カンナビノイド欠乏症とは?CBDオイルを使った治療法もある?

カンナビノイド欠乏症とは?CBDオイルを使った治療法もある?

カンナビノイド欠乏症はあまり知られていませんが、解明されると将来的に数多くの病気が解明されたり新たな治療法が見つかったりするきっかけとなるかもしれません。本記事では、カンナビノイド欠乏症の症状や、CBDによる治療の可能性について解説します。

カンナビノイドについての基礎知識まとめ!

カンナビノイドとは、麻に含まれる生理活性物質や、それらと同様の作用を示す物質の総称です。

カンナビノイドには「植物性カンナビノイド」「内因性カンナビノイド」「合成カンナビノイド」の3種類があります。

3種類のカンナビノイドの中で最も古くから知られているのは、マリファナやヘンプなどの大麻草から抽出された植物性カンナビノイドです。

現代では、日本を含む様々な国で大麻の栽培や所持は規制されていますが、紀元前から世界中で鎮痛剤や駆虫剤、下剤、睡眠改善剤、抗不安剤など、様々な疾患や症状に対して大麻が使用されていたことが記録に残されています。

大麻から初めて植物性カンナビノイド(CBN)が分離されたのは1899年ですが、1960年代に海外で本格的に大麻の作用に関する研究が始まるまでは、ほとんどカンナビノイドの研究は行われていませんでした。

現在では100種類以上の植物性カンナビノイドがあることが分かっていますが、研究が進んでいるものはその中でもわずか数種類です。

代表的な植物性カンナビノイドは、麻の主成分であるTHCやCBDをはじめ、CBGやCBNなどがあります。

その後、1980年代にガン治療の副作用である吐き気を抑制する薬として、植物性カンナビノイドと同じ化学構造を持つ、合成THCやマリノールなどの合成カンナビノイドが作られるようになりました。

そして、ついに1992年にイスラエルの大学で、私たちの身体にも植物性カンナビノイドのような様々な作用を持つ内因性カンナビノイド(エンドカンナビノイド)が分泌されていることが明らかになりました。

最初に発見された内因性カンナビノイドはアナンダミド(AEA)で、続いて2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)が発見され現在では10種類以上の内因性カンナビノイドが分泌されていることがわかっています。

AEAや2-AGの発見をきっかけに、カンナビノイドの身体での機能の仕方が次々と解明されるようになりました。

カンナビノイドは体内でどのような働きをする?ECSや副作用について解説!

ECSの働き
人を含む哺乳類や鳥類、爬虫類、両生類など、脊椎を有する全ての生物はエンド・カンナビノイド・システム(ECS)と呼ばれる、身体の恒常性を一定に保つ仕組みを持っています。

ECSは、AEAや2-AGをはじめとする内因性カンナビノイドが、CB1やCB2などの全身に発現するカンナビノイド受容体に結合することで活性化し、以下のような身体機能や症状を調節します。

  • 疼痛
  • 炎症
  • 免疫
  • 体温
  • 神経
  • 食欲
  • 消化
  • 吐き気
  • 睡眠
  • 消化
  • ストレス
  • 不安 など

現段階では、カンナビノイド受容体は以下の身体の部位で発現していることがわかっています。
CBDとエンド・カンナビノイド・システム(ECS)

  • CB1:脳、脊髄、心臓血管系、呼吸器系、肝臓、消化器系、甲状腺、腎臓、性生殖器系、筋肉、骨、眼球、ミトコンドリアなど
  • CB2:末梢神経、免疫細胞、皮膚、心臓血管系、眼球、骨、腎臓、眼球など)

上記を見ると分かるように、カンナビノイド受容体であるCB1やCB2は身体の全ての臓器や細胞一つ一つにまで発現しています。つまり、全身の機能はECSによってコントロールされていると言っても過言ではありません。

内因性カンナビノイド以外に、CBDやTHCなどの植物性カンナビノイドを摂取した場合も、ECSに直接的・間接的に作用します。

植物性カンナビノイドの一種であるTHCはAEAや2-AGと比べてCB1との結合性が非常に強く、THCを大量に摂取すると脳を興奮させたり陶酔作用が引き起こされたりします。

そのため現在では、日本を含む世界の多くの国や地域では、微量であってもTHCを含有する大麻製品や植物の所持、大麻の栽培が禁止されています。

ならびに、THCと同じかTHC以上に強い作用をもたらす合成カンナビノイド類(脱法ハーブ、危険ドラッグなど)も全て日本では違法となります。合成カンナビノイドの一種である「合成CBD」は日本でも合法です。

また、THC以外の全ての植物性カンナビノイドは合法的に所持・使用が可能です。
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わかりやすく解説!カンナビノイド欠乏症とは?

カンナビノイド欠乏症とは、何らかの理由でAEAや2-AGなどの分泌量が減少してしまい、それによってECSの機能が低下してしまう病気です。

日光にあまり当たらずにセロトニンが不足するとうつ病になりやすいように、AEAや2-AGなどが不足すると全身の機能の調節に関わっているECSが機能せず、様々な身体的・精神的症状が現れると考えられています。

ECSが注目されるようになったのはここ30年ほどであり、まだ研究が十分であるとは言えません。

特に、カンナビノイド欠乏症は21世紀に入ってからアメリカ人医師のEthan Rossoによって提唱された非常に新しい概念であり、まだカンナビノイド欠乏症に関して解明されていないことは数多くあります。

現段階でカンナビノイド欠乏症によって引き起こされる病気に共通する要素としては、以下のようなものが挙げられます。

  • はっきりとした痛みなどの自覚症状がある
  • 自覚症状以外に検査等での身体的異常が見つからない
  • 症状の原因がはっきりとわからない
  • 検査方法が確立されていない
  • 治療方法が確立されていない
  • 睡眠障害や不安、抑うつなどの精神症状を伴う
  • 生命に関わることは少ないが、生活に支障が出やすい など

過敏性腸症候群、線維筋痛症、片頭痛はカンナビノイド欠乏症が原因?その他慢性疾患にも関与しているかも?

カンナビノイド欠乏症によって引き起こされる疾患として、現段階で最もエビデンスが多い疾患が過敏性腸症候群(IBS)、線維筋痛症、偏頭痛の3疾患です。

この3疾患は頭や大腸、骨格筋や関節など、全身の全く違う場所に引き起こされる疾患ですが、上述したようなカンナビノイド欠乏症による疾患の要素を持ち合わせています。

この3疾患のうちの一つを有している場合は残りの2疾患も併発している可能性が高く、実際にそのような方も多くいます。

過敏性腸症候群(IBS)

IBSの症状である急な下痢や激しい腹痛などは厚生労働省の指定難病である炎症性腸症候群(IBD)と似ています。

しかし、IBDでは様々な検査を行うと腸管内に潰瘍が見られたり血液検査で炎症反応が確認されたりしますが、IBSの方は検査を行っても身体には全く異常が見つかりません。

IBSになる原因はハッキリとは分かっていません。特定の食事やストレス、細菌感染などによってIBSが引き起こされることもありますが、現状では決まった治療法や予防法などはありません。

消化器官の機能はECSと深く関わっており、蠕動(ぜんどう)運動や消化液の分泌などはECSによって調節されています。

そのため、カンナビノイド欠乏症によってECSの機能が低下するとIBSが引き起こされる可能性は非常に高く、カンナビノイドの補充がIBSの治療に有効であるのではないかと考えられています。

カンナビノイド(大麻)は19世紀に流行したコレラの症状である下痢に対する初めての有効的な治療法として使用されていた歴史があります。

現代でも大麻が合法とされる国では、多くのIBS患者が下痢を含む様々な症状の改善のために大麻を摂取しており効果的であることを訴えていますが、まだ正式な研究はほとんど行われていない状態です。

ある研究では、AEAが腸の筋肉の収縮に大きく影響していることが報告されています。同研究の筆者はECSは腸の病気や炎症において非常に重要な役割を担っていることを強調しています。

また、別の研究ではIBSで下痢症状がある方は健康な人と比べてカンナビノイドの代謝が異なることも観察されています。

そして同文献において、腸に発現するCB1を活性化することで激しい蠕動運動が抑制され、消化がゆっくりと行われるようになることが報告されています。
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線維筋痛症

線維筋痛症は長期に渡って全身の筋肉や関節などに痛みやこわばりなどの症状が突然現れる病気ですが、同じような症状が現れる関節リウマチのように検査を行っても身体に炎症が見つかる訳ではありません。

現段階において線維筋痛症の症状として最も多く見られる疼痛は、私たちの身体が何らかの要因によって痛みに対する感受性が高くなることで引き起こされると考えられています。

カンナビノイド欠乏症研究の第一人者であるRosso医師は、脊髄での内因性カンナビノイドの量が減少した際にも同じ症状が現れることを主張しています。

そして、同じくRosso医師は不足しているカンナビノイドが補充されることでこの痛みに対する感受性を鈍らせることができると言及しています。

実際に、海外のいくつかの研究では多くの線維筋痛症患者がTHCを含有する医療用大麻の摂取によって疼痛の緩和が見られています。

また、同研究では疼痛以外にも筋肉や関節のこわばりが軽減されたり、リラックスできることで睡眠の質が改善されたりといった効果も報告されています。
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偏頭痛

偏頭痛は吐き気や光、音、環境の変化、ホルモンなど、様々な要因によって引き起こされ、男性よりも女性の方がなりやすいとされている病気です。

Rosso医師は、偏頭痛患者に見られる光や音などに対する過敏性もカンナビノイド欠乏症によって引き起こされると説明します。

通常、内因性カンナビノイドが十分に分泌されている場合は、中枢神経系において光や音への感受性が調節されます。

そして、最新の研究では偏頭痛発生の引き金となると言われている脳の三叉神経血管系の抑制において、AEAが重要な役割を果たしていることが報告されています。

これは、体内で自然に分泌されるAEAの分泌が減少すると三叉神経血管系が活性化し、それによって偏頭痛が引き起こされるというものです。

イタリアにある大学の研究チームは、偏頭痛患者の脊髄液中にあるアナンダミドの量が、健康な人と比べて大幅に減少していることを発見しました。

Rosso医師は、この研究結果は偏頭痛患者がカンナビノイド欠乏症であることを支持するエビデンスとして最も有力であるとしています。

他にも、偏頭痛は脳内の血管が収縮する場合と拡張する場合の両方のケースが見られます。AEAは脳内の血管の収縮および拡張にも関わっていることが示されています。

また、別のイタリアの研究では偏頭痛患者の血小板(血液の凝固に関わる成分)を調べたところ、AEAを破壊する酵素であるFAAHの量が増加していることも報告されています。

そして、一般的な偏頭痛の治療にはセロトニンの分泌量を増加させる薬が使用されていますが、AEAにはセロトニン受容体に作用してセロトニン分泌量を増加させる作用もあります。

海外のある調査では、偏頭痛に対して大麻を使用した患者のうち、87.5%が偏頭痛の頻度が減少したと報告されています。平均で月に10.5回の偏頭痛が起こっていたのが、4.7回にまで減少したということです。

その他の慢性疾患

Russo医師はIBSや線維筋痛症、偏頭痛以外にもカンナビノイド欠乏症が関わっている疾患や症状は多くあると指摘しています。

  • 乗り物酔い
  • 多発性硬化症
  • 糖尿病性神経症
  • ハンチントン病
  • パーキンソン病
  • 統合失調症
  • 摂食障害
  • 社会不安障害
  • 自閉症スペクトラム症候群
  • 低出生体重児
  • 嚢胞性線維症
  • 腕神経叢障害
  • 幻肢痛
  • 夜泣き
  • 緑内障
  • 月経困難症
  • 妊娠悪阻
  • 不育症
  • 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
  • 双極性障害 など

IBSや線維筋痛症、偏頭痛をはじめ、その他の疾患とカンナビノイド欠乏症の関連はまだ研究段階であり、エビデンスが不足しています。

これらの病気や症状に対するカンナビノイドによる治療が、日本やアメリカなどで標準治療として推奨されているわけではありません。

どのような病気や症状であっても、治療を行う際はまず主治医に相談し、必ず指示に従うようにしてください。

あなたもカンナビノイド欠乏症になるかも?カンナビノイド欠乏症の兆候や予防法は?

うつ病や不安障害の症状
ほとんどの方がこれまでに、睡眠障害や胃腸障害、食欲不振、疲労、アレルギー、風邪、集中力の低下など「大したことはないけれどなんとなく調子が悪い」と感じた経験があるのではないでしょうか。

カンナビノイド欠乏症には特定の兆候となる症状はなく、このように些細な不調として心身に現れると考えられています。

そもそも、内因性カンナビノイドの分泌量が減少する原因もはっきりとは分かっておらず、加齢やストレス、生活習慣の乱れ、遺伝的要因、病気などが関わっていると考えられています。

内因性カンナビノイドの分泌量を増やすために加齢を食い止めることは不可能ですが、ストレスを溜めないように気をつけたり、健康的な食生活や質の良い睡眠、適度な運動習慣を心がけたりすることで改善が期待できます。

特に、食事面では肉や魚、卵、乳製品、野菜、香辛料、良質な脂質などを積極的に摂取することで、内因性カンナビノイドの分泌量の増加に効果的であると言われています。

また、腸内環境が精神状態に影響を与え、精神状態が腸内環境に影響を与える腸脳相関と呼ばれる現象があります。そのため、食事の際には善玉菌を増やせるような食事も意識してみましょう。

そして、現代の食生活に多い炭水化物だらけの食事や砂糖の過剰摂取、揚げ物や加工食品などに多く含まれるトランス脂肪酸、カロリーの過剰摂取などはできる限り避けるようにしましょう。

また、運動を行う際はゆったりとした有酸素運動ではなく少しだけ負荷のかかるジョギングなどが良いとされています。

散歩やウォーキングなどの強度が低い運動はストレスの緩和には効果的ですので、少しハードな運動と合わせて行うとより良いでしょう。

カンナビノイド欠乏症に有効なのはCBDオイル!?

CBD(カンナビジオール)は精神活性作用を持たない植物性カンナビノイドの一種で、ここ数年日本や世界でCBDを使用した製品の人気が急激に拡大しています。

CBDには内因性カンナビノイドであるAEAや2-AGなどを破壊するFAAHやMGLなどの酵素を抑制することで内因性カンナビノイドの分泌量を増加させる作用があります。

そのため、CBDを摂取することはカンナビノイド欠乏症の改善に有効であると考えられています。

CBD自体はAEAや2-AGのようにCB1やCB2に直接結合することは現段階ではほとんど確認されていません。

そのため、そもそもAEAや2-AGが体内で作られていなければCBDオイルを摂取しても分泌量を増加させることができず、ECSを活性化させることができません。

CBDオイルの摂取とともに先述したような内因性カンナビノイドを増加させるような生活習慣を同時に行うことが大切です。

現在では非常に幅広いラインナップのCBD製品が販売されていますが、最も定番でおすすめの製品は、CBDをMCTオイルやオリーブオイルなどのキャリアオイルに溶解したCBDオイルです。

CBDオイルの最もスタンダードな摂取方法は舌下粘膜にCBDオイルを垂らして毛細血管から体内へ吸収させる方法です。舌下摂取ではCBDの体内への吸収率が高くなるため、CBDの効果持続時間も長くなります。

また、CBDが直接毛細血管に吸収されることからCBDの効果が現れるまでの時間も短くなります。

他にもCBDオイルは食事や飲み物などに混ぜたり、皮膚の炎症部位に直接塗ったりするなど、使用用途の幅が広いメリットもあります。

CBDオイルは摂取量の調節もしやすいため、CBDを初めて利用される方はCBDオイルから試されることをおすすめします。

必読!CBDオイルやCBD製品を選ぶ際の注意ポイント

日本でもCBD製品の人気や需要は拡大し続けていますが、日本で違法となるTHCの混入に関して以外は、製品ラベルの表記や安全性などに関する厳密なルールはありません。

そのため、質の悪いCBD製品も多く出回ってしまっています。

中には、CBDの濃度が表記と全く違うことやCBDを全く含有していないにも関わらずCBD製品と表記されていることがあります。

粗悪なCBD製品を避け、高品質な製品を選ぶためにはどのようなことに注意しなければならないのでしょうか。

まず、THCの混入の心配がないCBD製品の見極め方ですが、パッケージに「THCフリー」と表記がされているだけでなく、第三者機関によって製品の成分検査が行われている製品を選ぶようにしましょう。

実際に検査が行われている場合は、検査証がホームページなどで公表されており結果を確認することができます。

成分検査はTHCの混入だけでなくCBDの濃度も確認することができるため、表記されているCBDの濃度に虚偽がないかも確認できます。

他にも、CBDの産地や栽培方法、抽出方法、CBD以外に含まれている原料など、なるべく多くの情報が明記されている製品を複数比較して購入するようにしましょう。

一概に、どの産地や抽出方法を避けたほうが良いということではありませんが、現段階ではこれらが記載されていない製品も多く存在しますので、購入前には注意して見るようにしましょう。

またCBD濃度の選び方ですが、必要なCBD摂取量には個人差があるため、必ずしも高濃度である必要はありませんが、濃度が低いと特にCBD初心者では効果を感じにくいことがあります。

5%以上のCBDオイルを基準に選ぶと良いでしょう。

そして、CBDは様々な薬との相互作用がありますので、持病があって薬を内服をされている方はCBDオイルを購入・使用する前に必ず医師や薬剤師に相談して指示に従うようにしてください。

自己判断で現在使用している薬の内服を中止したり、CBDオイルと組み合わせて摂取するようなことは絶対に避けましょう。

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