慢性腎臓病の症状である疼痛や吐き気などの改善に作用すると期待され、現在研究がなされています。現在は慢性腎臓病の症状緩和への作用に注目が集まっていますが、これからの研究によってはCBDの腎機能自体への有用性も確認されるかもしれません。今後の研究に期待しましょう。
CBDの摂取によって腎臓への悪影響はありますか?(40代女性)
現在は、CBDが腎臓に悪影響を与える可能性は低いと考えられています。ただ十分な実験データが乏しい現在では、結論を出すことができません。更なる研究結果に期待し、今後の動向を継続的に観察をしていきましょう。