CBDやCBDオイルは統合失調症に効果あり?エビデンス付きで解説!

CBDやCBDオイルは統合失調症に効果あり?エビデンス付きで解説!

統合失調症は現存する精神疾患の中では最も治療が難しい疾患です。これまで、CBDを統合失調症の治療に使用する研究は数多く行われています。この記事では、専門家による有効性に対する見解や、CBDやCBDオイルの副作用やリスクについて解説します。

CBDやCBDオイルとは?ハイにならない?

CBDはヘンプや大麻などに発現する植物性カンナビノイドの一種です。

人の体内には内因性カンナビノイドと呼ばれるアナンダミド(AEA)や2-AGが分泌されており、CB1やCB2などのカンナビノイド受容体に作用することで様々な身体機能の調節を行います。

この調節機構はエンドカンナビノイドシステム(ECS)と呼ばれます。

CBDはAEAや2-AGなどを破壊する酵素であるFAAHを抑制することで、AEAや2-AGの分泌量を増加させたり、様々な神経伝達物質の受容体への作用があります。

CB1は主に脳や中枢神経系に発現し、CB2は主に末梢神経系や免疫細胞などに発現します。

CBDやCBDオイルの効果は多岐に渡ります。疼痛、炎症、ストレス、不安、睡眠、食欲などの調節に関わっています。

大麻などから抽出される植物性カンナビノイドであるTHCは、CB1を活性化して精神を興奮させる作用があります。

THCも様々な疾患の治療に有効である物質ですが、精神を興奮させる作用により大麻取締法で使用が規制されています。

CBDはCB1を阻害し、さらに「抑制系」と呼ばれる脳内物質であるセロトニンやGABA、ドーパミン、アデノシンなどの調節に関わっています。そのためTHCの作用とは真逆で、鎮静作用が著明なカンナビノイドです。

統合失調症はどんな疾患?症状や治療法は?

日本では統合失調症は長い間、精神分裂病という病名で呼ばれていました。1700年代前半には、すでに現在の統合失調症様障害の症状を発見して分類した医師がおり、医学書にその業績が残っています。

スイス人医師によってSchizophrenia(スキゾフレニア)と病名が付けられ、世界中で研究が進んだのは19世紀からですが、21世紀の現在でもなお、どうしてこの疾患が発症するのかは解明には至っていません。

それほどに複雑な病気であり、またその病名(ズキソ:分裂、フレニア:精神)から偏見も強く、現在でもほとんどの国で、社会から隔離される確率の高い病気です。

統合失調症には様々な型がありますが、共通する症状として現実を正しく認識することができず、行動や気分などに変化が現れます。症状は2種類に分類され、陽性症状と陰性症状があります。

陽性症状とは急性期に現れる症状で、考えがまとまらず混乱したり幻覚や妄想などが激しくなります。誰かが自分を殺しにくると言った声が聞こえるなど、しばしば強い不安や多動が見られます。

脳内の神経伝達物質の分泌のバランスが崩れることで、現実には起こってはいない出来事や現象に意識が集中するとされています。

陰性症状とは精神活動が激しく低下し、虚無感や口数の減少、計画を立てたり遂行したりすることができず、また何事に対しても無関心となります。

統合失調症は人種や国籍、性別によって発症に差はなく、成人期以降に多く発症します。場合によっては10代後半でも発症する可能性はあります。

2017年の報告で、世界でおよそ2千万人の患者がいるとされています。また、世界の死因として心臓病が最多ですが、その中で統合失調症患者の死亡率はそうでないグループと比較すると2倍以上とされています。

心血管疾患のリスクである肥満や糖尿病、高血圧などの治療が行われないことや、薬の副作用のために悪化するためであると考えられています。

統合失調症は現段階で完治は不可能な疾患です。しかし症状を改善し、早期に治療を開始することで社会生活に戻ることは可能です。治療の開始が遅れて症状が悪化するほどに治療が困難となります。

しかし上述したように、社会的な偏見が強いこともあり、家族などの患者をサポートする側の人間も治療に協力的になることが難しいと言った問題もあります。そのため、半数の患者は治療を受けられていない現状です。

治療は薬物療法や心理療法、また患者を施設内でモニタリングして危険行動を予防することが必要となります。

現在の薬物治療の問題点は、陽性症状だけにのみ効果が現れやすいことや、薬物治療の結果に一貫性がないこと、また日本では様々な薬を大量に処方する傾向にあり、中毒や副作用での死亡なども多数あります。

CBDやCBDオイルは統合失調症に効果がある?エビデンス付きで解説!

CBDやCBDオイルの統合失調症への有効性の検証は1995年から始められました。最初の研究では、19歳の女性患者一人に1,500mgのCBDを4週間投与し、十分な効果が観察されました。

最新の2018年の研究によると、CBDは脳の3領域における活動を「リセットする」ことで症状を改善するという仮説が提唱されました。

この仮説が立証された場合、CBDがどのように精神症状を軽減するかを初めて立証する事になります。
そしてそれは統合失調症を含む精神疾患の新しい治療法の確立に繋がる事になります。

この研究では33人の精神症状を経験したことのある被験者を、600mgのCBDを毎日摂取するグループとプラセボ(偽薬)グループに分けました。

そして、精神疾患のない19人のグループを加えて、3グループに対して記憶力を必要とするタスクが与えられました。

これは精神疾患の始まりに関係のある脳の線条体、中脳、側頭葉の活動性が、それぞれのグループにおいて違いがあるかどうかを調べる研究です。タスクを行なっている最中に、全被験者のMRIのスキャンが行われました。

その結果、精神疾患のない19人と精神疾患のある33人を比較したところ、精神疾患のあるグループは、正常な脳では観察されない活動性がありました。

しかし、CBDを摂取したグループとプラセボグループの比較では、CBDを摂取したグループの方が脳の異常な活動性の程度が軽かったことも確認されています。

この研究に関わった一部の専門家は、CBDの効果について、他の向精神薬を接種した際にも見られる急激な脳の血流量の変化によるものではないかと考えています。

症状の軽減は一時的な効果であり、長期間服用しても同じように有効性が持続するかどうかは、現段階では不明であるとしています。今後、さらにスケールの大きな研究によって効果が立証される必要があります。

また近年では、CBDやCBDオイルを精神疾患の治療に服用することは、従来の精神病治療薬の副作用として発症する思考や判断などに関する認知症状を予防することにも有効であるとされています。

ドイツで行われた研究において39人の統合失調症と診断された患者を2グループに分け、抗精神薬もしくはCBDを投与しました。両グループとも有効性に有意な差は見られませんでした。

しかし、CBDを摂取したグループは副作用の程度が軽く、その中の一人のメンバーは全く副作用を感じない結果となりました。精神疾患治療薬の副作用はこれまで大きな問題であったため、この結果は非常に有意義なものです。

また、別の研究では効率的なCBDの摂取方法について研究が行われました。CBDのみを摂取するグループと、精神疾患治療薬とCBDを同時に摂取するグループの症状の変化が比較されました。

両グループともに症状の改善が観察され、特に統合失調症の初期において効果的でした。

また、どちらのグループも著明な副作用は観察されず、CBD単体での摂取も薬との併用も精神疾患の治療において有効と結論づけられています。

このように小規模から中規模グループの研究は重ねられ、多くの統合失調症患者においてCBDの有効性は報告されていますが、CBDがどのように統合失調症を改善するかについてはいまだに明確ではありません。

一つの説としては、統合失調症の発症に直結するとされるAEAの分泌減少が、CBDの摂取によって改善されるためと言われています。それ以外に関しては、まだこれから研究を続ける必要があるとされています。

また、多くの精神疾患は脳内のドーパミンの分泌異常が関わっていることから、ドーパミン受容体を阻害する薬が処方されます。

しかし、中にはドーパミンの分泌量は正常である患者もおり、CBDの持つ多様な受容体へ作用する特性が関わっているとも推測されています。

現段階では、様々な研究において有効性が確認されていますが、今後CBDやCBDオイルが統合失調症の治療薬として承認されるためには、さらなる研究が続けられることが必要です。

CBDやCBDオイルを摂取するリスクとは?副作用はある?

CBDやCBDオイルは処方薬などと比較して副作用は少なく程度も軽い場合が多いです。CBDは医師の観察下で一日に1,500mg程度を数週間毎日摂取しても副作用の出現がないとされています。

現在報告されている副作用は食欲の変化や下痢、強い眠気などがありますが、精神疾患などに処方される薬と比較しても、健康への被害はほとんどないことが伺えます。

CBDやCBDオイルを使用する際にまず注意するべき点はTHCの混入です。THCを含む製品は日本では規制対象であるため本来は購入できませんが、海外で販売されているCBD製品には稀に含まれていることがあります。

THCは統合失調症などの精神疾患の発症にも関わっていると言われており、またTHCが含有されているマリファナで統合失調症の症状を改善されないどころか悪化させるという結果もあります。

CBD製品を選択する際には表記に注意し、THCやそれ以外にも体にとって危険な農薬、重金属などの物質が含まれていないことが第三者機関によって証明されている製品を選ぶようにしてください。

次に、CBDやCBDオイルは様々な薬剤の効果を増強する作用があります。

60%以上の処方薬の代謝・排泄に関わっているシトクロム450(CYP450)という酵素をCBDが阻害するためですが、特に、精神疾患の治療に使用される薬はほとんどがCYP450によって体内で処理されています。

すでに内服薬がある場合はCBDやCBDオイルを使用する前に必ず担当の医師に相談をするようにしてください。

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また、統合失調症をはじめ精神疾患は早期から医師など専門家のサポートを受けることが、早期の社会復帰の鍵となります。しかし、患者本人はその判断が難しいこともあり、その場合は家族や友人、社会全体の協力が必要です。

現段階ではCBDやCBDオイルはあくまで症状を改善できる可能性があるという段階です。患者の立場であっても、患者を支える立場であっても、CBDだけに頼るのではなく様々なサポートを利用するようにしましょう。

関連文献

CBDオイルと統合失調症の関係性に関して皆様から頂いた質問

CBDオイルが統合失調症に対して有効であると報告されたエビデンスはありますか?(30代女性)

いくつかありますが、現段階では小〜中規模での研究におけるエビデンスにとどまっています。大規模な研究が行われていなかったり、どのように作用するかというメカニズムが解明されていなかったりするので、さらなる研究が望まれます。

CBDオイルによって統合失調症が悪化することはありますか?(20代男性)

基本的にCBDが統合失調症を悪化させることはありませんが、THCという物質は統合失調症をはじめとした様々な精神疾患の発症に関わっているとされています。日本ではTHCが規制されていますが、過去にCBD製品の中にTHCが含まれていたことが発覚して回収された事例も存在するため、CBD製品にTHCが含まれていないかは厳しくチェックするようにしましょう。

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