心や身体(筋肉)の緊張はなぜ起こるのか
緊張とは、生活していく上で直面する様々な出来事(ストレッサー)から、生命を守るために起こる心身の防衛反応の一つです。通常、精神が緊張するとそれに連動して身体の緊張が起こります。
稀に、身体のみが緊張する場合もありますが、それは単純に筋肉の収縮や拘縮を意味します。
例えば、運動や筋トレ中に筋肉に負荷がかかっている、怪我や手術後から回復する途中で物理的に筋肉が硬くなっている、神経の病気で筋肉のけいれんが起こっている場合などです。
心や身体に緊張をもたらすストレッサーには大きく分けて、外傷性ストレッサー、心理的ストレッサーの3種類あります。
一つ目の生活環境ストレッサーとは、職場や家族、友人らとの人間関係構築、別離、労働環境や生活環境の変化、小さな病気や怪我など、私たちが普段日常で直面する環境や出来事です。
私たちが経験するストレッサーの大半は生活環境ストレッサーに当てはまります。
2つ目の外傷性ストレッサーとは、地震や台風などの自然災害、火事や交通事故などの人災、大病、大怪我、暴動、テロなどで、自身や他者の生命が脅かされたり、後遺症が残ったりするような事件や出来事です。
これらの事態に直面することはトラウマ体験と呼ばれ、しばらくはその出来事を頻繁に思い出したり身体に様々な不調・反応が現れたりしますが、普通は時間の経過とともに記憶が薄れ身体の症状も軽減していきます。
しかし、いつまでも当時の記憶がフラッシュバックのように蘇ったり、長期間悪夢に苛まれたりする「心的外傷後ストレス症候群(PTSD)」が引き起こされることもあります。
そして3つ目の心理的ストレッサーとは、まだ起こっていないことや不確かなことに対して心配したり不安を抱いたりすることです。
私たちは、過去の記憶や経験などから将来を予測し、無意識にそれについて考えることで心身に緊張を感じます。前述のPTSDも心理的ストレッサーとなりうることもあります。
例えば、一度でも大震災を経験すると少しの揺れを感じただけで震災の記憶を思い出すことがあります。それにより、再び同じ経験をするかもしれないという恐怖が生まれ心身に緊張をもたらします。
対人関係において日常生活や社会生活に支障が出るほど不安が強い場合は「社会不安障害」と診断されることもあります。
生活環境ストレッサー、外傷性ストレッサー、心理的ストレッサーは単体で心身を緊張させることもありますが、いくつもの原因が複合的に作用することもしばしばあります。
そして、要因が複雑になるにつれて緊張の軽減も困難になります。
例えば、あがり症の方が大勢の前でスピーチをする前には、単純に羞恥心や不安などの心理的ストレッサーによって心の緊張とそれに伴う身体の緊張が生じます。しかし、スピーチの終了とともに緊張は緩和されるでしょう。
しかし、2020年に世界的に拡大した新型コロナウイルス(COVID-19)についてはどうでしょうか。
日本で最初の感染が確認されて以降、私たちの生活環境や労働環境は大きく変わりました。そして自分自身、もしくは身内の方が感染して治療で苦しんだり、大切な方を亡くされた方もいるでしょう。
また、次々に強いウイルスの変異株が現れ、いつ自分や家族が感染するのかという恐怖、ワクチンの安全性や効果があるのかという疑問、企業の倒産、不況、オリンピック問題など考えることがつきません。
まさに生活環境ストレッサー、外傷性ストレッサー、心理的ストレッサーの全てを24時間抱えている状態で、心身は常に緊張状態でしょう。
緊張は自律神経系(交感神経)によって引き起こされているため、緊張しないようにしても自分の意志で止められるものではありません。これは動物としての本能であり、交感神経が働かなくなれば死を意味します。
現代では心身に緊張感をもたらすストレッサーは絶対悪のように思われるかもしれませんが、実は人間の成長にとって緊張感は必要不可欠な存在でもあります。適度な緊張感は集中力を高め能力を発揮しやすくします。
しかし、それは同時に心身をリラックスさせる副交感神経もしっかりと機能しており、緊張とリラックスのバランスを取れる状況であってこその話です。心身の緊張が長期間続くと、いずれ自律神経バランスが乱れます。
そして、自律神経症状として頭痛や肩こり、腰痛、吐き気、食欲不振、過食、ほてり、冷え、動悸、睡眠不足、疲労感、免疫の低下などの症状が現れます。
これらはいずれうつ病やがん、心血管疾患、脳神経疾患などの重大な病気に繋がる恐れがあります。
私たちは全く緊張しないことはできませんが、副交感神経をしっかりと働かせて緊張とリラックスのバランスを取るように意識しましょう。
CBDやCBDオイルで心や身体の緊張をときほぐせるって本当?エビデンスは?
近年世界中で人気が上昇しているCBD(カンナビジオール)とは、産業用大麻(ヘンプ)などの植物から抽出されるカンナビノイドと呼ばれる成分の一種です。
日本で一般的に大麻といえば麻薬を意味することも多く、緊張の緩和とは正反対の精神を「ハイ」にさせる作用を真っ先に思い浮かべるかもしれません。
しかしこれはTHC(テトラヒドロカンナビノール)という別のカンナビノイドの作用であり、CBDには精神活性作用は一切ありません。
むしろ、現在使われている薬と比べて副作用や身体への有害性が少なく、美容や健康へのメリットが多いことから日本を含め世界中で注目されています。
CBDが心や身体の緊張に対してどのように作用するのでしょうか。
心身を緊張させたりリラックスさせたりする交感神経や副交感神経に関わるホルモンや神経伝達物質には以下のようなものがあります。
- 交感神経:アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン、コルチゾールなど
- 副交感神経:セロトニン、GABA、グリシン、メラトニンなど
交感神経と副交感神経はシーソーのようにバランスを保っており、一方が優位になるともう一方が抑制されます。
したがって、副交感神経を活性化させる神経伝達物質やホルモンを増加させることができれば、自動的に緊張をもたらす交感神経の働きを調節することができます。
CBDには、副交感神経の働きに関わるセロトニンやGABAの分泌量を体内で増加させる作用があります。
特にセロトニンには、副交感神経を優位にするだけではなく他にも様々な役割があります。
交感神経系において、私たちに喜びや快楽を与えるドーパミンと、不快感を与えるノルアドレナリンはどちらが多すぎても少なすぎても抑制が効かなくなったり攻撃的になったりします。
セロトニンにはこの2つの物質のバランスを取る作用もあります。
また「睡眠ホルモン」として夜間に増えるメラトニンはセロトニンを原料に作られます。夜間にメラトニンの分泌量が増えることに伴い、脳や身体を覚醒させるホルモンであるコルチゾールが減少し睡眠の質が改善されます。
このように、CBDによってセロトニンの分泌量を増やすことは心や身体の緊張の緩和だけでなく、緊張によって生じやすい様々な自律神経症状の改善にも繋がります。
身体の緊張に対してもCBDの作用は期待されています。
また、CBDは血管を収縮させる作用のある物質を抑制したり、ストレスを軽減したりすることで血管を拡張させる作用があることから、筋肉の緊張によって起こる肩こりや首のこり、頭痛などの改善も期待できます。
さらに、CBDは緊張によって引き起こされる食欲不振や過食、吐き気、消化器症状、免疫異常などに効果的であるとされています。
CBDの研究はまだ序盤であり、多くは動物や細胞レベルに適応した研究段階ですが、不安や緊張の緩和においては人が実際にCBDを摂取して、効果が見られたことが多数報告されています。文献の一部を紹介します。
2011年にブラジルで行われた小規模の研究において、社会不安障害を抱える男性のグループに人前でのスピーチを行う前にCBDを経口摂取させたところ、スピーチに対する不安の増強が軽減されたことが報告されました。
他にも、PTSDを抱える患者でも、CBDが不安やストレスなどの精神症状を軽減させ、睡眠の質を向上させたことが報告されています。
これらのことから、CBDは心身の緊張の緩和、緊張によって生じる症状の軽減、および心身に緊張をもたらすストレッサーを減らすことにおいて効果的であると言えます。
CBDやCBDオイルによって不安やストレスも解消できる?緊張型頭痛にも良い?
ストレスに反応して体内で増加するコルチゾールという副腎皮質ホルモンは、適度な分泌量であれば問題はありませんが、過剰になると様々な病気や不調を引き起こす要因となります。
近年ではコルチゾールが長期間に渡って分泌されることで脳の海馬領域(記憶に関わる部位)を萎縮させて認知症の原因となったり、免疫に異常をきたして炎症の治りを遅くしたりすることがわかっています。
1993年の研究より、CBDは体内で分泌されるコルチゾールの量を減少させたことが報告されています。コルチゾールには血管収縮作用があり、血流を悪くするため緊張型頭痛を引き起こす原因と言われています。
したがって、CBDの摂取により緊張を緩和したりコルチゾールを減らせたりすると、血管が拡張されて緊張型頭痛の頻度も減らせると考えられます。
他の不安やストレスに対するCBDの効果は「CBDやCBDオイルは不安やストレスの解消に効果がある?リスクはない?」の記事内で詳しく解説されています。
CBDやCBDオイルは不安やストレス解消に効果がある?リスクはない?心や身体の緊張を和らげるためのCBDの摂取方法とは?摂取タイミングもご紹介!
心理的な緊張と身体的な緊張は連動して起こることが多いため、身体の内側と外側の両方から緩和のためのアプローチをするとより効率的に緊張を取り除くことができます。
CBD製品には様々なタイプがあり、部分的に作用するもの、全身に作用するもの、効果が出現するまでが早いものと遅いもの、効果持続時間が長いものと短いものがありますます。
心の緊張を緩和するためには全身に作用するタイプのCBD製品を選びましょう。CBDが全身の血管を巡り作用することでダイレクトに緊張の原因となる不安やイライラなどを鎮静できるためです。
中でもおすすめはCBDをMCTオイルやオリーブオイルなどのキャリアオイルに溶解したCBDオイルです。
CBDオイルは舌下摂取すると血管内に直接CBDが吸収されるので効果を感じるまでの時間が15分〜1時間と短く、肝臓において代謝・排泄を受けないためCBDの血管内への吸収率が高く、CBDの効果が長時間持続します。
そのため、人前でのスピーチや会議のプレゼンテーションといったイベント前などに、効果が現れる時間を逆算して摂取すると良いでしょう。
CBDオイルよりもさらに速効性を求める場合は、CBDを含有する蒸気を吸入するCBDリキッドがおすすめです。CBDリキッドは早ければ数秒後から効果を感じ始めますが、効果は数十分しか持続しません。
特別なイベントなどがなくても普段から緊張しやすい人やイライラしやすい人、不安を感じやすい人は手元に常備しておくと安心ではないでしょうか。
頭痛や肩こりなどの原因になる筋肉の緊張をほぐすには、コリや痛みを感じる部位にマッサージを行いましょう。
CBDをマッサージに使用すると、マッサージによってコリをほぐしたり血行を促進したりするのに加えて、CBDが皮膚から吸収されて筋肉や末梢神経に直接作用することで、マッサージ効果を助長します。
専用のCBDボディマッサージオイルもありますが、市販のベビーオイルなどのマッサージに適したオイルに手持ちのCBDオイルを混合して使用することもできます。
関連文献