CBDやCBDオイルとは?
CBDとはカンナビジオールとも呼ばれている化合物で、大麻草の茎や種子から抽出される成分です。CBDオイルとは、CBDをココナッツオイル(MCTオイル)やパームオイルベースに溶かした製品のことを言います。
CBDは大麻草の成分ということで、大麻のように人をハイにさせるなどの作用があるのではないかと心配する人もいますが、CBDにはそのような精神活性作用や中毒作用は一切なく、法律的にも合法です。
大麻の人をハイにさせる成分は大麻の葉や花穂から抽出されるTHC(テトラヒドロカンナビノール)という成分です。
同じ植物から抽出されているとは言えTHCとCBDは構造も性質も全く違うものなので混同しないようにしてください。
CBDは不安軽減作用や疼痛緩和作用、抗炎症作用などを持つことから、多くの人に興味を持たれていて、治療に使われたり、サプリメントのように健康維持の目的で使用されたりもしています。
CBDやCBDオイルはウイルス対策に効果的?免疫力を高めるのは本当か
CBDやCBDオイルは最近注目されたばかりです。そのため、動物実験はされていても人間でのエビデンスがまだないCBDの効果が非常に多いのですが、CBDが免疫システムを抑制することはすでに判明しています。
CBDが免疫系に与える影響の詳細は以下のようなものです。
- CBDには抗炎症作用があり、免疫系で炎症が起こってもその炎症を抑える作用があるため、毒素を殺すことができず毒素拡散を防げない
- CBDは細胞死を促進する
- CBDは細胞が急速に増殖するのを防ぐ
- CBDは免疫系の信号として必要になるたんぱく質の分泌を抑制する
- CBDは体内の微生物を攻撃するための物質を抑制する
- CBDは免疫システムが攻撃すべきである体にとっての異物を記憶する能力を抑制する
これらの情報を見ると、CBDやCBDオイルが免疫力を高めるどころか、逆に免疫を抑制してしまうことが分かります。
CBDには抗炎症作用があることから、全身性の炎症を引き起こすウイルスに対しての重症化を軽減するのに役立つことは確かです。
しかし、CBDは全てのウイルス感染に対して有効ではないため、全般的なウイルス対策としてCBDやCBDオイルを摂取してしまうと免疫抑制作用が働き、感染しているウイルスによっては症状を余計に悪化しかねません。

ただし、アレルギーや全身性エリテマトーデス、紫斑病、関節リウマチのような免疫過剰が原因で起こる自己免疫疾患を患っている人は、免疫を抑える必要があるため、CBDの免疫抑制作用が治療に役立っています。
なぜCBDやCBDオイルがコロナウイルスに効果があると噂されているのか
CBDやCBDオイルがウイルス感染を悪化させてしまう可能性があるのにもかかわらず、巷ではCBD製品が新型コロナウイルスに効果があると噂されています。
一体なぜなのでしょうか。
そもそも新型コロナウイルスとは?
新型コロナウイルスとは2019年に中華人民共和国湖北省武漢市で発生した肺炎を起こすウイルスです。
発生した原因の詳細はまだ分かっていませんが、中国人の食生活が関係しているなど様々なことが憶測されています。
新型コロナウイルスの特徴は、年配者の重症化例が多いということと、症状がない人(無自覚な感染者)からも感染するということ、感染力が非常に強いということです。
また、新型コロナウイルスは「新型」ですから、新型コロナウイルスを特異的に攻撃する抗体を人間が持っていないということも感染を広げて死者を多くする大きな原因になっています。
新型コロナウイルスは、発生した中国だけにとどまらず世界中に広がり、多くの死者や感染者を出しています。
そして感染を食い止めるために各国が対策として外出制限などを行っていることから、多くの店舗が営業停止に追い込まれ、経済的な負担も日に日に増えていっているのです。
新型コロナウイルスにCBDやCBDオイルが効果があると考えられてしまった原因は何か
CBDやCBDオイルが新型コロナウイルスに効果があると噂された理由は以下の4つが考えられます。
1.CBDは強力な抗菌剤で一部のウイルスには役立つから
CBDは免疫抑制作用を持つ傍ら、強力な抗菌剤としても知られていて、院内感染として有名なMRSAや真菌に対して抗菌作用があることが分かっています。
このような事実から、CBDはもしかしたら新型コロナウイルスにも有効なのではないかと期待されたということがまず考えられます。
すでにお伝えしたように、CBDは全身性炎症を引き起こすウイルスに対しての重症化を軽減するのには役立ちます。
しかし、今の時点で分かっているのは、新型コロナウイルスは肺炎をおこすウイルスだということなので、新型コロナウイルスが全身性の炎症を引き起こす可能性は非常に低いです。
新型コロナウイルスが全身性の炎症を引き起こさないウイルスであると考えられると同時に、CBDに免疫抑制作用があることを考えると、新型コロナウイルス対策でCBDを使用するのは決して適切とは言えません。
2.CBDのエンドカンナビノイドシステムを向上させる効果に注目したから
CBDやCBDオイルは体の中のシステムであるエンドカンナビノイドシステム(ECS)を高める作用があることが証明されています。
ECSとは身体を調節する機能で、たとえ外部の環境の変化があっても体内環境を一定に保とうとする身体のシステムです。
ウイルスや細菌などに体が侵されたとしても、時間が経つと健康な状態に戻ることができるのは、ECSが働き、身体を正常な状態に戻そうとする力が働いているからだと考えられています。
つまり、CBDやCBDオイルがECSを高めることによって、たとえ新型コロナウイルスに感染した体も正常に戻るのではないかと期待したのでしょう。
CBDやCBDオイルが免疫系に及ぼす影響を考えられないまま、ECSの考え方だけが先行し、このような噂が発生したと予想できます。
たしかに、CBDやCBDオイルはECSの機能を高め、身体を正常な状態に導く作用が期待されていますが、すでにお伝えしたようにCBDには免疫抑制作用があることを忘れてはいけません。
いくらECSが働いたとしてもウイルスに打ち勝つための免疫を下げてしまったら、新型コロナウイルスの感染を悪化させ重症化する可能性を高めてしまうことが考えられます。
また、新型コロナウイルスが世界中で大きな問題になっている一番の原因は、ヒトの中に抗体がないことですので、感染を防ぐためには免疫力をできるだけ高める努力が重要と言われています。
身体機能を調節する作用が期待されているCBDですが、CBDの免疫抑制作用が確認されている以上、CBD製品を新型コロナウイルス対策に使用するのは望ましくないと言えるのではないでしょうか。
3.CBDにストレスを軽減する効果があるから
CBDには不安や不眠を改善したりストレスを解消したりする作用もあります。人はリラックスしているときに免疫システムが効率的に働くという事実から、CBDを摂取すると免疫力が上がると考えられたのでしょう。

しかし、たとえストレスを軽減してもCBDの免疫抑制作用を考えると、総合的に見てCBDが免疫力を上げる効果があるというのはとても考えにくいです。
ストレスを軽減したければ、睡眠時間を多くとったり定期的に適度な運動をするなど、CBD以外の方法を考えて実践したほうが、免疫抑制作用のことを考えずに済み、より効率的に免疫を高めることが期待できます。
4.新型コロナウイルスに効果があるものを多くの人が探していたから
CBDが新型コロナウイルスに効果を示すのではないかと噂されたもう一つの原因は、多くの人がこの新型コロナウイルスに苦しみ、何とかして効果があるものを見つけ出したいという思いからCBDに目をつけたことが考えられます。
いつ感染するのかという恐怖や、不要不急の外出禁止、仕事ができないことからの収入の大幅減少などが原因で信じられないほどの大きなストレスを大勢の人が抱えています。
このような状態の中で、いつ終息するか分からない新型コロナウイルスに対して少しでも効果が期待できるものを探したいと思うのは人間の心理として当然のことだと言えるのではないでしょうか。
CBDの新型コロナウイルスへの効果は、何のエビデンスもないただの間違った噂ですが、その噂が広まってしまった背景には、新型コロナウイルスに対する人々の大きな恐怖感や疲労感があることが想像できます。
ニューヨークはCBDが新型コロナウイルスに効くという宣伝をやめるように要求
ニューヨークの司法長官は、CBDの石油会社にCBD製品がコロナウイルスに効果を示すことができるという宣伝をやめるように要求しました。
CBDが新型コロナウイルスに効く証拠など何もない上に、逆に危険性を高めてしまう可能性さえもあるので、新型コロナウイルスに対してCBD製品の有効性を誤って伝えることは危険だと判断したということです。
また、誤った情報を信じてしまった消費者は、CBDを摂取すれば新型コロナウイルスにかからないなどの勘違いをしてしまい、生活そのものを危険にさらしてしまう恐れもあります。
新型コロナウイルスに対するCBDに関しては、ニューヨーク州が誤った情報を広めることを容認しないと発表しました。
しかし、たとえ国の組織が発表しなくても新しい情報を手に入れた時は、CBDにかかわらず個人的にきちんとエビデンスを調べてその情報に信憑性があるのかを見極めることが非常に重要と言えるでしょう。
IACMが新型コロナウイルスとカンナビノイドの臨床実験に関する報告を発表【2020年3月】
2020年3月に、International Association for Cannabinoid Medicines(IACM/国際カンナビノイド医療学会)は、新型コロナウイルスとカンナビノイドの臨床実験に関する報告をしています。
報告では、2020年3月時点で世界各国で新型コロナウイルスの治療にカンナビノイドが役立つ可能性があるかどうかの実験が行われており、カンナビノイドが抗ウイルス・抗菌効果を持っている可能性があると伝えられています。
しかし、CBDやTHCなどの個々のカンナビノイドやカンナビス医薬品が現状で新型コロナウイルスの治療に役立つという証拠は一つもないとのことです。そのため、インターネット上で流布している虚偽の情報に気をつけるよう。IACMを注意喚起を行っています。
参考 IACM: Statement of the Board on current corona virus pandemic and the use of cannabinoidsIACMCBDが新型コロナウイルスの感染防止に効果的であるとする研究がカナダで発表【2020年4月】
ここまで、CBDと新型コロナウイルスに関する研究やエビデンスがないとお伝えしてきましたが、2020年4月にカナダにあるレスブリッジ大学による研究結果が発表されました。
参考 In Search of Preventative Strategies: Novel Anti-Inflammatory High-CBD Cannabis Sativa Extracts Modulate ACE2 Expression in COVID-19 Gateway Tissuesレスブリッジ大学による報告書(PDF)CBDを多く含むサティバ(大麻)が肺や消化器官などでCOVID-19(新型コロナウイルス)の標的となるタンパク質受容体ACE2を抑制することを発見した。つまりサティバなどの品種のマリファナを吸うことで新型コロナウイルスに感染するリスクを減らせる
論文では、以上のように発表されていましたが、CBD単体での研究というわけではなく、THC等も含んだマリファナでの実験ということが分かります。
また、2020年4月にイスラエルの研究者が、CBDの抗炎症作用を新型コロナウイルスの治療に役立つ可能性があるとして、3つの臨床試験を開始しています。
入院中の新型コロナウイルス患者のほとんどはステロイドで治療されており、今回の臨床試験ではステロイド治療とCBDを組み合わせた場合の利点を実証していくとのことです。
なお、今までお伝えしてきた通り、CBDと新型コロナウイルスに関する研究は検証中です。少なくとも2020年6月現在では、CBDが新型コロナウイルスに効果があるという事実はないものと考えて行動して頂ければと思います。