CBDやCBDオイルとは?
CBDは大麻などの主成分であるカンナビノイドと呼ばれる成分の一種です。大麻草由来の物質であっても、CBDには精神を興奮させる作用はありません。
しかし、大麻などに含まれる別のカンナビノイドであるTHCには向精神作用があり、日本を含む多くの国や地域で所持が禁止されています。
CBDオイルとは植物から抽出されたCBDをオリーブオイルやココナッツオイルなどのキャリアオイルと混合した製品です。
CBDやTHCは摂取することで体内に存在する身体機能の調節を行うエンドカンナビノイドシステム(ECS)に作用します。ECSは疼痛、炎症、睡眠、不安、ストレス、食欲、吐き気などのコントロールに関わっています。
体内には元々、アナンダミド(AEA)や2-AGなどの内因性カンナビノイドが分泌されており、それらが全身に存在するCB1やCB2などのエンドカンナビノイド受容体に作用することでECSは機能しています。
CBDはCB1やCB2に直接作用することはほとんどありませんが、内因性カンナビノイドの分泌量を増加させたり、TRPVやGPR55などの様々な神経伝達物質受容体の活性化や抑制などを行います。
また、CBDやCBDオイルにはがんやアルツハイマーなどの様々な疾患の原因となる、活性酸素を抑制する抗酸化作用があります。
CBDやCBDオイルと乳がんの研究事例は?
乳がん細胞には非常に多くの型があります。そしてそれぞれの細胞ひとつひとつに、体内で分泌されるホルモンやカンナビノイドなどの様々な物質の受容体が発現します。
乳がん細胞の型やその細胞に発現する受容体の種類の組み合わせは、予後(がん治療終了後の状態)に影響を与えます。
この組み合わせによって、がんの進行が早くなったり、抗がん剤やホルモン療法による治療効果が高くなったり、逆に低くなったりもします。
最も多い乳がん細胞のタイプは、乳がんの原因となるホルモンの受容体のみが出現するものと、活性化することでがんが進行するHER2受容体が豊富にあるものの2種類です。
そして多くの乳がん細胞にはカンナビノイド受容体であるCB2が多く出現します。CB2の出現の頻度と腫瘍の進行の速度には相関関係があるとされています。特に進行が早く予後の悪いがん細胞にはCB2が多く発現します。
また、乳がん細胞には活性化することで予後を非常に悪くさせる受容体であるGPR55の出現も多く見られます。CBDはGPR55の活性化を抑制する作用があると、2013年にアメリカでの研究で報告されています。
CBDやTHC、CBG、CBNなどの植物性カンナビノイドやAEA、2-AGなどの内因性カンナビノイドには様々な抗がん作用が海外での研究にて確認されています。
それぞれの作用は少しずつ違いますが、がん細胞の増殖を抑制する、がん細胞を死滅させる、がん細胞の成長周期を遅らせる・止める、がん細胞が他の組織に転移することを制御するなどがあります。
そのため、現段階では動物実験や試験管での実験が主ですが、がん治療にはCBDやCBDオイル、THCなどのカンナビノイドの投与は効果があると考えられています。
過去に行われた数々の研究において、カンナビノイドの抗がん作用は立証されており、いくつかの研究症例を紹介します。
2008年に日本で発表された論文によると、乳がん細胞のエストロゲン受容体発現に着目した研究を実施し、エストロゲン受容体の発現がある細胞とない細胞の両方においてCBDによる細胞増殖抑制効果が見られたという報告があります。
また、同研究において、CBDはがん細胞の進行を制御し、さらに正常な細胞を増加させることが報告されました。
さらに、2011年にアメリカで行われた研究では高濃度のCBDによって乳がん細胞を死滅させたり、細胞の自食作用を誘発したりすることが報告されました。
そして2008年には、CBDと同様に、THCのみでがん細胞の周期を遅らせる効果や、細胞死を誘発する作用もアメリカにて証明されています。
他にも、2012年日本人らによって行われた研究では、CBDによるがん細胞の転移を抑制する効果を確認しています。がん細胞の転移に関わるID-1という細胞の転写調節因子の働きをCBDが抑制することで、がん細胞の全身への転移を減少させたということです。
CBDやCBDオイルのガンに関する研究を紹介乳がんにおいて、転移で最も多く見られる部位は肺ですが、転移したがん細胞にもCB2は発現するようです。2006年のアメリカでの実験では、THCは原発巣以外の転移性肺がん細胞でも、細胞の増殖や分化を遅らせる効果が見られました。
また、2010年のイギリスの研究では、免疫細胞であるリンパ球やT細胞に発現するCB2の活性化は炎症を抑制する作用があることを示唆しています。そのため、強い炎症によって発生する病変や良性の炎症性腫瘍に対し、CBDやTHCによる治療効果も期待できます。
これまでに様々な研究が行われていますが、乳がんなどの悪性腫瘍の治療には、CBDだけではなくCB1やCB2に直接作用するTHCが含まれている方がアントラージュ効果が期待でき、より効果は高いと考えられています。
CBDやCBDオイルの副作用は?乳がん治療中に使用しても良いの?
CBDやCBDオイルには健康を害する副作用はほとんど報告されていません。2011年の海外での報告では、CBDやCBDオイルは医師の観察の元で一日に1,500mg程度を数週間続けて摂取しても副作用は起こりづらいとされています。
抗がん剤治療やホルモン療法などによる副作用は吐き気や食欲の低下、疼痛、炎症、口内炎、精神症状など日常生活や社会生活に影響を与える症状が広く知られています。
一方でCBDやCBDオイルの副作用は、下痢や口渇、強い眠気、食欲増加などがありますが、抗がん剤など比較して非常に軽度であり頻度は多くありません。
そしてCBDやCBDオイルを摂取することは、ECSへの作用により抗がん剤などの副作用である疼痛や炎症、吐き気や食欲低下などを改善できる可能性があります。
しかし、現在すでに乳がんの治療をしており、内服などがある場合は自己判断でCBDやCBDオイルの服用を開始することは危険です。
CBDは薬剤の代謝・排泄に関わる酵素であるシトクロム450(CYP450)を阻害します。CBDと薬剤を同時に摂取すると薬剤は長時間体内から排出されずにとどまるため、薬の効果が増強されます。
抗がん剤などは非常に強力な作用・副作用があり、慎重に投与が行われるべき薬剤です。したがって、薬効の増強は生命の危機ともなり得ます。
CBDやCBDオイルの服用を開始する前に、必ず医師に相談するようにしてください。
将来、乳がん治療にCBDやCBDオイルが代用できるようになる可能性はあるの?
上述したように、CBDやCBDオイル、AEAや2-AGなどには乳がんを小さくしたり、消滅させたりする作用が確認されています。
現段階では動物や試験管内での研究にとどまっており、CBDやCBDオイルだけでがんの治療を行うことを人に適応するにはまだ時間がかかるでしょう。
研究の進んでいる海外でも、抗がん剤などによる副作用を改善する目的でTHCを含む医療用大麻などが多く使われていますが、副作用の改善目的でもCBDやCBDオイルのみという症例は少ないのが現状です。
しかし、2017年にイランで行われた研究ではCBDやCBDオイルは抗がん剤などと併用することで、副作用を改善するだけではなく、腫瘍細胞の増殖抑制効果や腫瘍の分化抑制効果などを高めると報告されています。
研究によると、CB2が出現しているがん細胞のうちの91%にはHER2が出現しているというデータがあります。
CBDやCBDオイルを悪性度の高いがん治療に取り入れる際には、HER2に作用する抗がん剤と一緒に組み合わせることで、治療効果が高くなるとされています。
そのため近い将来、日本でも実現する可能性が高い治療法は、抗がん剤とCBDやCBDオイルを組み合わせる方法であると考えられます。
CBDやCBDオイルは副作用が少なくメリットが大きい物質です。まだ解明されていない部分も数多くありますが、医師に相談して治療を検討する価値は十分にあると言えます。
関連文献
- Orphan G protein receptor GPR55 as an emerging target in cancer therapy and management
- Cannabidiol as a novel inhibitor of Id-1 gene expression in aggressive breast cancer cells
- Cannabidiolic acid, a major cannabinoid in fiber-type cannabis, is an inhibitor of MDA-MB-231 breast cancer cell migration
- Antitumor activity of plant cannabinoids with emphasis on the effect of cannabidiol on human breast carcinoma
- A role for L-alpha-lysophosphatidylinositol and GPR55 in the modulation of migration, orientation and polarization of human breast cancer cells
- Cannabis and anticancer drugs: societal usage and expected pharmacological interactions - a review
- Safety and Side Effects of Cannabidiol, a Cannabis sativa Constituent
- Anti-invasion Effects of Cannabinoids Agonist and Antagonist on Human Breast Cancer Stem Cells
CBDの乳がんへの作用に関して皆様から頂いた質問
CBDは乳がんに作用するって本当ですか?(40代女性)
CBDには、がん細胞の進行を制御し正常な細胞を増加させる作用やがん細胞を死滅させる作用、がん細胞の転移を抑制する作用があることを示唆する研究結果が数多く報告されています。実際に、2006年に行われた研究ではCBDによって乳がん細胞の細胞増殖が抑制したという実験結果もあります。しかし、まだまだ研究段階ではありますので、乳がん治療の際は必ず医師の指示に従うようにしましょう。
現在乳がんを患っています。CBDは乳がん治療に使用できますか?(30代女性)
現在のところ、CBDを乳がん治療に使用したという症例はありません。ただ、CBDは乳がんへの作用を期待され海外では様々な研究が行われています。CBDによる乳がんの治療が実現するには、今後さらなる研究が必要と言えます。今後の研究次第ではありますが現段階においては、CBDは摂取せずに今の治療を優先することをおすすめします。
CBDは、乳がんなどの癌治療による副作用を軽減することができるって本当ですか?(20代女性)
実際に海外では、抗がん剤などによる副作用を改善する目的でCBDとTHCを含む医療用大麻が多く使われています。しかし、THCを含まないCBDのみの使用に限った症例は、少ないのが現状です。CBDにおける今後の研究に期待しましょう。